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支流からの眺め

共産主義(6):共産主義に学ぶ

 共産主義をあれこれと批判してきたが、学ぶべきことも多い。まずは、①共産主義が問題とした貧困と格差である。これは永遠の社会の不安定要因である。次は、②共産主義運動に取り込まれる契機や過程である。危険な組織への対応策の参考となる。そして、③共産主義の思想やスパイ工作である。戦わずして相手を篭絡する恐ろしい信念の力である。最後に、④理性や理屈で考える社会改革の危険性である。抜本的にみえる改革ほど、経験と智慧の不足から逆の事態さえ招かねない。

 ①の貧困と格差の問題には、労働法制の強化や社会保障の充実が図られている。しかし、ソ連崩壊により共産主義の失敗が確定的となってからは、グローバル化と新自由主義がわが物顔となった。端的には、貧富の差が拡大し、労働なく(資産運用だけで)贅沢に暮らす金持ちがいる一方、体を壊してまで働かされる貧しき労働者がいる。これは、公正の問題ではなく倫理の問題である。また、共産主義への期待を高める点でも危険である。税制を主とする社会制度の適正化や社会倫理の醸成が必要である。

 ②の契機では、真面目な人、若い人ほど注意が必要である。勧誘する側は、小さな利益や軽い誉め言葉から入り、現状の批判や理想を語りながら関係を深めてくる。一緒に何かを行えば達成感や仲間意識を得て、承認欲求も満たされる。しかし、その組織が「冷酷に異論を許さない、反社会的な行動も正当化する」となれば危険信号である。周囲から切り離されると脱会も困難となる。このような入会の過程は、思想団体に限らず、宗教団体、ブラックな会社、反社集団にも共通するだろう。

 ③のスパイ(工作員)の仕事には、諜報(盗聴など)、謀略(相手を誘導)、防諜(敵スパイの摘発)、宣伝(主張の反復)、遊撃(ゲリラ戦)などがある。この中で最も強力なのは謀略である。宣伝も謀略の一手段であり、反基地デモ等もそうだろう。謀略を支えるのは、スパイの手練手管よりスパイ自身が持つ確固たる思想・信念であり、これこそが気づかれずに徐々に社会の流れを変えていく。情緒的な日本人であればこそ、この工作(思想戦、認知戦)への警戒と対策を講じるべきではないか。

 ④の理性の欠陥とは、共産主義を実装したら人間の邪悪さが予想外の恐ろしい事態を招いたことを指す。この教訓は、「人間の世界は予想困難で、理屈だけでは智慧が足りない」ということである。通常の社会問題に対しても、一見正しそうな新規の政策が受ける。しかし、現実の姿には、そうなった経緯と(不完全ながらも)実証済みの実績がある。それらを無視した「抜本的」改革より、現状修正の方が安全・確実で効率的なことが多い。先人の智慧と経験を大切にし、思い付きに飛びつかないことである。(続く)

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