【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

給料に関する仕訳(間違いやすい例)

2020-11-30 17:31:00 | 経理業務(帳簿の作成)
複式簿記の知識が十分でないまま会計ソフトを使っている人は、給料に関する仕訳を間違っていることが多いです。「仕訳ひとつ間違ったくらい(笑)」と思うかもしれませんが、給料の仕訳は毎月生じますので、この間違いが累積すると、仕訳の結果としての決算書も大きく間違うことになります。

◆給料を手取額で計上している(連鎖的な間違いが起こる)

一番多い間違いがこれです。給料の手取額、総額から税金や保険料を差し引いた金額を「給料(費用)」で仕訳してしまうという間違いです。この仕訳をしてしまうと、次のとおり「給料関連取引」の仕訳も連鎖的に間違ってしまうことになります。

〇預り金勘定の残高がマイナスになる

税金(源泉所得税あるいは住民税)を納付する際には「教科書どおり」次の仕訳をしたとします。

≪借方≫預り金≪貸方≫現金など

給料を支払った際に預り金が生じた(増えた)処理をしていないのに、減少の処理だけをすると預り金勘定はマイナスになってしまいます。この処理を毎月続けていると、預り金勘定のマイナスは増える一方です。

〇税金の納付額を租税公課(費用)で処理している

「預り金」という勘定科目を知らない人がしてしまうのが、源泉所得税あるいは住民税の納付額を「租税公課」という費用で処理してしまうという間違いです。給料から徴収(天引き)する税金は、従業員などから預かった税金ですので、雇用者(会社や個人事業者)に負担は生じないので費用にはなりません。

〇健康・厚生年金保険料が全額会社負担になっている

給料から徴収した健康・厚生年金保険料の従業員負担額を預り金として処理していない場合は、保険料納付額全額について次の仕訳をしてしまうことになります。

≪借方≫法定福利費≪貸方≫普通預金など

この仕訳では、健康・厚生年金保険料は「労使折半」であるのに、決算書においては全額が会社負担という計算がされてしまいます。

◆預り金を減少させる仕訳を間違う(給料を支払ったときの仕訳は正しい)

給料を支払ったときの仕訳は正しくても、以後の「関連取引」の仕訳を間違うことがあります。

〇預り金の減少の処理をしていない

給料に関する預り金は、増加(徴収)があれば減少(納付)があります。しかし、この減少の処理をしていないことがあります。そのパターンとしては、「処理を忘れている」「勘定科目を間違っている」が考えられます。

給料を支払う際の健康・厚生年金保険料の処理は正しくできていても、保険料を納付する際に預り金を減少させる処理を忘れていることがあります。給料から徴収した源泉所得税や住民税を納付する際に租税公課で処理してしまうことがあります。

〇預り金の減少額を間違っている

健康・厚生年金保険料を納付したときの仕訳で、従業員負担額の処理を間違うことがあります。給料から徴収した額と異なる金額で預り金を減少させてしまうという間違いです。例えば、給料からの徴収は10万円であるのに誤って9万円と処理してしまうのです。

この仕訳をしてしまうと、預り金の残高が残ったままになるだけでなく、健康・厚生年金保険料の会社負担額である法定福利費の計算も間違うことになります。

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★預り金勘定の動きと残高はこまめにチェックする
給料に関して預り金勘定で処理される取引は、増加と同額の減少をしますので、この動きをこまめにチェックしておけば間違いが累積することがありません。

★預り金勘定は補助科目に分割する
給料からの控除(徴収、天引き)項目に対応させて、預り金勘定の補助科目を設定しておけば、増減や残高の管理はしやすいです。

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給料に関する仕訳(極めて簿記的!)

2020-11-30 17:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
会計ソフトを使い始めた当初、多くの人が戸惑うことのひとつが給料に関する仕訳です。交通機関の運賃(交通費)、携帯電話料金(通信費)、取引先との飲食代金(交際費)のように、出金額がそのまま勘定科目に直結しません。そこには、簿記独特の考え方と給与関連の事務手続に対する理解が必要とされます。

◆給料の支払いを簿記の要素に当てはめる

簿記においては取引を次の要素に分類して仕訳をします。

「資産」「負債」「資本(純資産)」「収益」「費用」

あらゆる取引はこれらの内のどれかに当てはめなければなりません(当てはまります)。

100万円の給料から源泉所得税2万円、住民税2万円、健康・厚生年金保険料5万円、雇用保険料1万円の合計10万円を差し引いた(徴収した、天引きした)90万円を普通預金から支払ったとします。

普通預金の出金額90万円が「資産の減少」であることは容易に理解できます。

「給料という費用」がいくらになるかを悩む人がいます。正解は100万円です。源泉所得税など10万円は「預り金という負債」なのです。源泉所得税などは給料を支払う雇用者(会社や個人事業者)が、給料を受け取る従業員などから「預かって」、後に税務署などに支払う「負債」なのです。

仕訳は次のとおりです。

≪借方≫給料(費用)100≪貸方≫普通預金(資産)90、預り金(負債)10

◆給与台帳(仕訳の基資料)

仕訳をするためには基資料が必要ですが、給料の仕訳に関しては給与台帳が必要です。給与台帳とは、給料を受け取る者ごとに作成する、毎月の給料や臨時の賞与の総額と控除(徴収、天引き)項目(源泉所得税など)を記録した書類です。

給料の支払いを全員分一括して振り込んでいる場合には、仕訳も全員分を一括してしますので、給与台帳も全員分合計したものを作成しておくと便利です。給与計算ソフトを利用している場合には全員分合計も作成されます。

◆預り金には「続きの仕訳」がある

給料の仕訳の「預り金」には「続き」があります。

〇源泉所得税と住民税

源泉所得税と住民税はそのままの金額を納付しなければなりません。税金を納付すれば、給料を支払った際に仕訳した預り金が消えます。

仕訳は次のとおりです(現金で払ったとします)。数値は上記の例のとおりです。

≪借方≫預り金4(2+2)≪貸方≫現金4

〇健康・厚生年金保険料と雇用保険料

健康・厚生年金保険料と雇用保険料はそれぞれの納付額から、従業員などの負担額である預り金を減額して雇用者負担額(費用)を計算しなければなりません。

数値は上記の例のとおりで、健康・厚生年金保険料10万円を納付する際に次の仕訳をします(普通預金から納付したとします)。

≪借方≫法定福利費10≪貸方≫普通預金10
≪借方≫預り金5≪貸方≫法定福利費5

雇用者負担額(費用)は、納付額10万円-給料から徴収した(預り金)5万円=5万円になります。

通常は2つの仕訳を一括して次のように仕訳します。

≪借方≫法定福利費5、預り金5≪貸方≫普通預金10

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★ボーナスの勘定科目
給料ではなく「賞与」などの勘定科目で処理することが一般的です。

★役員、従業員、パート・アルバイトの勘定科目
支給総額について、役員のみ「役員報酬」という勘定科目で処理することが一般的です。パート・アルバイトについては「雑給」で処理することがあります。

★通勤手当は旅費交通費勘定で処理
通勤手当は労働の対価である給料とは性格が異なるので、「旅費交通費」で処理することが一般的です。

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≪ご注意≫文中の仕訳は便宜上「万円単位」でしておりますが、実際には円単位でしなければなりません。

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会計ソフトを使いこなす(決算数値を予測する)

2020-09-09 11:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
★会計ソフトは未来の予測をしてはくれない

会計ソフトを導入する人の目的のひとつが、決算数値を予測して決算対策や節税対策をするということだと思います。しかし、残念ながら会計ソフトは「過去の数値」を計算するだけで、「未来を予測」するという機能は備わっていません。

未来を予測するには、会計ソフトの数値に自ら今後の予測を加えればなりません。

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◆スタートは直近月の試算表

決算数値を予測する場合のスタートは直近月の試算表です。試算表は損益計算書と貸借対照表に分かれます。予測の中心は、やはり損益(利益計算)ですので損益計算書が重要となります。しかし、貸借対照表も利益計算に影響することがありますので(在庫や減価償却など)おろそかにはできません。

◆勘定科目を手掛かりに今後生じる取引を予測する

今後の取引を予測するにあたっては、試算表の勘定科目を手掛かりにすると作業がしやすいです。各勘定科目の発生と変動の要素を把握して、今後の予測数値を計算し、現状の各勘定科目の残高に加減算をします。この作業はエクセルなどの表計算ソフトで行えば効率的です。

◆予測数値に基づく検討

予測数値が算出されたならば、その予測数値に基づく金融機関の評価や税額を検討しなければなりません。そして、それが会社経営に与える影響を吟味します。「現状では金融機関からの資金調達は困難だ」、「相当な納税が必要なので納税資金の確保を」といった具合です。

◆計画の実行と修正

予測数値が納得できるものであるならば、それを達成するための計画を実行します。納得できない場合は計画そのものを修正して、予測数値そのものを変化させなければなりません。

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★会計知識の不足による予測誤り
会計の知識が不足していたために予測を誤ることがあります。特に多いのが、損益と収支の違いを認識していなかったということです。たとえば、設備投資や借入金返済という支出と、それについての費用としての会計処理を正しく認識していなかったなどがその典型です。

★予測を見誤った(何度も見直す)
未来の予測ですので見誤るというリスクは避けることができません。このリスクを減らすためにはできるだけ数多く予測を見直すことです。見直す度に、新たな変動パターンや変動要素を発見して予測の精度が高まっていきます。

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会計ソフトを使いこなす(漏れなく正確に処理)

2020-09-02 10:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
会計ソフトを導入したけれども今ひとつ処理結果に納得ができないという人が多いです。会計ソフトの処理結果は取引の集計ですので、正しい処理結果を得るには取引の処理が正確でなければなりません。しかし、この点に自信が持てないユーザーが多いのが実情です。

◆取引を漏れなく処理する

会計ソフトの最終目的は決算書の作成です。決算書は1事業年度のすべての取引を集計して作成しなければなりませんので、正確な決算書を作成するには「すべての取引」を「認識」し、それを「漏れなく処理する」という「体制」を確立しなければなりません。

取引を認識できるようになるには、取引がなんであるかを学習するしかありません。これについては面倒でも簿記の教科書を読むことです。簿記の専門用語の「取引」は、一般の取引とは異なります。とにかく慣れるしかありません。

◆取引を正確に処理する

取引を認識しても、その取引を「正確に処理」していなければ意味はありません。正確にとは、簿記の処理方法に照らして正確であるということです。社員の給料は支払った手取額だけを処理しても正確な結果は得られません。クレジットカードの決済は決済合計額だけでなく、決済された個々の取引に応じて処理をしなければなりません。

取引を正確に処理するには相応の知識が必要です。そのためには簿記の仕組みを習得しているだけでは不十分で、取引の対象となる事象そのものや会計理論や税に関する知識も必要となってきます。これについても学習や調査が必要です。

◆処理結果を確認する(試算表)

取引の処理結果を確認するには、個々の処理画面を見直すのではなく、「概観」することから始めるのが効率的です。

まずは試算表です。試算表とは月次の貸借対照表と損益計算書のことです。貸借対照表と損益計算書の個々の勘定科目が、「あるべき金額」つまり取引の状況からして「これくらいの金額でなければならない」という数値とかけ離れていないかを確認します。

預金は預金通帳の残高と一致していなければなりません。売掛金は貸借対照表の日付時点で未回収となっている売上代金です。買掛金は未払の仕入代金です。損益計算書は比較的概観しやすいと思いますが、処理漏れや勘定科目の誤りが案外多いものです。特に現金払いについては処理漏れが生じやすいです。

◆処理の追加と訂正(総勘定元帳)

試算表で概観した結果、金額がおかしい勘定科目を発見したならば、次はその勘定科目の総勘定元帳(勘定科目別の個々の取引)を調べます。そして、処理が漏れている場合には「追加」を、間違っている場合には「訂正」をします。

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★簿記の書物を読む

会計ソフトを使いこなすには簿記の知識が必要です。簿記の知識を習得するには書物を読まなければなりません。書物では下記の部分が必ず説明されていますので、理解できるまで熟読してください。

〇取引の意味
〇取引の分類(いわゆる仕訳と勘定科目)
〇分類された取引の集計(試算表と決算書が作成される仕組み)

これが理解できていなくても、会計ソフトで「個々の取引」を処理することはできます。しかし、取引を漏れなく正確に処理して正しい試算表や決算書を作成するには、簿記の仕組みの理解と会計理論や税法の知識が必要となります。それには簿記の書物からスタートして関連・周辺知識を習得しなければならないのです。

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会計ソフトと預金通帳(引出)

2020-08-20 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
預金通帳の引出(出金)欄には仕訳(会計ソフトへの入力)に必要な情報が多数表示されます。昨今ではほとんどの支払を預金口座で済ませますので、預金口座の引出(出金)欄の個々の行を処理すれば支払に関する処理のほとんどが済むことになります。

◆振込

ATMやネットバンクで振込みをすれば預金通帳にその金額と相手先名が表示されます。会計ソフトではその相手先と取引内容に応じた処理をします。仕入(買掛金)、給料、家賃といった具合です。いわゆる総合振込の場合には、複数の振込先への振込合計額が一括して表示されますので総合振込の明細から処理をします。振込みをすれば振込手数料が生じますので、これについても処理が必要です。

◆口座振替

「各種公共料金」「電話料金」「保険料」「リース料」などは口座振替により支払うことがあります。この場合、預金通帳に金額と相手先名や取引内容が表示されますので、それに応じた処理をします。

◆クレジットカードの決済

クレジットカード利用代金の決済が行われたならば、預金通帳にはクレジット会社の社名などが表示されます。表示される金額は、その月の決済合計額ですのでこれを複数の勘定科目に分けて処理しなければなりません。

◆借入金の返済

事業用借入金の返済は約定に基づき毎月行うことが通常です。預金通帳にはその約定に基づく毎月の元金の返済部分と利息の合計額が表示されます(金融機関によっては元金と利息を区分して表示しています)。この元金の返済と利息の支払の処理が必要となります。

◆現金(硬貨と紙幣)としての引出

会計ソフト(簿記)では預金と現金(硬貨と紙幣)を区別して管理しますので、預金から引き出して現金(硬貨と紙幣)として手元に置いておく場合には、預金から現金へ移動したという処理が必要です。

◆他の預金口座への資金移動(事前に口座別の登録が必要)

会計ソフト(簿記)では預金を口座単位で管理しますので預金口座間で資金移動があった場合も処理が必要です。ただし、その処理をするには事前に保有している預金口座を会計ソフトに登録しておく必要があります。

預金口座の設定をせずに会計ソフトを使うこともできます。この場合には預金口座別の管理ができません。増減や残高はすべての預金口座を合算して表示されます。

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★取引内容を分解する(一行が一仕訳でない場合)

引出(出金)欄の処理をするにあたって大変なのは、個々の行の金額がそのまま仕訳(勘定科目)にならないケースがあるということです。取引内容を請求書や領収書などから分解して処理しなければなりません。

給料は通帳では手取額しか表示されませんので、総額と天引き項目(源泉所得税や社会保険料など)に分けて処理しなければなりません。大変なのはクレジットカードの決済です。決済額は様々な出費の集計ですので、個々の出費をカード使用時の記録(領収書やレシートなど)に基づいて、「飲食代」「宿泊費」「ガソリン代」といった具合に処理しなければなりません。

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