令和元年8月8日 富山新聞掲載
山奥の村に、高速道路ができました。山を切り開いて、ゴルフ場やホテルやレジャーランドを作る計画がもちあがっています。村の人々は、村が発展すると言って、大喜びです。誰も森がせまくなり、森の動物たちの食べものがなくなり、動物たちが迷惑することを考えませんでした。
森に住んでいる、サル、キツネ、タヌキ、イノシシ、クマ、シカ、カモシカ、ウサギなどの動物たちは、どうしたらよいか、輪になって話し合いました。その真ん中に、千年以上も昔からこの森を見守ってきた、藤の花の精がいました。この精は、薄紫の着物を着て、人間の姿をしています。動物たちにとっては、お母さんのような存在です。
藤の花の精が言いました「人間たちが、人間の遊び場所として、私たちの大切な命の森を、うばい取り、こわそうとしています。どうしたら、この森を守ることができるか考えましょう。」
イノシシが「工事に来た人を、私のこのキバで、追い回して、工事のできないようにします。」
クマは「おれは、クマパンチをおみまいするよ。」
「それでは、本当の解決にはなりません。もっと良い方法がないでしょうか。」藤の花の精が言いました。
「キツネさんとタヌキ君にお願いがあります。人間に変身し、工事の準備をしている人たちに、工事のとりやめをお願いしてもらえませんか。」とサルが言いました。
「そうですね。私も行きます。」と藤の花の精が言い、キツネとタヌキとともに工事の準備小屋に行きました。「工事をとりやめにしてほしい。」とお願いしました。しかし、工事の人達は、聞く耳を持っていません。
帰ってみんなに相談しました。また、サルが「町にある、自然を守る会に相談してみたら、どうでしょう。」と言いました。
藤の花の精たちが自然を守る会に、相談しました。自然を守る会の方々が、村を発展させながら森を残す方法を考えました。その計画を、工事の人たちに、話してくださり、工事の人たちも分かってくれました。
ゴルフ場とレジャーランドの代わりに、森の中に遊歩道がつくられました。大きなホテルに替わって、季節の山菜を提供する民宿がつくられました。
遊歩道のふちには、栗の木や、グミの木、山ぶどうの木などがあります。また、ワラビやゼンマイなどの山菜やキノコも沢山あります。誰もが自由にとってよいのです。
動物たちとお話ししたり、遊んだりもできるのです。クマと相撲をとっている人もいます。
民宿では、とってきた山ぶどうで、山ぶどうジュースを作っている人もいます。
とってきたキノコについて、食用にできるもの、食べてはいけない毒キノコを村の老人に、教えてもらっている人もいます。
春には、森いっぱいに藤の花が咲きほこり、村は大にぎわいです。