【申告】
音が鳴らない時があります。
・ふたを開けた時
・くまボタンを押した時
・流しレバーを回した時
【診察】
このおもちゃは、万年筆などで有名なPILOTで1992年から発売されているメルちゃん人形の生活おもちゃです。すでにバリエーションも複数あります。
外観、触診からです。
・電池電圧および電池ボックス端子にさびなど問題はありません。
・ふたの軸受け部に白化現象が見られます。
・ふたの開け方で、オープニングの音が鳴ったり鳴らなかったりします。
左側軸に遊びがあります。
・ふたを開け、オープニングの音が鳴らない時は、くまボタンや流しレバーを操作しても音が鳴りません。
以上の観察から、くまボタンや流しレバーの音が鳴らない原因は、ふたが開けられた信号がマイコンに伝わっていなかったと推定できます。そして、左側軸を抑えると試した限りオープニングの音が鳴ることが確認できました。
そこでふたを外してさらに軸や軸受けを観察しました。
ふたを外してわかったことは、左側軸受け部に摩耗がありました。軸側にも若干軸の角が摩耗している感じです。
原発巣は、この摩耗が起因しているものと考えられます。
治療方法の検討です。
・鉄芯を新たな軸として通す。
・左軸部を3Dプリンタで部品を作成する。
・軸受け部を作り直す。
を考えてみましたが、左側軸の白化現象部はすぐに折れてしまう程ではありません。さらに摩耗個所は、軸受け部の入り口部であり軸受け穴の奥には有りません。そこでふたを左側にずらすと、軸が軸受けの奥側とはまるので遊びがなくなることがわかりました。
ふたを左側にずらすために考えたのが、右側軸にスペーサを挿入することです。平ワッシャーの内径をリーマで広げ挿入しました。
これで、左側軸の遊びが無くなり音が鳴らない症状はなくなりました。
【治療後記】
当初は軸を通さなければだめかと思いましたが、幸いなことにふたの位置をずらすことで今回は対応できました。白化現象で軸が破損したときは、また治療方法を検討しましょう。
今回の軸の磨耗と白化現象の関係は不明です。摩耗は長い時間が必要ですが白化現象になるのは一時的な過負荷が掛かった場合などに起きます。ふたの左軸部には見てわかるほどの変形がないことを思うと、摩耗と白化現象とは直接関わってないように思えます。
【おまけ】
①今回の摩耗の原因を検討します。
ふたを開けたことをマイコンが検知するためにリーフスイッチがあり、その押し子がばねで押し出されています。ふたの開閉動作でふたの突起で押す構造です。
左軸受け入口側と軸角が摩耗していることから
・ふたのスイッチの位置が左軸受けに近いところにあること
・ばねの反発力が強い
・軸の軸受けの入り具合が少ない(軸が短い)
ことが今回の摩耗が発生した要因と思われます。たらればの話ですが、左側の軸の長さがあと1.5mm長ければ状況は変わっていたと思います。
ふたを開けても音が鳴らなかった状況図と対策図のイメージです。
②遊び方と構造です。
トイレの使い方を学ぶ学習おもちゃでもあるので、実際のトイレと同じ使い方です。
・ふたを開けます。おしゃべりがあります。
・用を済ました状態がくまボタンを押した状態です。ボタンを押すとハート型の顔が現れおしゃべりがあります。
・次に、流しレバーを回すとハート型の顔が消えて水の流れる音がしておしゃべりがあります。
・ふたは、閉めてもおしゃべりはありません。
ハート型の顔を出し入れするしくみは、ばねとフックを使った機械仕掛けで動作しています。
ふた、くまのボタン、流しレバーの動作スイッチがあり、これをプログラムで検出処理をしてスピーカで音を出しています。
回路接続は、次図のようにスイッチとスピーカとCOBがある基板のみです。