山口童話 

山口弘信作成の童話です。

ユウタと、カワウソ

2022-08-11 07:38:18 | 童話

令和4年8月11日富山新聞掲載

 ある いなかの 川のそばに おじいさんと おばあさんと まごが 住んでいました。

 まごは 名まえを ユウタといいます。三才です。母おやは 子供をあずけて とうきょうへ はたらきに 行っています。父おやは びょうきで なくなりました。

 おじいさんと おばあさんの せいかつは 年金ぐらしで そんなに ゆうふくではありませんでした。

 ユウタは いつも 一人で かわらで あそんでいました。

 その川に カワウソの かぞくが すんでいました。カワウソの子供は三びき いました。三びきは ユウタと なかよくなり いっしょに あそんでいました。

 おやのカワウソは 子供たちを ただ 見まもっていました。

おじいさんたちは カワウソがいることを しっていました。しかし、ユウタと友だちになって あそんでいることは しりませんでした。

「むこうまで かけっこだ。」と、ユウタが言うと、みんなが いっせいに 走り出します。

「こんどは すもうだ。」

「おしくらまんじゅうだ。」

「さかだちだ。」

「ねそべって ごろごろきょうそうだ。」と。一日中、あそんでいました。

 ときどき、おやのカワウソが、ユウタに コイやナマズやウナギを 家への おみやげに もたせてくれました。

「カワウソが、おみやげをくれたよ。」と、ユウタが言いました。

「カワウソは、人を だますからね。」というのが おばあちゃんの 口ぐせ でした。しかし、コイのさしみも ナマズやウナギのカバヤキも すごくおいしい ごちそうでした。

 いつものように、 ユウタとカワウソの子供たちが あそんでいるとき 村のえらい人が ちかくのみちを 通りかかりました。そして ビックリしました。

「日本に いなくなったはずのカワウソが 子供とあそんでいる。」のを 見たのです。

しゃしんを とりました。全国のしんぶんに そのしゃしんが のりました。テレビきょくの人たちも やってきました。

しかし、カワウソの かぞくは そのすがたを かくしてしまいました。ユウタは ひとりぼっちで かわらで遊んでいます。

ゆうめいな かがくしゃの先生方が きました。カワウソを つかまえて ほごする そうです。けんきゅうも します。

ユウタは かがくしゃの先生方に「あみで つかまえるのは やめて。」と、ないて たのみました。

「だいじょうぶ だから なかないで。」と、いいながら さがすのを やめません。

 カワウソは ふたたび 人間のまえに すがたを あらわすことは ありませんでした。

しかし、ユウタが しょうがっこうに入学する日のことです。あさ げんかんの 前に コイが おいてありました。