【申告】
電源スイッチを入れても直ぐに切れてしまいます。
【診察】
2004年にTOHO(現在のジョイパレット)から発売されたものです。このおもちゃは人気があり、この後も販売されており2021年発売で4モデルとなります。
病状は申告の通り電源スイッチを入れてもすぐに切れてしまいます。内部を開けて検査開始です。
取りあえず接続が切れているような配線はありません。電池BOX端子から順次電源ラインを追いかけていきます。
目を引いたのが、電源スイッチのある基板に誰かがさわっている痕跡がありました。
スイッチのリード半田付け部の間を短絡していると思ったのでしょうか?。隙間をひっかいたような痕跡でした。今回の病巣ではなさそうです。
電源スイッチのパターンレイアウトは、つぎのようになっています。
回路は、次のようになっていました。
制御基板への電源配線は、A点に接続されていました。電源スイッチからA点までは太いパターンで接続されてします。ところがA点で電圧を観察すると電圧が出たり出ていなかったりしています。これから言えることは、電源スイッチのリードからA点までのパターンのいずれかで切れていると言うことです。ルーペで覗いてもわかりません。場所を特定しても余り意味はないので、制御基板への電源配線を電源スイッチのリードB点に直接接続しました。これで、安定して電源が入るようになりました。
これほど太いパターンが切れると言うことは考えにくいですが、推測すると次のようになります。
アンパンマンの鼻の赤いボタンを押していないときは、電源スイッチ基板との間はバネで鼻の赤いボタンは浮いています。ボタンを押すと電源基板上の電源スイッチが押されますが、電源スイッチの下死点に達すると電源基板に力が加わり基板がたわむようになります。購入されて19年程経過しており、この基板への力の繰り返しによりパターンにクラックが発生して、クラック断面の接触具合で電源が入ったり切れたりしていたと思われます。
これで全ての機能を点検して終了かと思いましたが、19年間の年月はそうは問屋が卸してくれませんでした。音の出ない鍵が複数有ります。
このような鍵盤を持つおもちゃの場合、多くの場合鍵盤の隙間から飲料や、ほこりが入って二次災害が起きたり、シリコーン接点の抵抗値が高くなったりしてスイッチの導通不良を起こします。
制御・機能キー基板は、使用頻度も低いためと思いますが、現在のところ正常に動作をしています。
鍵盤キーですが、飲料?とおもわれる汚れ、ほこりの侵入が認められ、清掃をしましたが1箇所スイッチの櫛歯パターンの腐食やシリコーン接点の抵抗値が高くなり複数の鍵で音が出ませんでした。
1つの鍵のパターンが腐食しています。
櫛歯接点パターンとの距離が離れているので芯線を入れ半田で接続します。
・ポリイミドテープで半田が流れてほしくない櫛歯パターンをマスクします。
・半田レジストを剥がした接続先と、櫛歯パターンの半田付け部にフラックスを塗布します。
・芯線を入れて半田付けをします。
・フラックスを洗浄します。
一通り基板の櫛歯パターンを消しゴムと無水エタノールで清掃した後、シリコーン接点の抵抗値が高くなり、音が鳴らなかったり不安定なシリコーン接点にはアルミ箔を貼付しました。
これで、全ての鍵盤の音が安定して鳴るようになりました。
【治療後記】
また楽しく遊んで下さい。