富山新聞 平成30年8月7日 掲載
イモどろぼう
山あいの村に住んでいる、とってもまじめな、おじいさんとおばあさんが、庄屋さんのイモあなからイモを、こっそりとぬすみ出しています。
イモあなは寒い冬にイモが、こおってくさらないように、保存するためのあなです。
人一人が入れるくらいの大きさです。山の中に作られています。
おじいさんとおばあさんの家は、ひどく貧乏でたべものがなくなってしまっていたのです。
そんなときに、この村に、はらペコの旅のおぼうさんが訪ねてきました。
そして、このおじいさんの家に一ばん泊めてほしいと頼みました。
おじいさんは、貧乏でとても泊めることは無理だと断わりました。
そうしているうちに、おぼうさんは、ひもじさのために気を失ってしまいました。
しかたなく、その家で一晩泊めることになりました。
おじいさんたちは、自分たちも腹ペコなのに、自分のためでなく、おぼうさんを助けるために、どうしたらよいか、考え、なやんで、イモをぬすんだのです。
イモを食べさせてもらったおぼうさんは、つぎの日には歩けるようになり、旅をつづけて行ってしまいました。
おじいさんたちは、イモをぬすんだことをお役人のところに行って話しました。
お役人は、おじいさんたちを、つかまえました。
しかし、庄屋さんに謝ること、イモをかえすこと、もうぬすみをしないことを約束して、すぐに家にかえされました。
二人は庄屋さんに、おわびをしました。
でも、お返しするイモはありません。
困りはてていると、おぼうさんが引き返してきました。
そして「この家の裏山に少し大きな まっ黒な石があります。その石を動かせばお湯がわき出てきます。その風呂にはいれば身体全体に元気があふれます。おなかの調子の悪い人が飲めば、おなかの痛みがなおり、お通じがよくなります。」と言い残して、再び去ってゆきました。
おじいさんとおばあさんが、まっ黒な石を探し当てました。村中の人々に手伝ってもらい、その石を移動することができました。
その石のあったところからお湯が勢いよく吹き上がりました。
おじいさんと村人がお風呂場を作り、近くの村の人たちに入ってもらいました。
おなかの調子の悪い人には飲んでもらいました。
みんな元気になったことから、それが評判となり、全国からたくさんの人びとが温泉に入り、身体をいやすためにやってきました。
そのおかげで、村に活気が出てきて、村全体が裕福になりました。