【申告】
おしゃべりボタンを押してもおしゃべりしません。
【初診】
2つのボタンとも押しても反応がありませんでした。
操作部の様子です。
内部の様子です。
ボタンの接点状態を診ましたが、異常はありませんでした。
そこで基板を観察しましたら、複数のひび割れが確認出来ました。ひび割れでパターンが切れているようです。
樹脂封止されている際でパターンが切れている箇所があります。接続するためのパターンが封入樹脂下にあるため、接続するには樹脂を切削する必要があります。
超音波カッターを使用して、樹脂を削り内部の切れたパターンを出します。
現れたパターンの半田レジストを剥がし、ポリウレタン銅線を半田付けします。
他の切れているパターンも同様に接続します。
これで、歌やおしゃべりをしない病気は治ったのですが、何故パターンが何カ所も切れたのでしょうか?基板は紙基板なので剛性はないのですが、それにしてもおかしいです。
基板の固定方法とボタンを押した時の状況を確認しました。
基板を固定する溝の幅が、基板の厚みより狭く、しかも片側の溝は途中からほぼないように狭くなっています。これは、樹脂成形金型の破損による結果だと思います。ここで、おもちゃでなければ金型を修正して成型をするのでしょうが、おもちゃであり金型を修正する費用より手直ししても費用が安かったのでしょうか? そのまま製品として使用しています。
基板の厚みを削って挿入しています。
基板を支える部分の厚みを削っていますので、本来ボタンを押されたときの力を支えるだけの強度が基板にはありません。結果として薄く削られた箇所にひび割れが発生し、ボタンを押されると基板がたわみ、基板上の配線パターンが切れてしまったと思われます。
配線をつなぐことで機能は回復しましたが、このまま使うと再び切れてしまうと考えられるので、ボタンを押しても基板がたわまないように基板の裏側にスペーサを挿入しました。
これで、基板はたわまなくなりましたので、パターン切れは少なくなると思います。
元気に退院です。
【治療後記】
正確な時間系列はわかりませんが、発売初期はこの溝に入る厚みの基板だったようです。それが市場でやはりボタンの押す力に耐えられず割れる不具合が発生したのでしょうか?
対応策として今回のように基板を厚くしたのかもわかりません。しかし溝の幅は狭いままなので基板の厚みを薄くせざるを得ず、ボタンを押す力を支えるには無理があったようです。構造設計時に、適切な位置に支点を立てておけば、このような不具合には繋がらなかったと思います。
この患者さんと同じ状態の成型品がいくつ販売されたかはわかりませんが、全国のおもちゃ病院を訪ねる患者さんのなかにも同じ症状もきっとあるでしょう。ぜひ、パターンの接続とともにスペーサの挿入を全国のドクターにはお願いしたいです。