【申告】
まぶたが開いた状態で動きません。
時々、ネルルを置いたときに固まる状況が有ります。
【診察】
東北地方から来院しました。
このネルルは、家族の一員になって間もなく18年にもなる子です。2023年2月に両手を握っても反応しなくなったと来院しました。主訴の病巣は、持病の1つである両腕の配線切れでした。予防処置としてまぶたの3つの病巣の内2つのギヤ交換と、開閉位置決めスイッチの反発力を確認して退院した治療歴があります。
さて、今回は何が起きているでしょうか?
今回は、ネルルドックも併せて行いましょう。
いつも通りに触診から始めます。
・まぶたを動かすモータの回転音はしています。
・両手センサーは、正常動作をしています。
・なでなでセンサーは、やや感度が悪く感じます。
・姿勢センサーは、働いています。
・寝かしつけセンサーは、やや感度が悪く感じますが、姿勢センサー感度やプログラム処理によりわかりにくい部分もあります。
・アジャスタ、リセットスイッチ、電池扉スイッチは機能しています。
・音量切り替えスイッチは、機能しています。
頭部を切開してまぶたを動かすギヤボックスを確認します。
前回治療してあるギヤには異常はありませんでした。
ところが、まぶたの開閉位置を決める4つのスイッチの内、1つに異常が起きていました。
まぶたの持病の1つの4番のスイッチが導通不良を起こしていました。キャップを外して接点を磨くと導通は回復しましたが、いずれ再発する可能性が高いスイッチなので交換することにしました。残りの3つのスイッチも中の接点を清掃し、接点復活剤を塗布しました。これで、まぶたの開閉動作は回復することができました。
次になでなでセンサーと寝かしつけセンサーを確認しました。
以前治療を受けたおもちゃ病院のドクターでしょうか?配線外れ予防にと思われたのでしょう。ホットメルトでセンサーの振動部に接着してありました。センサー感度に影響がでますので交換することにしました。寝かしつけセンサーには、いつものようにカバーを取り付けました。
姿勢センサーについても、分解して清掃、接点復活剤を塗布して接点の接触を改善しました。
制御基板に直接はんだ付けされている配線をシリコーン外皮の線材に交換します。はんだ付け部に負荷がかかり接触不良や断線の懸念が増えてきます。
次に、ネルルを置いたときに固まる症状についての対応です。
一般的に考えると振動が加わると発症するということからすると、マイコンの動作を左右する信号系に何らかの異常が起きていると思われます。
そこで、クロック波形、電源電圧変動などを確認しましたが異常は見られません。アジャスタ、リセットスイッチは機能していますが、接触抵抗値を測定すると不安定な抵抗値を示します。この2つのスイッチを交換しました。
おまじないですが、制御基板の電源ラインのバイパスコンデンサの容量を測定すると、半分ほどになっていましたのでE2,E3を交換することにしました。
入院中に固まる症状を捕まえることができず、推測での処置となりました。今後の経過観察とさせてもらいました。
【治療後記】
立て続けにまぶたが動かなくった子たちが来院しました。それぞれ思い出の詰まった子でした。病巣はほぼ特定部位ですのでたどり着くのは容易です。ただ、症状を確認できないものが一番やっかいです。しかし、それを解決できるとドクター冥利というものなのですが。(^^;)