【申告】
動かなくなりました。
【診察】
詳しい状況については、あまりお聞きできませんでした。
クオーツ時計の長針部を利用して赤いフィルムが回転していき、残り時間を赤いフィルムで見えるようにしたもののようです。また、ブザーON/OFFのスイッチがあるので、タイムアップで音が鳴るのかもわかりません。
①時計が動きません。
電池は、十分電圧がありました。
電池BOXには、さびなどはありませんでした。
電池BOX 端子にユニバーサル電源を接続すると、時計の動く音がします。
さて、何が起きているでしょうか?。何か電圧以外に原因があるはずです。内部を確認していきます。
不安定な要素として
・機械的な負荷を考えます。
軸受け部の汚れを除去しました。
・水晶の発振状態を確認しました。
波形や周波数にも異常はありませんでした。
・バッテリー端子と基板の接続パターンとの接触部を確認しました。
端子とパターン面を清掃、接点復活剤を塗布しました。基板固定ねじの締め付け具合も確認しました。
時計の動作を妨げる病巣を確認することはできませんでした。
②ブザーが鳴りません。
・ブザーON/OFFスイッチの動作を確認します。
スイッチにさびなどなく動きもスムーズです。予防保全として接点復活剤を塗布して、怪しげなはんだ付けもやり直しました。
・ブザーを駆動しているトランジスタの破損の有無を確認しました。
トランジスタは、破損していませんでした。
・ブザー駆動のスイッチの仕組みを確認しました。
赤いフィルムと同心軸で回転するSW摺動子が、基板の円状のSWパターン上を回転しています。そしてブザーを鳴らすパターンと短絡するとブザーを鳴らす信号としてマイコンがブザーを鳴らす仕組みです。
ところが、ブザーを鳴らす信号パターンが摩耗して消失していることがわかりました。そこで、まずマイコンは正常に動作しているか確認するために、残っているブザーを鳴らすパターンと円形のパターンを短絡させるとピピッと鳴りましたので、マイコンは故障していないことがわかりました。
次に治療方法の検討ですが、消失したパターンを再生するには細すぎて困難です。そこで、SW摺動子に目を向けました。
基板上にわずかに残っているパターンのはんだレジストを剥がし、SW摺動子の接点が触るように少し外周側に曲げて接触するようにしました。
円形のパターンには、接点グリスを塗布しました。
最後にSW摺動子がブザーを鳴らすパターンと短絡する状態で、時計の残り時間が0となるように組み立てて治療は終了です。
【治療後記】
受付段階での明確な情報を得られず、手探りで治療を進めました。時計が関係するおもちゃにはクオーツ時計が内蔵されているものがほとんどです。時計が狂ってしまっているとモジュール毎交換となることが多いのですが、幸いに今回はモジュールには問題はありませんでした。
ただ、購入してから5年ほど経過していますが、パターンが摩耗して無くなっていましたので、この後やはり同じことが起きると考えられます。その時は、パターン再生手法を検討しなければなりませんね。