令和5年7月27日 富山新聞掲載
腹ペコのウサギさんが、もうエサをさがしに行く力もありません。このままでは死んでしまいそうです。
近くに住んでいるリスさんは、秋に集めていた木の実をたくさん持っています。
「少し、木の実を分けていただけませんか、おなかがへって死にそうなのです」と、ウサギさんがリスさんに言いました。
リスさんは、聞こえないふりをしています。
今は、山にたくさん雪が積もっています。真冬です。
リスさんのとなりにイノシシ君が住んでいます。うさぎさんの話をきいていました。
「ボクは 何も持っていないけれど、雪の下になっている木の根っこなら、ほってきてあげるけど食べるかい?」と、イノシシ君がウサギさんにききました。
「お願いします。なんでもいいのです」
イノシシ君は、腹まで雪につかりながら、 根っこをほりに出かけました。
かれたイタドリが雪の上に頭を出していました。
「よし、これの根っこをほってみよう」と、ひとりごとを言いました。鼻と前足とキバで ほりだしました。その根っこのなかに真っ白なガの幼虫が、十ぴきも入っていました。それらの古い根っこにまじって、ピンク色のやわらかい根っこが、春になったらめを出すじゅんびをしていました。
それらの根っこをくわえて、みんなのいる動物村に帰ってきました。
ウサギさんは、ピンクの根っこをもらい、 とっても元気が出ました。その様子を遠くで見ていたタヌキ君が、根っこの幼虫を食べてみたくなりました。
イノシシ君がつかれて眠りこんでいる間に 幼虫をこっそりと持ってゆきました。
目を覚ましたイノシシ君は、幼虫がなくなっていることに気がつきました。
「ごめんなさい。幼虫をだまって持って行ったのは、ぼくです。また、イタドリの根っこをとりに行くときには、いっしょにつれていってください。おわびにいっしょけんめいに はたらきます」と、タヌキ君があやまりにきました。
「あぁ、わかったよ。ウサギさんもさそって いっしょに行きましょう」
三びきが、いっしょに行く日を楽しみにしてワイワイとお話をしています。
リスさんも根っこほりに参加したくなりました。
「すみません、根っこほりに私もつれていってもらえませんか」と、たのみました。
「あぁ、いこういこう」と、イノシシ君が返事しました。みんなそろって、根っこほりに行くことになりました。リスさんは、たくわえてあった木の実を、みんなのおやつとして、持ってゆきました。
「イタドリの根っこは、ケガをした時の痛み止めにもなりますよ」リスさんが、言いました。きびしい冬でも、みんなで協力すれば、楽しくすごせることが分かり、みんなルンルン気分です。
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