【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

会計ソフトがしてくれる決算手続(試算表の勘定科目を決算書の様式に集計する)

2014-08-27 17:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトには決算書を作成する機能があります。この機能は、試算表の勘定科目とその金額を、決算書の勘定科目に転記・集計するという機能です。試算表は会社内部の管理資料ですので、決算書という外部報告用(株主、債権者、税務署への報告用)に組み替える必要があるのです。

試算表と決算書は内容が同じでなければなりません。勘定科目の名称や配列が違うとか、決算書では試算表の勘定科目が集約されているとかは別として、「利益」「総資産」「負債」「純資産」は同じでなければなりません。

★決算仕訳は入力しなければなりません

決算仕訳とは、決算のときだけにする仕訳のことです。「在庫」「減価償却」「未収・未払」などです。

決算仕訳も、日常の仕訳と同じようにユーザー自身で仕訳を考えて入力する必要があります。会計ソフトが自動的にはしてくれません。

★会計ソフトは節税対策をしてくれません

「もう少し飲食代を費用に計上してください」といったようなメッセージが画面に表示されるといったことはありません。ましてや、「節税モード」「銀行モード(融資が受けやすい決算書)」といった自動的処理は一切行ってはくれません。(会計ソフトには利益に課税される法人税の計算機能はありません。この機能は法人税申告書作成ソフトとして販売されています。)

★消費税の計算

多くの(ほとんどの)会計ソフトには、事業者として申告納税する消費税の計算をする機能があります。ただし、この機能もユーザーの入力の結果ですので、入力が誤っている場合には結果も間違いになってしまいます。

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決算処理(決算仕訳)は専門的で、その処理次第で結果が大きく異なってきます。思いもよらない税額になる、金融機関の評価が大きく違ってくるという結果になってしまいます。この部分の自動処理を会計ソフトの機能として期待するのはもっともなことかもしれませんが、会計ソフトはそこまで賢く(?)はありません。

会計ソフトを従業員のタイプに例えると?

2014-08-25 17:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトについての誤った認識をしたまま会計ソフトを導入し、トラブルを起こす人が後を絶ちません。このブログでも会計ソフトで「何ができるか」「何ができないか」をしつこいほど取り上げています。また、ネット上でも多数の情報があります。しかし、都合のよい情報だけを信じてしまうようです。会計ソフトメーカーの偏った説明を信じてしまうようです。

今回は、わかりやすくするために、会計ソフトを従業員のタイプに例えて説明してみます。性格を把握していないと恐ろしいことになる従業員がいると思います。会計ソフトも同じです。

■命令した仕事しかしない(命令しなければ何もしない)

会計ソフトは「仕訳」という命令を与えないと何もしません。ユーザー自らが「仕訳を入力」しないと、仕訳を総勘定元帳に転記し、試算表に集計はしてくれません。

■命令に対して忠実に仕事をする

会計ソフトは入力された仕訳を命令どおりに処理します。例え、命令が間違っていても命令に背くことはありません。

■命令した仕事は完璧にこなす

会計ソフトは命令を間違って処理することはありません。コンピュータープログラムというものはそうでなければなりません。特に、会計ソフトのような定型的処理の場合にはこの点は完璧です。

■説教をしても「馬の耳に念仏」(向上心がない)

当り前です(笑)。

会計ソフトメーカーのサポートに問い合わせても、「仕訳の誤り・漏れ・重複」は「ユーザーの自己責任です!」の一点張りです。

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★会計の恐ろしさは経験してみないとわからない

多くの会計ソフトユーザーがネガティブな情報を真摯に受け止めないのは、会計の恐ろしさを知らないからだと思います。だから、「そうはいうけれども、どうせ大丈夫だろう」と考えるのです。

人生、経験してみないとわからないことはたくさんあります。
経験してからでは手遅れなこともあります。
経験しても何の役にも立たない(無駄でしかない)こともあります(笑)。

会計ソフトに必要な初歩の会計知識(実務は手加減をしてくれない)

2014-07-29 17:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトを使えるようになるための初歩的な会計の知識についての質問をよく受けます。

■遭遇するあらゆる取引の仕訳ができなければならない

会計ソフトを導入するということは、誰のアドバイスもなしに遭遇するあらゆる取引(資金の変動)を仕訳しなければなりません。会計(簿記)の世界の難易度は、この仕訳の対象となる取引によって決まってきます。取引が複雑、取引の会計的解釈が難しい場合には高度な会計知識(会計的判断能力)が要求されます。このあたりが会計(経理)業務の難しい所です。「初心者なので難しい取引はパス!」という訳にはいかないのです。試験のように受験者の能力レベルに応じた仕訳ばかりという訳にはいきません。

■決算書が出来るまでの一連の流れに対する理解

入力した仕訳が試算表や決算書にどのように反映されるのか、つまり、利益や資産・負債に与える影響を理解していなければ、決算と税務申告の際に「こんなに税金は払えない!」と大慌てすることになります。会計のゴールは決算書です。会計ソフトは仕訳を入力すれば自動的に決算書を作成してくれますが、税務署や金融機関には自身で決算書の説明をしなければなりません。

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★経理担当者や公認会計士・税理士はどうやって会計(簿記)をマスターしたのか?

まずは、国家試験や簿記検定など、一定の試験勉強(講義を受ける、本を読むなど)をしています。次に、実務経験です。実務経験とは、完成した経理体制の中で「仕訳」「試算表・決算書の作成」など一通りの業務を経験するということです。この実務経験で勘が養われ要点がわかるようになるのです。教科書で説明されていない取引にも対処できるようになります。

「実務を経験して初めて(学校などで)勉強したことの意味が理解できた!」「実務に磨きをかけるため、もう一度勉強してみよう!」「自分は体系的に勉強をしていないから(実務で)苦労するんだ・・・」、実社会を経験した人なら誰もが感じることです。

★最低1年間は専門家(公認会計士や税理士)の指導を受ける

会計の知識も経験もない人が自己流で会計ソフトを使って決算・申告をするのは不可能です。仕訳の間違いや抜けが必ず出てしまいます。

「会計ソフトメーカーが簡単だ(会計知識なしでも使える)といった!」

それは、「入力した仕訳に基づき自動的に決算書を作成します」「入力方法は簡単です」という意味です。会計ソフトには「仕訳の正誤を判断する、抜け・重複をチェックする機能」は有りません。仕訳の正誤を判断する、抜けや重複をチェックするノウハウは業種や業態によって大きく異なります。これを初心者が自ら習得するのは不可能です。

弥生会計の価格は常に変動している

2014-07-27 11:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)



最近、アマゾンをはじめとしたネットショップで弥生会計の販売価格が「常に変動」していることに気が付きました。1週間で相当変動します。下方にのみに変動するのでしたら理解できますが、上方へも動きます。「14スタンダード」の場合、この一月ほどで3万円割れから約3万4千円(税込み)の幅で変動しています。

また、スタンダードに「見積納品請求書」をプラスした「バリューパック」の価格がスタンダードよりも安いという現象も確認できました。

本当に不可解です!

クラウド会計ソフトの適正価格は?

2014-06-20 17:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
クラウド会計ソフトが次々と各業者から提供され始めています。クラウドのメリットや利便性はさておいて、ユーザーが最も気にするのは「価格」です。

クラウド会計ソフトの火付け役(?)である「freee(フリー)」の月額利用料は1,980円です(法人プラン、税込)。年額で23,760円です。

高い・で・す!

高すぎ・ま・す!

これでは話になりません。

この価格設定はライバル(?)である弥生会計を意識してのものだと思います。弥生会計14スタンダード(会社用)の価格は約3万3千円です。これとは別に年間サポート料金が最低でも28,080円(税込)必要です。

これだけを考えるとfreeeが優位に思えます。しかし、そうではないのです。というのは、弥生会計は年間サポート契約をしなくても使え、購入したソフトも「対応するOSが消滅する」あるいは「税制や会社制度が変わる」までバージョンアップ(有料、1回約3万円)も不要だからです。バージョンアップの頻度は一概にはいえませんが、この10年間でいえば「2回もすれば十分!」でした。

そう考えると、計算するまでもなく弥生会計のほうが圧倒的に優位です。(ただし、この優位性に弥生は喜べません。狙いである年間サポート料金が発生しないからです。)

★会計ソフトの本質は「簿記専用の電卓」

このことを忘れてはなりません。会計ソフトは、与えられた「仕訳」を集計する道具にすぎません。会計ソフトは誤った仕訳もそのまま集計します。仕訳が抜けていてもエラーメッセージは表示されません。会計ソフトは簿記会計や税務の知識を補ってはくれないのです。

会計ソフトメーカーは各種のサポートや情報提供の充実に躍起になっていますが、とてもユーザーを十分満足させるものではありません。なぜならば、ユーザーの満足を図る重要な尺度のひとつである「安心できる税務申告=税務調査で問題点を指摘されない(会計ソフトメーカーが親身になってユーザーを守ってくれる)」を満たすことは絶対にできないからです。

★クラウド会計ソフトの今後

現状では弥生会計という「牙城」を崩すことはできません。

クラウドのメリット?

確かにそうかもしれませんが、クラウドのメリットは会計ソフトのデータをGoogleドライブなどの「無償オンラインストレージ」で管理するようにしておけば十分享受できます。わざわざ、メーカーにクラウドに関しての料金を支払う必要はありません。

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◆会計ソフト単独での商品化は難しい
会計ソフト単独では付加価値が非常に低いです。ですから、機器や税務会計サービスと組み合わせるのが本来の販売形態なのです。弥生会計やfreeeの苦しい所はここです。

◆中小零細企業の経理は暗黒大陸
中小零細企業の経理業務においては、弥生会計やfreeeが「想定していない事象」が頻繁に起こります。現状、この事象を解決できる業者は会計事務所(税理士)しかいません(採算が取れないので会計事務所以外は参入しません)。

◆会計ソフトは機能を簡素にして低価格化すべき
中小零細企業向けの会計ソフトはこれしか生き残る道はないと思います。電卓が電卓でしかないように、会計ソフトは会計ソフトであるべきなのです。会計ソフトは会計ソフトに徹するべきなのです。会計ソフトは住所録作成ソフト(宛名印刷ソフト)のようにならなければならないのです。