韓国大統領が非常戒厳を宣布 国会での政治活動など禁止と発表
2024年12月4日 4時10分 ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は3日夜、緊急の談話を発表し「国政がまひ状態にあり、非常戒厳を宣布する」と明らかにしました。
これを受けて戒厳司令部が「布告令」を出し、一切の政治活動を禁じるとともにすべてのメディアは統制を受けるとしています。
一方、4日未明、韓国の国会は非常戒厳を解除するよう要求する決議案を可決するとともに国会議長が「戒厳の宣布が無効になった」と発表し混乱が続いています。
韓国のユン・ソンニョル大統領は3日夜遅く、来年の予算案の国会審議をめぐって緊急の談話を発表しました。
このなかで、予算案に合意しないなど野党の一連の対応を批判した上で「国政はまひ状態にある。憲政の秩序を守るために非常戒厳を宣布する」と明らかにしました。
韓国で非常戒厳が出されるのは1987年に民主化が宣言されて以降、初めてとなります。
これを受けて戒厳司令部が「布告令」を出し、国会や地方議会での一切の政治活動や社会の混乱を助長するストライキや集会などを禁じるとしています。
また、すべてのメディアと出版は戒厳司令部の統制を受けるとしていて、フェイクニュースや世論の操作、虚偽の扇動などを禁じるとしていて、違反した場合は令状がなくても逮捕や拘束、捜索なども可能になるとしています。
また、国防省が軍の警戒態勢の強化を指示したということです。
一方、今回の事態を受けて、与野党はいずれもユン大統領の対応を非難しています。4日未明、韓国の国会は非常戒厳を解除するよう要求する決議案を可決し、国会議長は、「戒厳の宣布が無効になった」と発表しました。
与党「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)代表は、「ユン大統領の非常戒厳の措置は間違っている。国民とともに阻止する」と強調しました。
最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は4日未明、国会で記者団に対し「今回の戒厳の宣布は、憲法などが定めた実質的な要件を全く備えておらず、不法なものだ。戒厳宣布に基づく大統領のすべての命令は、違憲で、無効で、不法であり、大統領の命令に従うこと自体が不法だ」と述べました。
そのうえで、軍や警察に対して「本来の職務に迅速に復帰し、役割に忠実であってほしい」と呼びかけました。
国会周辺では警官隊が警備 市民とのもみ合いも
非常戒厳が宣布されたあと国会議事堂の周辺には多くの人が集まり、「大統領は辞めろ」などとシュプレヒコールをあげ、閉じられた門の前で警察ともみ合いになる場面もありました。
また、上空では一時、軍のものとみられる複数のヘリコプターが飛ぶ様子が見られました。
一方で、国会から少し離れた場所ではふだんと大きく変わった様子は見られず、人々や車が行き来していました。
ただ、韓国の通信社、連合ニュースは非常戒厳の宣布について「偽のニュースではないのか」とか「何が起こるかわからない」などと困惑する市民の声を伝えています。
また、連合ニュースによりますと4日も、通常どおり学校の授業が行われるということです。
「布告令」の内容は
戒厳司令官の陸軍大将名で出された「布告令」は「韓国の内部に暗躍している反国家勢力による体制転覆の脅威から、自由民主主義や国民の安全を守るため」として3日午後11時をもって韓国全域に6つの事項を布告するとしています。
1つめとして「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなどの一切の政治活動を禁じる」としています。
2つめに「自由民主主義体制を否定し転覆を企てる一切の行為やフェイクニュース世論の操作、虚偽の扇動を禁じる」。
3つめとして「すべての言論と出版は戒厳司令部の統制を受ける」としています。
4つめとして「社会の混乱を助長するストライキやサボタージュ、集会行為を禁じる」。
5つめには「ストライキ中だったり医療現場を離脱したりしたすべての医療関係者は、48時間以内に本業に復帰して忠実に勤務し、違反した時は戒厳法によって処罰する」としています。
最後に6つめとして「反国家勢力など体制転覆勢力を除く善良な一般国民は、日常生活での不便を最小化できるよう措置する」としています。
また「違反者に対しては、戒厳司令官の特別措置権によって令状なしに逮捕、拘禁、押収捜索ができ、戒厳法の罰則によって処罰する」としています。
《各国反応》
韓国の日本大使館 メールで注意呼びかけ
韓国にある日本大使館は在留邦人向けのメールで「混乱、衝突など不測の事態が生じる可能性が否定できません。引き続きニュースなどに注意しつつ、こういった状況に近づくことを控え、万一遭遇した場合には速やかにその場を離れるなどの措置を講じるようお願いします」と注意を呼びかけています。
外務省関係者「日本人の安全確保を最優先」
外務省関係者はNHKの取材に対し「担当部署の職員を集めて、ユン大統領と韓国政府の対応や現地の状況など、情報収集に努めている。日本人の安全確保を最優先に、事態に変化があれば対応できるよう態勢をとっている」としています。
アメリカ「韓国政府と連絡 事態を注視」
アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道担当者はNHKの取材に対し、「政府として韓国政府と連絡をとり、事態を注視している」という声明を出しました。
米国務副長官「深刻な懸念をもって注視」
アメリカのキャンベル国務副長官は3日、首都ワシントンで開かれたイベントの中で「われわれは韓国の動向を深刻な懸念をもって注視している。バイデン大統領やブリンケン国務長官なども事態の進展について報告を受けている」と述べました。そして「いかなる政治的な争いも法の支配のもとで平和的に解決されることを望む」と強調しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241203/k10014657751000.html
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