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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

夢の子 ネルルが来院しました。

【申告】

 症状1 突然目を閉じてまばたきをしなくなりました。半年ほど前からまぶたがきちんと閉じないことが時々ありました。

  まぶたの症状は過去2回(2018年と2020年)治療しています。

 症状2 寝かしつけセンサーがだいぶ前から機能しません。

  とんとんすると”カチャカチャ”という音がします。

 症状3 電池切れではないのですが動かなくなり、電池フォルダーをセットし直し再設定をしています。

  半年に3回ほどの頻度です。

【経緯】

  関東地方からの転院患者さんです。関東のドクターからの紹介状で、

  ・まぶたのトルクギヤが割れている。

  ・寝かしつけセンサーの配線が外れている。

 との引継ぎがありました。

  2006年12月29日に購入され、お母さまと4年間過ごした大切なネルルとのことでした。

 持ち主様とも相談をさせていただき、オーバーホールも実施することになりました。

【診察】

 症状1

  

 まぶたのギヤボックス内のトルクギヤ以外には、不具合はありませんでした。3Dプリンタで作成したピニオンギヤに交換しました。まぶたの動きがおかしくなったのは、割れにより空転していたためと思われます。ネルルの持病の1つです。

 2020年のカルテを頂いており、38歯,10歯の複合ギヤがグリスにより崩れて交換していました。2018年の治療内容は不明です。

 

 症状2

 

 寝かしつけセンサーのはんだ付け部で断線していました。センサー電極も摩耗しているので交換して、3Dプリンタで作成したケースを取り付け電極部が接触しないようにしました。

 ”カチャカチャ”という音は、センサーが電池フォルダー受けに当たった音と考えます。

 

 オーバーホールを始めました。

 ・なでなでセンサーも電極が摩耗して感度も低下していると思われるので、交換しました。

 

 

 ・制御基板に直接はんだ付けされている配線を交換しました。

  

  スイッチ基板と制御基板間の配線の外皮は経年変化で固くなり、治療している間にもはんだ付け部から切れてしまい接続しているのか、切っているのかわからなくなります。この配線の長さを少し余裕を持たせ、外皮の軟らかいシリコーン外皮の配線に交換しました。

  また、本来ピンクのプラスチック板で配線を挟んで固定する設計だと思われますが、挟まれていなくはんだ付け部に配線の負荷がかかる状態でした。これがメーカの製造工程なのか、その後のおもちゃ病院での治療過程なのかはわかりません。今回本来の姿に戻しました。

   

  制御基板側のはんだ付け部は、ホットメルト接着にて固定しました。

  電池フォルダー受け部の配線もシリコーン外皮の配線に交換しました。

 

 ・姿勢センサーは、正常に動作をしていることを確認できました。

 

 ・おててセンサーの断線もネルルの持病の1つですので配線を交換しました。

  収縮チューブ端と配線が当たる箇所で配線が切れます。メーカでもその後の生産から収縮チューブの端は収縮させないでいるようです。収縮チューブの材質にもよりますが、一般的に収縮させると固くなります。

 

 

  スイッチは、問題ありませんでした。

 

 ・まぶたを動かすモータを確認しました。

    

  消費電流に問題はなく、軸の回転にも異常はありませんでした。

  モータノイズ取りのコンデンサの容量も100nFに対し97nFで問題ありません。

 

 ・まぶたの開閉位置を決める4つのスイッチの内、No4のスイッチの開閉度が最も高いためかスイッチレバーの反発力が弱く感じましたので、予防保全として交換しました。

 

 ・電池フォルダー内にあるヒューズの状態を確認しました。

  

  電気的にも取付状態にも問題はありませんでした。

 

 ・電源ラインの安定を図るバイパスコンデンサを検査しました。

  レギュレータ(電池電圧6Vから3.3Vを作っている。7133‐1)の前後に配置されているE3,E2の容量を計ると470μFに対し252F、255μFと半分になっていましたので交換しました。

 

  以上でオーバーホールを終えました。

 

 症状3

  突然動かなくなる症状を1か月程経過観察をしましたが、確認できませんでした。

 

【治療後記】

 突然動かなる原因を考えましたが、問診の範囲では何もしない状況で発症しているとのことで

  ・電源電圧が瞬間的に下がって、マイコンが制御不能状態になった?

   ただ、おそらくウォッチドックタイマーなどでマイコン動作を監視していると思われるので、可能性は低い。

  ・マイコン内部の故障

  ・まぶたの開閉位置を決める4つのスイッチが接触不良などが起き、プログラムがスイッチからの信号待ちの状態になった。

   これはプログラムロジックの話なのですが、プログラムでスイッチからの信号が戻らない場合、待ちくたびれて次の動作に移行するようにプログラムされていると思いますが不明です。

 などでしょうか。

 今回のオーバーホールで治癒できれば良いのですが。

 お家での継続観察結果を待つのみです。

 お母さまの思い出が詰まったネルルでした。これからも元気に過ごせることを願っています。

 

【おまけ】

 ウォッチドックタイマー:

  ウォッチドック(watchdog)とは、「番犬」という意味の英単語

  マイコンが正常動作をしているかを監視するハードウェアの回路とプログラムで構成されるしくみです。

  プログラムが正常に動いていない状態になるとウォッチドックが吠えて、マイコンは強制的に決められた処理をするプログラムに移行します。

  

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