【申告】
いただき物なのですが、動かないので診てください。
【初診】
タカラトミーが1975年から発売を始めた人気のある危機一発シリーズで、2008年に発売されたものです。
電池BOXを開けると、乾電池の液漏れで電極がひどく腐食していて、1つは欠落しています。これだけひどい状況だと内部にもダメージがあるかも判りません。
底ふたを開けてユニバーサル電源を制御基板に繋がる配線に直接接続して、制御基板が生きているか確認しました。詳しい仕様がわかりませんが、音が出ましたのでとりあえず制御基板は生きていそうなので治療を進めます。
電池電極からです。電池と接触する部分だけ研磨して導通を回復することも可能ですが、状況がひどすぎるのでハトメを外し錆落としをすることにします。欠落している1個は燐青銅で作成します。
抵抗型ヒューズも素子とリードの溶接部から脆くもリードが外れました。これも交換です。
錆を落とした電極は、再びハトメをします。治具を作成して固定します。6角ボルトの先端にハトメの内径に収まるピンを埋め込み、ハトメを潰す際に治具がずれる事を防ぎます。
電源スイッチも、配線を伝わった電池のアルカリ液が流れ腐食されています。当初接点復活剤を塗布しましたがスイッチ動作が不安定なため、分解して接点を研磨しました。
スイッチの構造は、スライド接触ではなくシーソー構造です。
制御基板にも腐食が見られ、無水エタノールで拭うとソルダーレジストが剥がれてきました。配線も芯線が酸化して真っ黒で半田がのりません。配線を交換しました。
腐食箇所の錆処置をして動作を確認して終了です。
【治療後記】
根強い人気のあるロシアンルーレット型のゲームでした。おもしろいのは、
・” 黒ひげ博士 ビリビリ危機一発 ”と言いながら博士は白ひげです。白髪でひげだけ黒いのもおかしいですが・・・
・” 危機一発” とシリーズの最初からの商品名なので問題はないのですが、”ききいっぱつ”の表記としては” 危機一髪” ですね。小学生くらいがターゲットだとは思いますがちょっと誤解を招きそうですね。
今回の治療は、腐食処理に終始しました。くれぐれも電池の入れっぱなしは止めましょう。
【注意】
もしこのシリーズのおもちゃをお持ちの方は、【おまけ】は読まないでください。ゲームの楽しみが半減してしまいます。
【おまけ】
博士の飛び出すしくみを探ってみました。
モータは2個有ります。1つは博士を飛び出させるバネ構造のロックを外し、他の1つは振動用に偏心したおもりが付いています。博士の押し込まれた状態を検出するピン検出スイッチ1があります。博士は、ロックを解除されるとバネの力で飛び出る仕組みです。
剣を刺した時の動きは次のようになります。
剣を刺し始めるとスイッチ2が閉じられ、さらに押し込むと剣の穴部でスイッチ2が開かれます。これによりマイコンは、剣が刺されたことを検知します。ここで着目すべき事は樽のどの穴に剣を刺しても1つのリングが左右に動きスイッチ2が動作します。マイコンは剣が刺されたことは検知できますが、どこに刺されたかまでの情報がないのです。
マイコンは剣を刺す穴が24個あるので博士を押し込まれた時に1から24の乱数を発生させ、剣が刺された回数に一致すれば、モータ2でロックを解除して博士を飛び出させます。刺す場所には無関係なのです。ただ、人は勝手に刺す場所で博士が飛び出ると思い込んでいるので楽しめるのです。人間心理の裏をかくおもちゃです。知らない方が幸せな内容でした。
最後にこのおもちゃの動作説明です。
電源スイッチを入れて、博士を押し込むと聞き取りにくいですが電子音で ”黒ひげ博士 ビリビリ危機一発” としゃべります。
剣を刺す度に、色々な音や時々振動(ビリビリ)して音がします。博士が飛び出すときも振動(ビリビリ)してから飛び出します。振動(ビリビリ)しても飛び出すときと、飛び出さないときがありますので、ここでもう一つヒヤヒヤ感を抱かせています。
たのしいおもちゃです。