3匹の子豚との日々 =DIAS CON MIS TRES CERDITOS=

スペインSpainのサラマンカSalamancaのラ・アルベルカLa Albercaから不定期につづります。

イベリコ豚についての質問

2010-09-07 03:52:23 | Historia de Iberico


以前「裂かれる心」の記事に下のようなコメントが寄せられていたのですが、
宮崎の口蹄疫の最中でしたし、回答を待っていただいていました。

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教えて下さい。 (maru)
2010-06-27 19:00:50

hiromiさん初めまして!
ここのコメ欄にそぐわないかも知れませんが
教えて欲しい事があります。

イベリコ豚を購入して美味しく頂きました!
とっても美味しくって、こんなにステキなお肉は初めてです☆
なんだかとっても体にいい事をした!と有頂天になりました(笑)
完全に踊ってますよね・・・(゜∀゜ ;)タラー

しかし素朴な疑問です。
どうして自国で消費して森を守る事が出来ないのか?
日本に輸出できるということは、余っているということ?なのでしょうか?

日本でブームになると根こそぎ商品がなくなりますよね。
売れる物に名を代え、品を代え偽造だってありましたよね。
そうなってしまう可能性はないのだろうか?
日本で消費しないといけないことなのかしら?
あんなに美味しいのだから、きっと自国消費できるはず!!!!
とモグモグ食べながら思った訳です。

需要と供給のバランスがおかしなことになっていて、hiromiさんが
立ち上がったのでしょうか?
もしくは、ビジネスとして割り切られているのでしょうか?
相当アホな質問をしてしまっていると思います。。
調べれば答えが出てくるかもしれないですけど。。。
だけど、ただ消費すれば森を守れるということにワタシはどうしても
疑問なのです。
すいませんが、ヒマな時にでも教えてください。


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maruさん、ご質問ありがとうございました。
長い間、回答を延ばしてて、ごめんなさい。

宮崎の口蹄疫も終息し、通常な状態に戻りつつあるようですので、
そろそろ書いてみようと決心しました。
以前に、【イベリコで実現したいこと】や【「ドングリの森を守ろう!」プロジェクト
-仮称-】
【私の仕事と今後の流れ】で書いたことと重複する部分もあると
思いますが、お付き合い下さい。

とりあえず、maruさんの質問にそって、書いていきます。
まず、「どうして自国で消費して森を守る事が出来ないのか?
日本に輸出できるということは、余っているということ?なのでしょうか?」
というご質問ですが・・・・。


数年前からの金融危機で、スペイン国内での消費もかなり下がっています。
と同時に、イベリコ豚の飼育頭数つまり生産量も既にもう下がってきています。
特に飼料を与えるイベリコ豚に関しては、飼料代が調達できず、飼育頭数が
激減という状況ですが、幸いなことに、品質の高いイベリコ豚は、基本的に
飼料に頼っていないため、今のところあまり影響を受けていません。
まぁ、質の悪いイベリコ豚は淘汰されてもいいのですが、でもこの不況が長期に
渡って続き、経済の回復が遅れ、イベリコ豚全体の消費量がどんどん減ってしま
えば、この先どうなるか分かりません。

イベリコ豚の需要が減れば、生産業者の収入が減り、次の飼育のための買い付
け頭数、つまり飼育頭数が減り、生産量が減ります。すると、イベリコ豚の生体
価格が上がり、これは加工品つまり生ハムや腸詰めの価格の値上げにも繋がり、
不況下、価格が上がると消費が更に減り・・・と悪循環に陥ってしまいます。

最悪の場合は、イベリコ豚を肥育するドングリの森の維持もできなくなり、
森を収入の得やすい農地に変更したり、手放してしまうことになってしまいます。
一度失った森をまた再生させることは大変難しいことですから、森を減らさない
ことが重要なのです。
そのためには、イベリコ豚の消費量をできるだけ減らさないよう、現状維持を
していくようにしなくてはいけません。

もちろん、スペイン国内でも、イベリコ豚に関係する、飼育団体、屠畜・加工品
生産団体などが、消費促進のキャンペーンをやっています。
私はイベリコ豚や加工品を日本へ輸出する仕事に携わっているので、日本へ
向けてのキャンペーンをしているだけです。
余っているというわけではありませんが、他の食肉に比べたら、最も自然に近い
状態で飼育されているイベリコ豚は、食べる人にとって美味しいだけでなく、
健康にもよく、さらには環境にも負荷が少ない、理想的な食材ですから、私は
日本の方々に是非召し上がっていただきたいという思いがあるのです。
美味しいもの良いものは多くの人々の手に渡り、喜んでもらってこそその価値が
上がるのだと思っていますので。

家畜の飼育のために、環境が破壊されている、という説明がよくされていますが、
それは、狭い畜舎に詰め込んで大量生産する畜産業という形態に限られているの
ではないかと私は考えています。
イベリコ豚のように、大自然の中で放牧飼育している場合は、環境が破壊される
ことはなく、反対にその飼育条件を整えるために、環境を保護していく努力が
必要なのです。

古代ローマ時代以前のイベリア半島は、ほとんどがドングリの森で覆われてい
ましたが、時代が進むにつれて、開発が進み、今では南西部のエクトゥレマ
ドゥーラ地方を中心にサラマンカ県の一部とアンダルシアの一部、そしてポルト
ガルの一部に残っているだけです。
これ以上減らないように、数年前からスペインでは国がドングリの森(デエサ)
の所在地や面積を把握し監視しています。

次に、「日本でブームになると根こそぎ商品がなくなりますよね。
売れる物に名を代え、品を代え偽造だってありましたよね。
そうなってしまう可能性はないのだろうか?
日本で消費しないといけないことなのかしら?」というご指摘に関して。


確かに、イベリコ豚が日本へ紹介され、日本でブームが起こった頃、スペイン
国内で生産量を増やしやすいカテゴリーの低い、飼料を与えて放牧飼育する
イベリコ豚の生産量を増やして製品がだぶついたり、カテゴリーの低いイベリコ
豚を最高級のイベリコ豚と偽って販売する業者が現われだしたりした時期がありました。
そのため、スペイン政府は、法律でイベリコ豚の血統や飼育方法、カテゴリーの
名称などを規定するようになりました。
この規制について興味のある方は、「イベリコ・フェルミンの広場」のブログで、
「法律で規定されているイベリコ豚」の記事をご書きましたので、覧ください。

先程も書きましたが、この数年の不況により、質の低いイベリコ豚の生産量は
激減したため、イベリコ豚の生産量は減ったものの、質の高いイベリコ豚は
少し減ったくらいで生産量をほぼ維持しているので、今回の不況はイベリコ豚の
業界の適正化にはある意味良い効果があったのかもしれません。
でもこれ以上消費量が減少するのを防がないと、今度はイベリコ豚の業態全体が
ダメージを受ける可能性があるため、イベリコ豚業界全体でスペイン国内だけで
なく輸出も含めて消費を促す努力をしている最中なのです。

「需要と供給のバランスがおかしなことになっていて、hiromiさんが
立ち上がったのでしょうか?もしくは、ビジネスとして割り切られているの
でしょうか?」というご質問に関して。


私は、イベリコ豚だけでなくスペインの食材全般を日本へ紹介し輸出する仕事に
携わっていますが、これは単にビジネスとして利益を追求するだけではなく、
食文化そしてそのベースとなる伝統を日本へ紹介することが大切だと思っています。
特にイベリコ豚は、「地中海料理とイベリコ豚」という記事で書いたように、
スペイン食文化だけでなく地中海食文化の中心的食材の一つと考えられますし、
スペイン独自の製品で、他では手に入れることの出来ない希少価値の高いものです。
美味しいだけでなく、健康にもよい上に環境負荷も少ない素晴らしい製品です
から、私はできるだけ多くの方に、知ってもらいたい、試してもらいたい、
好きになってもらいたい、ただそれだけなんです。

肉食が減っていく傾向にありますが、昔ながらの滋養の薬としての役割の質の
高いお肉はこれからも必要なのではないでしょうか。
イベリコ豚は、古代から続いている方法で、広大なドングリの森(デエサ)に
放牧飼育され、太陽をいっぱい浴びて、好きなだけ運動し、食べたいもの(草や
ドングリやその他の木の実、木の根など)を食べたいだけ食べて、ほとんど
野生に近い状態で育ちますから、イベリコ豚のお肉は地球の恵みそのものと
いっても過言ではないのではないでしょうか。
他の高級ブランド豚肉や牛肉ではなく、地球の恵みそのもののイベリコ豚だから
こそ私は未来に残したいと考えています。


「ただ消費すれば森を守れるということにワタシはどうしても疑問なのです。」
ということに関して。


前にも書きましたように、古代の先住民の時代から、イベリコ豚はドングリの森
と切っても切れない関係があります。
イベリコ豚あってのドングリの森であり、ドングリの森あってのイベリコ豚なのです。
どちらが欠けても維持できません。
ですから、イベリコ豚を食べることが、次のイベリコ豚を育てることにつながり、
イベリコ豚が放牧されるドングリの森(デエサ)を活性させ、維持し、守って
いくことにつながるのです。

イベリア半島の先住民、ケルト・イベロ族の話は、【私の仕事と今後の流れ】
書いていますので、良かったらご覧ください。

できるだけ分かりやすいように書いたつもりですが、もしも読んでみたけれど、
どうも理解できない、分からない、という点があれば、気軽にコメントを書いて
ください。

イベリコ豚と健康・環境について、もっと詳しく知りたい方は、
「イベリコ・フェルミンの広場」のブログへどうぞ。


06/09/2010
晴れ。
今朝の朝日は雲に隠れて見えなかったけれど、お日さまの光のすじが
後光のように広がって、とてもきれいな朝でした。



<組む(96)の日>

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参考リンク。 (ひろみ)
2010-09-23 01:41:06
◆自然と調和したライフスタイルを考える
「パーマカルチャー」
http://www.ultraman.gr.jp/perma/debit.htm
タスマニアでは竹林に豚を放牧してるんだそうです。

◆日本での スペイン風のハムを造る為の豚について。
http://www.rocinantei.com/cerdo.caridad.1.html
埼玉のレストランの方が詳しく書いていらっしゃいます。

◆なぜ豚は疎んじられるのでしょうか?
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/138992.html
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