山口童話 

山口弘信作成の童話です。

イモどろぼう

2018-08-09 03:56:39 | 童話

富山新聞 平成30年8月7日 掲載  

 

イモどろぼう

 山あいの村に住んでいる、とってもまじめな、おじいさんとおばあさんが、庄屋さんのイモあなからイモを、こっそりとぬすみ出しています。

 イモあなは寒い冬にイモが、こおってくさらないように、保存するためのあなです。

人一人が入れるくらいの大きさです。山の中に作られています。

 おじいさんとおばあさんの家は、ひどく貧乏でたべものがなくなってしまっていたのです。

 そんなときに、この村に、はらペコの旅のおぼうさんが訪ねてきました。

 そして、このおじいさんの家に一ばん泊めてほしいと頼みました。

 おじいさんは、貧乏でとても泊めることは無理だと断わりました。

 そうしているうちに、おぼうさんは、ひもじさのために気を失ってしまいました。

 しかたなく、その家で一晩泊めることになりました。

 おじいさんたちは、自分たちも腹ペコなのに、自分のためでなく、おぼうさんを助けるために、どうしたらよいか、考え、なやんで、イモをぬすんだのです。

 イモを食べさせてもらったおぼうさんは、つぎの日には歩けるようになり、旅をつづけて行ってしまいました。

 おじいさんたちは、イモをぬすんだことをお役人のところに行って話しました。

 お役人は、おじいさんたちを、つかまえました。

 しかし、庄屋さんに謝ること、イモをかえすこと、もうぬすみをしないことを約束して、すぐに家にかえされました。

 二人は庄屋さんに、おわびをしました。

 でも、お返しするイモはありません。

 困りはてていると、おぼうさんが引き返してきました。

 そして「この家の裏山に少し大きな まっ黒な石があります。その石を動かせばお湯がわき出てきます。その風呂にはいれば身体全体に元気があふれます。おなかの調子の悪い人が飲めば、おなかの痛みがなおり、お通じがよくなります。」と言い残して、再び去ってゆきました。

おじいさんとおばあさんが、まっ黒な石を探し当てました。村中の人々に手伝ってもらい、その石を移動することができました。

その石のあったところからお湯が勢いよく吹き上がりました。

おじいさんと村人がお風呂場を作り、近くの村の人たちに入ってもらいました。

おなかの調子の悪い人には飲んでもらいました。

みんな元気になったことから、それが評判となり、全国からたくさんの人びとが温泉に入り、身体をいやすためにやってきました。

そのおかげで、村に活気が出てきて、村全体が裕福になりました。