【申告】
まぶたが動かなくなりました。
【診察】
涼しげな甚平を着て、九州からの来院です。
申告通りモータの回転音は聞こえますが、まぶたは動きません。このミルルは、前回もまぶたが動かないと来院していました。カルテを見直すとトルクギヤが割れていて軸が空回りしており、治療としてステンレス線を2か所縛り付け接着剤を付けて抜け防止をしました。ひょっとすると、しばりつけたステンレス線が外れた?と脳裏を駆け回りましたが、とりあえず開頭して確認しなければわかりません。いつもの通り、順番に開いていきました。
前回来院の2022年12月には、異常を見られなかったギヤががものの見事に崩れて破片が飛び散っています。これも初期生産の頃のミルル、ネルルには見られる持病です。今回は、その持病の発生でした。
2枚のギヤを組み合わせて対応しました。
また、前回の治療でまぶたの位置決めスイッチの交換とトルクギヤ割れ治療をしていますが、心配をしていたステンレス線が外れているようなことはありませんでした。
現在は、治療方法も3Dプリンタで作成した歯車を使用しているので交換しました。まぶたの位置決めのスイッチもレバーの反発力もあり、異常はなさそうです。
これでまぶたの治療は終わりましたが、今回を含め私のところへ4回目の受診です。その前にも地元の病院で開頭もされているようなので、持ち主様とご相談の上でミルルドックと合わせて切れやすい配線の交換もすることにしました。
そもそもが、修理をするということは考えられていないものづくりがされているため、配線も最短、使用する線材もおそらく価格優先なので経年変化で外皮が固くなり、ミルルを開いた閉じたと言った作業をするたびに、はんだ付け箇所が外れたりして信頼性が下がっていきます。そのために、今回もシリコーン外皮の配線を取り入れ、少しでも経年変化や今後の治療も容易になるように配線ルートも変更しました。
寝かしつけセンサーも感度が低下しているようなので、カバーを付けて交換しました。
両手のセンサーについては、すでに左手は交換済みで右手についても前回一部処置をしてある状態で問題はなさそうなので、今回は交換しませんでした。
その他のなでなでセンサー、傾斜センサー、お話センサー(マイク)などにも問題は見られませんでした。
背中のスイッチ類にも問題は見られず、音量切り替えスイッチには接点復活剤を塗布しました。
【治療後記】
このミルルとは、初回は電源が入らないと地元のおもちゃ病院からの転院が始まりでした。その後、落としたら、まぶたが動かなくなった(リンクのずれ)、再びまぶたが動かない(クラッチギヤの割れ、まぶた位置決めスイッチの破損)とまぶたの症状が続きその都度病巣は違いましたが、今回のギヤ崩れで最後になることと思っています。
部品材料費より、旅費交通費が高くなるので心が痛みます。
今後は、ミルル、ネルル系の人形は、持ち主様と相談のうえで島外からの来院の場合は、まぶたのギヤは予防保全のために交換の伺いを立てることにしましょう。
元気になって、退院していきました。