【申告】
おしゃべりボタンやメロディボタンの音が鳴らなくなりました。
【診察】
2012年に発売されたIDESの三輪車です。
申告通りおしゃべりボタンやメロディボタンの反応はありませんが、ON,OFFスイッチでは音が出ていますので、ボタンにかかわる個所に病巣が有りそうです。
ポップアップレバーの動きが渋いです。
外観的にはとてもきれいです。
・ポップアップレバー
レバーを下げると効果音が流れ、ミッキーが飛び出します。
・回転ポッド
樽型のポッドを回転させることができます。
・カリカリつまみ
つまみを回すとカリカリ音がします。
・キラキラライト
ポップアップレバーを下げたり、メロディボタン、おしゃべりボタンを押すと光ります。
・ON/OFFスイッチ
ON側に倒すとおしゃべり音とともに電源が入ります。
OFF側に倒すとおしゃべり音とともに電源が切れます。
・メロディーボタン
押すとメロディーが流れます。
・おしゃべりボタン
押すとおしゃべりをします。
・ボリュームつまみ
左右に回すと音量を調節できます。
内部を開けていきます。
複雑な構造をしており、分解するにも順序が決まっています。ブロックを組み立て最後にドッキングという作りではありません。
見ていくとLEDにつながるフラットケーブルが、組み立て時の不具合で外皮が破れ芯線が露出しているのが確認できました。他にも配線が挟まれつぶされているものがありました。
電池ボックス、ボタンと制御基板のブロックを分解します。
制御基板は、アルミ配線の片面基板です。裏面はカーボン印刷でボタンの串歯パターンと配線を形成しています。基板の表裏の導通を持たすために、基板の穴にカーボンインクを垂らしています。
観察を進めると、2つのボタンのカーボン印刷のパターンとアルミパターンとの導通を保つスルーホールに腐食が有りました。電池の液漏れが内部に流れ腐食を起こすことは良くあることですが、2つのボタンに関わるスルーホール部分だけが腐食しています。ちょっと不思議な感じがします。
いずれにしても、このスルーホールで表裏の導通が絶たれていると思われましたので、スルーホールの腐食をきれいにして導電塗料を塗布して様子を確認しました。スルーホールBは音の回復がありましたが、スルーホールAは回復しません。
そこで超音波カッターでCOBの封止樹脂を削り、スルーホールAのパターンの様子を確認しました。すると腐食が進んだのでしょう。アルミパターンが封止樹脂の際から無くなっていました。
わずかに顔を出したアルミパターンとスルーホールを繋ぐ必要があります。この時隣接するアルミパターンと半田ショートしないように、半田レジストを隣接するアルミパターンに塗布してから行います。スルーホールには鈴メッキ線を通し、鈴メッキ線と封入樹脂下のパターン間は細い銅線で半田付けをすることができました。これで、音が回復することができました。
(写真では、導電塗料がアルミ配線の半田レジスト上にかかっていますが、乾燥後かからないように除去しました。)
ポップアップレバーの動きが渋いので診察です。
仕組みは、ポップアップレバーを下げると円筒カムが持ち上げられ、ミッキーがついている円筒部品の従動節が上下、回転運動をする仕組みです。
動きが渋い原因は、円筒カムと従動節との摩擦が大きいからなので、シリコーンスプレーを塗布することでスムーズ動くようになりました。
最後に組み立てです。例によってすべての部品が半田付けによる配線によってつながっています。配線の半田付け部に負荷がかかると切れてしまいます。組み立て順序に気を付けながら行います。
LEDのフラットケーブルと潰されていた他の配線も交換しました。
【治療後記】
水の侵入によると思われる基板配線の腐食が原因の病気でした。組み立て上の不具合も治療して元気になりました。
【おまけ】
腐食の発生経緯と対策を検討します。
電池の液漏れではないので、三輪車という特性から屋外での使用がされますので雨などの侵入を検討します。
ボタンの脇からの水の侵入は十分予想されますが、なぜ2つのボタンのスルーホールにだけ腐食が発生してのでしょうか?構造を考えると水の侵入経路はON,OFFスイッチ脇からが主と考えられます。なぜなら、他の2つのボタン経路では中板に立ち上がり部があり、容易には侵入はしづらいと考えました。
仮にON,OFFスイッチ脇から水が浸入したとすると、水は基板のボタンの串歯印刷面に流れることになります。
今回腐食した2つのスルーホールの位置合いはラバー接点の端に有ります。水が浸入したことを考えるとラバー端に水は表面張力でたまります。それがスルーホールに入りアルミパターンを腐食させたと考えられます。
万全でありませんが、スルーホールとラバー接点端を接着剤で固め水の侵入をいくらかでも防ぐようにしました。