【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

【個人事業者の税務調査】領収書さえあれば!(使い道の説明を求められる)

2019-05-02 12:00:00 | 税務調査
「領収書があれば必要経費になる」と思っている納税者は多いです。しかし、そんなに甘くはありません。税務署は「領収書の有無」だけから必要経費になるかを判断するのではなく、「領収書+納税者の説明」の結果として必要経費になるかを判断するのです。

◆何を買ったのか?

領収書やレシートと呼ばれるものの中には、具体的に何を買ったかが明らかにされていないものがあります。そのような場合には、請求書や納品書などで何を買ったかを説明できるようにしておかなければなりません。

◆何に使ったのか?

「いつ」「どこで」「何を」「いくらで」買ったかが明らかになっただけでは必要経費にはなりません。「何に使ったか」、つまり「事業に必要か」が明らかにされなければなりません。たとえ領収書があっても、事業とは無関係の支出であればそれは必要経費にはならないのです。

◆誰と飲食をしたのか?

「飲食代を必要経費にして税金を減らす」のは「自営業者の特権」と考えている人がいますがとんでもない誤解です。

飲食代については、「(事業に関連する)誰と」「どのような目的で」飲食したかを説明できなければなりません。なお、事業と関連する人物との飲食であっても、飲食の目的が事業とは無関連であれば必要経費とはなりません。

◆事業主およびその家族の飲食代

「事業主の昼食代」「家族での外食代」は少しであれば必要経費になるという「都市伝説」がありますが、これもとんでもない誤解です。

◆説明できなければアウトです

税務調査では「黙秘権」というものはありません。説明するのが義務です。説明できなくなった(支出の目的を明かせない)時点でアウトです。

====次のような説明は無意味です====

★よそもやっているではないか?

このようなことをいっても何の意味もありません。また、政治や行政の不祥事を持ち出しても同じです。ただし、その「よそ」が具体的に「どこで」「どのようなことをしているか」が明らかである場合は、それを告げれば、そこに対して税務調査が行われる可能性があります。

★税理士に任せてある!

当然ですか、税理士は依頼者を信じます。ですから、依頼者から渡された領収書は「すべて事業に必要」と判断し必要経費に含めて処理します。ただし、「平均的税理士」であれば、あまりにも不自然・不可解な領収書を発見した場合、「これは税務調査で厳しい追及を受けるので・・・」と提言をします。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

ビジネス図解 個人事業主のための節税のしくみ (DOBOOKS)
高橋 智則
同文舘出版


【個人事業者の税務調査】売上(収入)のチェック(集計漏れを発見する手段)

2019-05-01 15:00:00 | 税務調査
「令和」になって最初の投稿です。

令和という時代にも必ず激変があります。予期せぬ変化ほど恐ろしいものはありません。消費税率が10%に引き上げられることよりも、引き上げられた結果として何が変化するかが恐ろしいのです。

========================

税務調査では売上(収入)が徹底的にチェックされます。「売上を抜く」というのが過少申告の常套手段だからです。

確定申告書に記載する売上は、青色申告であれば「年間合計額」と「月別金額」、白色申告であれば「年間合計額」と「売上先別の明細」といった具合の「集計結果」です。税務調査ではこれらの集計方法についての説明を求められ、集計結果が正しいかを徹底的に調べられます。

◆集計結果の検証(集計要素の集計過程を再現する)

集計結果の基となる集計要素は様々ですが、主なものは次のとおりです。税務署は集計過程を再現することによって、これらの集計要素が集計結果から漏れていないかを確認します。

請求書控(請求記録)
預金通帳(入金記録)
領収書控(入金記録)

これらの複数に同一の集計要素が記録されている場合には、「どれから集計したのか?」「どれが正しいのか?」を調べられます。

納税者は税務署による調査過程の検証作業を受動的に眺めているのではなく、集計過程の記録(帳簿など)を提示し、集計方法について説明しなければなりません。

集計が不正確であれば、この段階で集計漏れが次々と発見されます。たとえば、請求書のみから集計をしているけれども、「請求書を発行していない」「請求書を紛失している」場合、預金通帳と領収書控を請求書控と照合すれば、集計漏れとなっているものが一目瞭然です。

◆集計要素が残っていない場合

上記の請求書控(請求記録)、預金通帳(入金記録)、領収書控(入金記録)などの集計要素だけでは不十分な場合には、税務署は「調査対象を広げて」次のような手段で集計から漏れているものがないかを探します。

〇家族名義の預金通帳
事業者本人名義の預金ではなく家族名義の預金に売上代金を預け入れているということがあります。

〇仕入との関係
ある商品を仕入れた記録はあるのに、販売した記録が残っていたいというのはおかしいです。

〇反面調査(得意先を調べる)
事業者の手元に証拠が残っていなくても得意先には証拠が残っています。

〇税務署独自の情報網
税務署は独自の情報を張り巡らし、そこから入手した情報からして申告漏れがないかを調べます。

税務署はありとあらゆる手段で集計要素を探し出し、それが集計に含まれているかを検討するのです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

これならできる 個人事業の経理と税金 第2版
大沢 育郎
ナツメ社


【個人事業者の税務調査】どれだけ取られるのか(調査の結果を予測する)

2019-04-19 18:00:00 | 税務調査
税務署から税務調査を行うという電話連絡を受けた次の瞬間から、納税者は「どれだけ取られるのか(追加で納税するのか)」を心配します。

A本来納税すべき税額
B確定申告をして納税している税額

税務調査の結果として納税するのはこの差額(A-B)です。この税額は年度ごとに計算します。例えば、「平成28年」「平成29年」「平成30年」の3年間が調査対象とされたならば、年度ごとに事業所得と税額を計算し直せば追加で納税する税額がわかります。

調査の結果を「予測」したいのであれば、自らの申告のどこに間違いがあるのかを正確に認識しなければなりません。それには「収入がどれだけ漏れていて」、「必要経費がどれだけ過大であるか」を詳細に検討しなければならないのです。

しかし、こんなことはそう簡単にはできません。事業所得(収入-必要経費)の計算要素は膨大ですので、再度の計算は大変な労力が必要です。さらに、資料が不十分で記憶も曖昧であればそれに輪を掛けます。

税務調査の対象に選定された場合には、あれこれと結果を気にするのではなく、まずは必要資料を十分に揃え、調査当日の調査官の質問に対して真摯に答えるということです。

★必ず追加で納税させられる

そんなことはありません。しかし、一般的には申告数値や税務署が独自に入手した情報からして過少申告の疑いがある事業者に対して重点的に調査が行われることから、多くの場合追加納税という結果になっています。

★税務調査の前から明らかな間違いが判明している場合(無知、ミス)

自宅兼事務所の家賃や水道光熱費を全額必要経費にしている
年度末に在庫があるのに計上していない
減価償却すべき資産を購入年度に一括して必要経費としている

このようなケースは必ず指摘されますので覚悟しておくことです。また、税理士に頼んでもどうにもなりません。

★意図的に多額な売上除外や必要経費の過大計上をしている場合

税務署が税務調査に先立ってこのような事実を把握しているから税務調査の対象に選定したと考えて間違いありません。もう逃げることはできません。納税資金の用意をしておくことです。

なお、税理士は、このようなケースを当初の申告は当然として、税務調査の立会のみも引き受けないでしょう。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

経費で落ちる領収書大全
石渡 晃子
ナツメ社


【個人事業者の税務調査】領収書がない(ハプニングの連続)

2019-04-16 17:00:00 | 税務調査
税務調査にはハプニングがつきものです。調査が進むにつれて、申告作業をしている段階では気がつかなかった不備や問題点が次々と明らかになってきます。

◆資料を紛失していた(領収書がない!)

よく紛失してしまうのが経費関係の領収書です。特に申告から年数が経っている場合は、その間の大掃除や引っ越しでどこかに紛れてしまっていることがあります。わずか数枚の領収書を紛失している場合には再発行も可能ですが、特定の月や年度の分を丸ごと紛失している場合には気が動転してしまいます。

このように領収書を紛失した場合でも、帳簿から支出額や相手先は明らかになりますので、とりあえずはそれを提示して、支出の事実を証明するもの(本来は領収書)については調査官の指示に従うしかありません。

◆データがパソコンの中にしかない

税務調査に必要な資料がパソコンの中にある場合には、税務調査の前日までに印刷しておきます。そうしておかなければ、税務調査の当日に調査官がパソコンを操作してのデータを見ます。パソコンには税務調査とは無関係のデータも多数あるでしょうから、調査官にパソコンの中を見られるというのは大変苦痛です。

◆計算過程を残していなかった

事業所得(収入-必要経費)の計算要素の中には、領収書や請求書などの基資料の数値をそのまま用いればよいものもあれば、基資料の数値から計算しなければならないものもあります。計算が必要となるものについては税務調査で計算過程を示して説明を求められることがありますが、計算過程を残していなかったという場合もあります。そんな場合は、計算過程を再現するしかありません。

◆計算間違いをしていた

計算間違いをしていた場合には潔くあきらめなければなりません。

◆解釈を間違っていた

収入には「収入とすべき金額」「収入とすべき時期(年度)」、必要経費は「経費になるか」「経費になる金額」「経費になる時期(年度)」について解釈を要するものがあり、その解釈を誤ってしまう場合があります。ただし、解釈が複数考えられる場合には調査官と主張が対立することもあります。その場合は、直ちに反論や妥協はせずに後日話し合うことです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「明日もお伺いさせていただきます」
「後日、署までお越しください」

税務調査が予定の日数で終わらないことがあります。自宅や仕事場に再度調査官が来るのは大変苦痛で不快です。また、税務署という敵地に招き入れられるのは大変な恐怖です。

こんなことにならないように、確定申告の関連資料は十分整理し大切に保管しておく必要があるのです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

ズバリ回答! どんな領収書でも経費で落とす方法
大村 大次郎
宝島社


【個人事業者の税務調査】税務署からの電話(無知で無防備)

2019-04-10 15:00:00 | 税務調査
「何のことだかさっぱりわからなかった!」

税務署から税務調査を行うという電話連絡を受けた際、個人事業者(個人事業主、いわゆる自営業者)の多くがこのような反応をします。そして、税務署員に促されるまま税務調査が進み、気がつけば多額の追徴税額を告げられ呆然するのです。

◆税務調査とは

個人事業者に対する税務調査は、所得税の確定申告をした事業所得が正しく計算されているかを税務署が確かめるために行われます。調査の結果、確定申告した税額に不足がある場合には、その不足分を追加で納めなければなりません。

税務調査に関しては様々な情報が飛び交っていますが、税務調査は法的な根拠をもって行われます。税務署が拠って立つべき法律と税務調査の具体的手順については「国税庁のサイト」で詳細に説明されていますので、税務調査の通知を受けたならばこれを読むことです。

まずはこのパンフレットから読んでください。
税務手続について(近年の国税通則法等の改正も踏まえて)

◆相手は本当に税務署員か?

このような事態も想定しておかなければなりません。

○調査日時については即答しなくてもよい
電話で調査官は調査日時を告げますが、これにそのまま応じる必要はありません。日程を調整して、後日相手が告げた電話番号に返事をすればよいのです。調査官は「税務署名」「部署名」「氏名」を告げますので、これを必ず記録しておいてください。なお、部署名は「所得課税第(番号)部門」というように各税務署で統一されています。うっかり、調査日時について即答してしまった場合にも変更は認められます。

○税務署からの電話であることを確かめる方法
国税庁のサイト(https://www.nta.go.jp/)に「税務署の所在地と代表番号」が記載されていますので、相手が告げた電話番号と一致するかを確かめます。

○身分証明書の提示
個人事業者の自宅や仕事場での税務調査の開始にあたって、調査官は身分証明書を提示します。これと電話で告げられた調査官の氏名が一致していれば、まずはその調査官が「本物」であると考えて間違いありません。

◆税理士に依頼している場合(これから依頼する場合)

確定申告を税理士に依頼している場合には、税務調査の通知はその税理士にされますので、調査日程や調査場所の調整はその税理士を通して行います。

確定申告は依頼していないけれども、税務調査の対応を税理士に任せるので税理士を探している場合にはその旨を告げます。直ぐに税理士が見つからない場合には、とりあえず「税理士なし」で税務調査が進行し、途中から税理士が加わるということになります。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

完全図解版 税務署員だけのヒミツの節税術ーあらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】
 
ビジネス社