【患者さんの申告内容】
動かなくなった
【初診】
メロディ12曲と効果音6種類が鳴るサウンド絵本です。また、振って音が出て、タンバリン部分を叩くとLEDも光ります。
電池電圧は、正常です。開腹して病巣を特定します。
動作不良につながる病巣は、電池BOX電極の腐食です。おそらく電池からの液漏れにより電極が腐食して、その後新しい電池を入れたが電極には強アルカリ液が付着したままだったので、電池の負極を腐食させてしまった。たまたま、負極の腐食していない箇所で電圧チェックをしたため正常電圧が観測されました。
電圧確認時の観察不足です。<(_ _)>
この負極の腐食部は、無水エタノールで拭ったくらいでは落ちず少々こそげ落とすようにしました。
電極のさび落としは、メッキのダメージを下げるためさび落とし剤を使用しました。
これで、動作はするようになったのですがスイッチ、スピーカやケースの締結ねじにさびが目立ちました。
よく観察すると、さびているスイッチ、スピーカやケースの締結ねじは直接液体にさらされます。
電源スイッチは、レバーにキャップが被さっているので直接スイッチは液体にさらされない状態です。そのためさびていないと思われます。
では、その液体とは? 思わずおしゃぶりしたかな?(*^_^*)
ネジのさびは落とし、スイッチには予防保全として接点復活剤を塗布しました。スピーカは、おとなしくなったら交換しましょう。
その他の部分の検診です。
ボタン類の接点を清掃しました。
動作は、以下のようになっています。いずれもおもちゃではおなじみのスイッチです。特に導電性ラバー接点を使用したスイッチはテレビやエアコンなどのご家庭内にあるリモコンにも使用されています。スイッチを押しても動作しなくなる主な原因は、導電性ラバーや基板接点部の汚れ、基板接点部の摩耗、ラバー接点の摩耗です。基板接点と導電性ラバー接点の汚れを拭っても動作が改善されない場合の処置の一つとして、導電性ラバー接点にアルミ箔を両面テープで貼付する方法があります。柔らかいエンピツで導電性ラバー接点をこする方法もありますが、この微粉末が基板上の導体部で短絡したりする二次災害を起こさないように、わたしはこの処置方法を選択しています。
導電性ラバーにアルミ箔を貼付したものです。なお、リモコンなどのアルミ箔貼付は自己責任でお願いします。
基板接点部には、銅やアルミを使用したものとカーボンなどを含有した導電インクを印刷したものがあります。導電印刷した接点は安価に製造できますが、金属製のものに比べると耐久性は低いです。
金属製の接点例
導電印刷の接点例
最近の家庭にあるリモコンは、この導電印刷の接点が多いかと思います。
スイッチの構造です。
導電性ラバー接点スイッチ
ドーム部でスイッチのクリック感を持たせています。
フィルムに導電印刷をしたスイッチ
安価にできますので、ボタンの数が多いおもちゃなどに利用されることが多いです。
フィルムにドーム形状加工をして、クリック感を持たせたものです。
スペーサを挿入したもの。
クリック感はあまりありませんが、安価にできます。
これ以外にも基板部もフィルムでできているものなど、構造的な組み合わせのものがあります。
最後に振り振りセンサーです。
振られるとバネが揺れ接点に接触するという仕組みでした。
【治療後記】
病巣は、電池の液漏れによる電池負極の腐食と電池BOX負電極の腐食でした。
今回は、おもちゃの開口部からの唾液の浸入?による部品のさびを考えさせられました。おもちゃに限らないことですが、扱う品物と扱う人と扱い方のマッチングは考えないとトラブルの元になりますね。