【申告】
家族になったのは、2020年5月です。今までの電池交換頻度は、1ヵ月~2ヵ月間隔で良かったのですが、3月頃から5、6日で「なんかウトウト」と言い出し電池交換が必要になりました。
他には、特に異常は無いようです。
家族にはネルルもダッキーも居るのですが、この子は購入時より電池の消耗が早い傾向があったと記憶しております。
【経緯】
札幌にあるおもちゃ病院に問合せ治療不能との回答で、こちらに問合せがありました。モデルチェンジ後のユメルです。
ユメルの場合、大きな電流が流れるのは、
・モータやその駆動回路
・スピーカ
が考えられますが、モータの駆動頻度は低いので内部を診察をしないと分からないと回答し、来院することになりました。
【診察】
電池の消耗が早いとの申告でしたので、待機状態で電池の消費電流を測定したところ約6mA流れていました。健康なユメルがどのくらい電流が流れるかは不明ですが、多いかな?という感じでした。
音量”小”状態でお話し中は、30~40mAで、まぶたの開閉動作時には100mAを超えています。
目安としてパナソニックのHPより単2アルカリ電池の定電流連続放電特性グラフを確認してみました。
上記グラフからすると、6mA流れると約1,000h(約42日)になります。
他方取扱説明書では、アルカリ電池で1日40分遊んで約2ヵ月持つと記載されています。
これからしても待機状態で6mAは、過剰に流れていると考えられます。
電流が流れている個所を狭めるために
・まぶたのモータ
・スピーカ
・制御基板に接続されているセンサー類
を順次外して消費電流を確認しましたが変化がなく、制御基板内で過剰に電流が流れていることが判明しました。
制御基板を検査しますが、外観的に電気二重層コンデンサの天面が電解液の漏れなのか付着物がありましたので、電源系をまず調べました。
制御基板の部品配置と電源系の回路図は以下のようになっています。
乾電池を切った時のそれぞれの電圧変化です。
本来電気二重層コンデンサの電圧は、約3Vで維持しなければなりませんが、制御基板の回路電圧(3.3V)を作っているレギュレータの電圧が下がるのと同じように下がっています。
電気二重層コンデンサを調べることにしました。
電気二重層コンデンサを外し、無負荷状態での時間経過と電圧値を観察しました。
無負荷状態では、取扱説明書にある乾電池交換制限時間の6分を超えても電圧低下は確認できませんでした。
電気二重層コンデンサを外すとセラミックコンデンサC4,C5がありますが、C4のはんだ付け部にクラックが確認され、C4,C5も外した状態で消費電流を測定してみましたが、変化はなくこれらのコンデンサが病巣ではありませんでした。
電気二重層コンデンサの電源ラインに接続されている残りの部品は、メモリがありますが発熱もしておらず、故障の確率もコンデンサ類に比較するときわめて低いと考えられるので、外しての確認まではしませんでした。
ここまでで、電気二重層コンデンサのラインから電流が漏れていることがわかりました。
次に、レギュレータの入出力ラインの電源系を確認しました。
2つのアルミ電解コンデンサを外して診ました。
レギュレータの出力側のコンデンサ下面に電解液漏れかフラックス汚れかがありました。この状態で電流値を確認しましたが変化はありませんでした。
モータドライバICも外して診ましたが、結果は変わらずでした。
大きな電流が流れる可能性がある部品を外して病巣を探りましたが、たどり着きませんでした。
万策尽きた感もあり、外した部品を元に戻して様子を見ることにしました。
初期設定を始めると、「なんかウトウト」と電池電圧が低下した時のおしゃべりを始めました。この時のマイコンへの監視電圧は2.16Vでした。
マイコン内部の電圧比較回路にも異常が起きているようです。
もし比較電圧だけの故障であれば乾電池の電圧監視はできなくても動作ができるかと思い、疑似的に監視電圧を3Vにしてみましたが、変化ありませんでした。
【治療後記】
北海道から治療のために旅をしてくれましたが、治してあげることができませんでした。
持ち主様から献体の申し出がありました。今後の治療に生かしていこうと思います。