平成29年8月31日 富山新聞掲載
孫は我が家の宝もの
ヒロくんは、幼稚園の年少組です。
最近、自分の気に入らないことがあると、いつも本当に大事にして、かわいがってくれている、ばあちゃんやじいちゃんに、あっちに行けと冷たく言い放つのです。
目の中に入れても痛くないほど、かわいがっているのに、ばあちゃんは一瞬ドキリとします。
ヒロくんの家族は、ばあちゃんとじいちゃん、そしてパパとママの五人家族です。
ヒロくんは、一人っ子です。
パパとママは、お昼は会社でお仕事です。幼稚園への送り迎え、そしてパパとママが帰ってくるまで、じいちゃんとばあちゃんがヒロくんの世話をしています。
お風呂に入るのも、ばあちゃんと一緒です。
ヒロくんは、頭を洗うのが大嫌いなのです。しかし、なんとかなだめて頭をシャンプーしました。
ヒロくんは、それが気にいらないのです。
風呂から上がると、「ばあちゃんあっちへ行け」というのです。
「ばあちゃん行くとこないよ」というと、「ばあちゃんの部屋に行け」というのです。
パパやママには、何があっても、そんなことを言っているのを聞いたことがないのです。
ばあちゃんは、次の言葉が出てきません。
幼い子供とはいえ、どうしたら思いやりのある心を持ってくれるのか、と悩みました。
そうだ、絵本を見せて、ヒロくんに考えてもらうことにしよう、と思いつきました。
ばあちゃんの選んだ絵本は、タヌキさんとウサギさんとリスさんとキツネさんが仲良く遊んでいるときに、突然タヌキさんが、後ろ歩きの競争をしようと言い出すものです。
ウサギさんが、それはイヤだと反対しました。
すると、タヌキさんがウサギさんに「おまえ、あっちに行け」と言うのです。
ウサギさんは、後ろ歩きがほとんどできないのです。悲しくなって、目が真っ赤になってしまった、というお話です。
ばあちゃんは、その絵本をヒロくんに読んで聞かせました。
ヒロくんは真剣に、そのお話を聞いていました。
「タヌキさんは、いいタヌキさんかね、悪いタヌキさんのどちらだろうね」といいました。
ヒロくんは少し考えてから、「ウサギさんをなかま外れにしようとしているから、わるいタヌキさんだよね」といいました。
ばあちゃんは、何が何でもヒロくんがかわいくて、大好きなのです。
ヒロくんが三輪車に乗って、近くの公園まで一緒にお散歩です。その途中で、あっちに行く、こっちに行く、と自由気ままに言います。
ばあちゃんには、かなりの重労働ですが、
せっせと三輪車を後ろから、押しているのです。