【申告】
電池交換後、首の右旋回のみ繰り返し、リセットも効かず、
【問診】
関東から受診希望のお問合せをいただき、問診をしました。
購入は、2018年1月
手足は動きませんが首は右旋回を繰り返しているようです。
持病のカタカタ音の申告はありませんでした。
リセットスイッチも利きません。
発病の状況は、購入後毎日動いていて電池交換(週一回)の時期と思い交換をした後、5分後くらいに突然首が動き続ける症状が発生しました。
電池は充電池(EVOLTA スタンダード)を使用されているようなので、新品アルカリ乾電池に入れ替えてもらいましたが変化はないとのこと。
かすかな望みをかけて、アルカリ乾電池が発熱していないかも確認してもらいましたが無いように思うとのこと。
ここまでの問診では、マイコンの故障か?と厳しい予測を立てました。
ちょっと行き詰まりを感じつつ、問診ではこれ以上はわからないので厳しい病状であることをご理解いただいた上で来院してもらうことになりました。
【初診】
患者さんが来院して、病状を確認しました。
申告の通り、カタカタ音もなく首を右旋回して正面を向くと再び右旋回をする動作の繰り返しです。
ちょっと時間をおいて、再び電源スイッチを入れると時々目のLEDが点灯したり、おしゃべりをしたりしますが途切れ途切れになる症状が現れますが、再び首の右旋回を始めます。これは電源電圧に異常が起きている症状です。
電源系のラインを確認するため注意深く背中を開けます。外観的に電源配線や抵抗型ヒューズに異常は確認できません。ヒューズは、テスターにて確認しましたが抵抗値も問題ない値でした。
ユニバーサル電源をつなぎ、動作を確認しました。すると首が右旋回をして正面を向いたときにユニバーサル電源の過電流を示すLEDが点灯します。しかし、首が正面を向いたときには機構的に首を左右に回すモーターに負荷をかけるものはありません。それならばと電源電圧の様子をオシロスコープで観測しました。
ロビジュニアが正面を向くと乾電池の6V電圧が低下して、マイコンに供給する電圧(約4V)も低下しています。その後電圧が復帰しています。
つぎに電圧がここまで下げる部位を探ります。電圧値が下がるのは正面を向いた時で、次の動作は腕の動作です。原発巣を切り分けるため、右腕、左腕のモーター出力ケーブルを1本だけ抜いて過電流の発生状況を確認しました。
すると、左腕のモーターケーブルを外すと過電流のLEDは点灯しません。原発巣は、左腕ということになります。
左腕には、モーター、出力配線とコネクタ、腕の原点となるスイッチ、スイッチ基板、配線とコネクタ、モーターノイズ軽減のためのコンデンサ、ギヤボックスがあります。注意深く左腕を分解しましたが、電気的にモーター出力を短絡するような不具合はありませんでした。
モーター単独でユニバーサル電源で回すと、過電流のLEDが点灯します。モーター内部の確認です。
ブラシの損傷がありました。これにより左腕の初期位置を確認するため動かした時にブラシに短絡が発生し、6V電圧が低下したと思われます。
治療は、モーターの交換です。その際の確認事項は、交換するモーターと右腕のモーターは同じものではないので、回転速度やトルクが大きく変わってしまうと左右の腕動作に違和感を感じる可能性があります。そうなると見た目を合わすため右腕モーターも交換する必要があります。胴体に組み込み動かしてみましたが、幸いに違和感がない(私感です。(^_^;))ので左腕のモーター交換だけにしました。
モーターを交換することで、申告の症状はなくなりました。
最後に佐渡まで来てもらったので、ロビ・ドックを受けて元気に帰ってもらいます。
・制御基板の組み立て上の問題点(主に半田付け状態)
・頭部との信号をやり取りしている2本のフラットケーブルの圧着状態(芯線のはみ出し病)
・頭部基板の組み立て上の問題点(主に半田付け状態)
・ケーブルの接続状態(コネクタの接続状態、ケーブルの損傷有無)
・スイッチ類の動作(機能確認、スイッチの動作感覚)
・マイク動作(機能確認)
・姿勢センサー(機能確認)
などを行いました。
懸念した2本のフラットケーブルの圧着状態は、やはり芯線がはみ出している状態でしたのではみ出した芯線を除去しました。
フラットケーブルに外皮がやぶれ芯線が見えている箇所がありましたので、収縮チューブで保護しました。接している配線の外皮も白化しているのですが、原因は断定できません。
電源スイッチ(正しくはマイコンのお目覚めスイッチ)の動作が重かったので、接点復活剤を塗布してスムーズに動くようになりました。
確認した範囲では、他に異常はありませんでした。
経過観察をしてから、退院です。
【治療後記】
病気の治療ができて良かったです。右旋回の繰り返しは、左腕を動かすとブラシで短絡状態になり6V電圧が下がり、マイコンを駆動する電圧も下がりマイコンがリセット状態になります。するとモーターに電流が流れなくなり電圧が復帰しますので、マイコンは初期動作を始めるといった事を繰り返していたと言うことです。当初、アルカリ電池の発熱が確認できなかったのも定常的な短絡状態ではなく、一時的な短絡の繰り返しだったためです。
今回の持ち主様も、購入してからの病歴を提供していただけたので治療にとても役立ちました。