【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

照合と差異原因の解明(差異を調整して正しい金額に)

2021-05-16 11:35:00 | 経理業務(帳簿の作成)
帳簿の特定の数値とそれに関する資料や事実関係における数値を「照合」した結果、差額がある、いわゆる「差異」が生じている場合には、その原因を解明して必要な処理をしなければなりません。

差異が生じた原因は1回限りの原因であることもあれば、何回ものさらには何種類もの原因が重なっていることもあります。後者の場合には、原因の解明がそう簡単には終わらないことも珍しくはありません。

差異が生じる原因は無数にありますが、その典型は次のとおりです。差異の原因が解明されたならば、「修正」「追加」「取消し」などの処理を行わなければなりません。

◆金額の誤り

基資料の金額と異なる金額で記録をしてしまった場合には基資料との差異が生じます。

例えば、基資料である領収書の金額が7,779円(出金は預金から)であるのを、誤って7,799円で記録してしまった場合です。差額20円を過大に預金から減額していますので、預金出納帳の残高は実際の預金の合計額(預金通帳)よりも少なくなります。

この差異を調整するためには、預金を20円増やす修正の処理が必要です。

◆記録漏れ

記録が漏れている場合には記録を追加しなければなりません。

◆記録の重複

記録が重複している場合には、重複を解消すべく記録を取り消さなければなりません。

◆勘定科目の誤り

記録した金額が正しくても勘定科目を誤った場合には、勘定科目の金額と基資料に差異が生じます。

例えば、預金からの支払いを現金からの支払いとしてしまった場合には、預金は減っていないので預金出納帳の残高とその基資料である預金通帳とに差異が生じます(預金出納帳>預金通帳)。さらに、現金出納帳と現金とにも差異が生じます(現金出納帳<現金)。

この差異を調整するためには勘定科目を変更しなければなりません。

◆日付の誤り

例えば、11月中の日付ですべき預金からの引出しを、誤って12月中の日付でしてしまった場合です。この引出し記録は11月末の預金残高に反映されていないわけですから、11月末では預金出納帳の残高と預金通帳の残高は一致しません(12月末では一致します)。

◆期首残高の間違い

貸借対照表勘定科目(資産、負債、純資産)は期首残高があって、それに増加と減少が加減算されて一定時点の残高が計算されます。期首残高が正しく設定されていなければ残高は関連資料と一致しません。

なお、期首時点で(前年度末で)差異が生じている場合には、当年度の増減が正しくても残高が一致しません。

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★会計ソフトは差異を自動的に調整してくれない
残念ながらそのような機能は備わっていません。今後主流になるであろう、外部データを会計ソフトに取り込むという機能であっても、設定が適切でない場合には一部のデータが反映されず、それが差異になってしまいます。

★会計事務所(公認会計士・税理士)が何とかしれくれる?
何とかはしますが、それにも限度があります。特に差異が何重にも積み重なっている場合やかなり以前から差異が生じている場合にはどうにもなりません。また、報酬についても「決算申告のみ」ではなく、記帳代行も含んだ金額となってしまいます。

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照合と差異原因の解明(これが完璧にできれば経理はプロ級!)

2021-05-16 11:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
差異(さい)

経理業務に携わる人にとっては大変「嫌な」言葉です。憂鬱になります。

経理業務における差異とは、帳簿の特定の数値とそれに関する資料や事実関係における数値との間に差額があることです。

帳簿というのは基資料や事実関係と一致していなければなりませんので、帳簿とそれらが一致しないということは、帳簿が間違っている、つまり帳簿への記録が間違っていることです。当然、経理担当者は差異を放置しておくわけにはいかず、差異の原因を解明しなければなりません。この原因解明がそう簡単にできないこともあるのです。

◆差異を発見する手段としての「照合」

経理業務においては様々な局面で、帳簿の数値と基資料や事実関係とを照らし合わせます。これを照合(しょうごう)といいます。この照合という作業をしなければ差異は発見されません。照合は帳簿とその関連資料や事実関係との一致を確認するという大変重要な作業なのです。

照合の結果、差異が発見されたならば、差異の原因を解明してしかるべき処理をしなければ帳簿の正確性は確保されません。照合は経理業務において欠かすことができない作業なのです。

照合の一例は以下のとおりです。

◆現金出納帳(金銭出納帳)残高と手元にある現金残高との照合

現金出納帳は手元にある現金(硬貨と紙幣)の増加(入金)と減少(出金)と結果としての残高の記録ですので、特定時点の現金出納帳の残高と実際の現金の合計額は一致します。現金出納帳の正確性を確認するためには、現金出納帳の残高と実際の現金との照合作業を欠かすことができません。

現金出納帳と実際の現金が一致しないということは、現金出納帳の記帳が間違っているということです。(ただし、現金出納帳に表れることがない、現金の紛失や混入ということもあります。)

◆預金出納帳と預金通帳との照合

預金出納帳の数値は預金通帳そのものです。出入りも残高も預金通帳そのままです。ですから、個々の出入り(預入れと引出し)も残高も預金通帳と完全に一致しなければなりません。

預金通帳というのは金融機関が発行した大変信頼のできる証書資料ですので、預金出納帳をはじめとする預金に関する記録(売掛帳の入金記録、買掛帳の支払記録など)は、預金通帳との「完全一致」を確かめるべく、帳簿と預金通帳との照合は必ず行わなければなりません。

◆売掛帳と請求書控あるいは預金通帳などとの照合

売掛帳(総勘定元帳の売掛金勘定)は請求書控(請求記録)や預金通帳など(入金記録)から記録されますので、これらとの照合作業をしなければなりません。

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★会計ソフトを使っているけれども・・・

照合すべき項目と照合の方法を心得ていて、照合の結果生じた差異の原因が解明でき、しかるべき処理ができれば経理は「プロ級!」です。

会計ソフトを使っているけれども、その結果が「くちゃくちゃ!」になっている「原因のひとつ」が、この照合作業、差異原因の解明とその処理ができていないということです。照合することの意味や必要性が理解できていないのです。

照合というのはアナログで地道な作業ですが、これをこまめに続けていれば経理業務に関する理解が深まり、「総勘定元帳」「試算表」「決算書」の意味がわかるようになります。そうなれば、経理データを経営に活かせるのようになるのです。

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仕訳のつながり

2021-04-29 10:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
仕訳には複数の仕訳が前後でつながっている場合があり、その複数の仕訳を「漏れなく」、「正確な金額と勘定科目で」、さらには「仕訳をすべき日付で」処理しなければなりません。

◆売掛金(つながる仕訳の典型!)

仕訳のつながりの典型です。発生主義会計においては売上計上と売上代金の入金は別々に把握します。

売上計上時の仕訳では、売上が収益としてカウントされ損益(利益)計算に含められるとともに、売上代金である売掛金が資産として貸借対照表に加えられます。売上代金の入金時の仕訳では、売上計上時の売掛金を減少させます。

売上計上時の仕訳をしないで売上代金の入金時の仕訳をしてしまうと、売上は計上されず売掛金が減る一方になります。

◆買掛金・未収金・未払金

売掛金と同じことがいえます。買掛金・未収金・未払金は増加があってはじめて減少があるのです。

◆預り金(給料から天引きした税金や保険料)

給料からの各種控除項目は、給料を支払う際に各項目を預り金という負債に計上します。給料から控除した(預かった)金額は、後日税務署や年金事務所などに納めなければなりませんが、このときには控除した(預かった)金額を減少させます。

◆借入金

借入金については、借り入れた総額について借入金の増加という処理をした後に、返済の処理により借入金を減少させます。

◆預金からの引き出し

預金から現金を引き出したならば、預金が減って現金が増えるという仕訳をしなければなりませんが、引き出したその全部あるいは一部を使った場合(経費の支払いなどに充当したなど)にはその仕訳も必要です。

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★仕訳は事業年度間でつながる場合もある

仕訳が事業年度間でつながる場合があります。例えば、第21期に売上計上をして、第22期に売上代金の入金があるといった具合です。

事業年度間で仕訳がつながっている場合には、前年度の会計ソフトのデータや各種帳簿を参照して仕訳をしなければなりませんので、同一年度中の仕訳のつながりよりも処理が面倒です。

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現金と小口現金の違い

2021-04-24 17:30:30 | 経理業務(帳簿の作成)
現金と小口現金の違いについてよく聞かれます。

◆管理(保管)区分としての違い

現金(硬貨と紙幣)は何らかの形で保管しておかなければなりません。一般的には次のように現金を分けて管理(保管)します。

【1】日常の少額な支払いに充てるための現金
【2】多額の支払いに充てるあるいは預金に預ける予定の多額の現金

【1】のことを簿記の教科書では小口現金といいます。一般人でいえば、財布に入れて持ち歩く現金です。企業の場合は小口現金を手提げ金庫に保管していることが通常です。また、小口現金には上限が設けられていることがあり、上限までを預金から引き出して、それが減れば再び補充するという管理方式が採用されていることがあります。

【2】については小口現金とは別に保管しますが、いわゆる現金商売(小売店や飲食店など)を除いて多額に生じることはありません。生じたとしてもすぐに支払いに充当される、預金に預け入れるなどして消滅することが通常でので、一般的な企業が保有している現金は小口現金であるといえます。

◆勘定科目としての現金と小口現金

現金の管理(保管)を「現金」と「小口現金」に分けている場合、それに合わせて勘定科目も現金と小口現金に分けます。この場合には現金(金銭)出納帳も二つに分かれるということです。

◆現金あるいは小口現金のいずれかの勘定科目しか用いない

現金の管理を分けていない場合には、現金あるいは小口現金のいずれかの勘定科目を用いることになります。少額であるから小口現金という勘定科目を用いなければならないというわけではありません。

◆決算書における表示

決算書においては、現金と小口現金、さらに預金(普通預金や定期預金)を合計して現金預金という勘定科目で表示します。

◆仮払金

出張旅費などの支払いのために、支払予定額を現金(硬貨と紙幣)で手渡すことがあります。これを「仮払い」といいますが、仮払いをすれば現金は減りますので、相手勘定科目を仮払金として現金を減らす処理をしなければなりません。

◆レジの現金

小売店や飲食店の場合には、「現金」と「小口現金」のほか「レジの現金」というものが生じます。これについては「レジ現金」などの勘定科目を設定して別途管理する必要があります。

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給料に関する仕訳(給与事務には「雑音?」がいっぱい)

2020-12-08 17:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
給料の計算方法(各種控除項目の計算)も、その仕訳も「完璧!」に理解していると自負していても。給与事務には予期せぬ出来事が生じることがあるものです。それが事務処理をする者の集中力を散漫にして間違いを誘発し、やがては間違いが累積し、それを修正する意欲さえ失ってしまう場合もあります。

◆年末調整

年末調整が行われる12月は、給料に関する仕訳が通常月とは違ってきます。年末調整の結果、12月の給料が次のようになったとします(全員分を合計して)。

給料総額・・・200万円(手取額のプラス要素)
源泉所得税の還付額・・・10万円(手取額のプラス要素)
住民税・・・12万円(手取額のマイナス要素)
保険料・・・15万円(手取額のマイナス要素)

支給額は200+10-12-15=183万円です。仕訳は次のとおりになります。

≪借方≫給料200、預り金(源泉所得税)10
≪貸方≫普通預金など183、預り金(住民税と保険料)27

源泉所得税は還付ですので借方です。ここまでは理解できると思います。

12月分の源泉所得税の納付は?

納付の必要はありません。

税務署は還付してくれないのか?

12月だけ給料に上乗せして支払うのは、雇用者(会社や個人事業者)が「国に代わって還付額の負担している」ことになるのではないかという疑問が生じます。しかし、12月に還付した分は、翌年1月の給料から徴収(天引き)した分から差し引いて納付することができます。

この意味は、源泉所得税に関する預り金勘定の動きを見れば理解できます。11月までは徴収と納付が同額です。12月は還付だけなので、預り金勘定はマイナスになります。これは国に代わって返金しているのですから、国に対する「貸し」です。この「貸し」は、翌年1月分の給料から徴収した分の納付から差し引くことによって消滅します。1月分の納付は、徴収した分からこの「貸し」を差し引いてすればいいのです。

◆健康・厚生年金保険料が変更になっていた

健康・厚生年金保険料の料率は変更されることがあります。給料の計算にはこの変更が反映されていても、保険料を納付する際の仕訳で預り金の金額が以前のままになっているという間違いがあります。

3月までの保険料の徴収が合計10万円で、4月から11万円となったとします。保険料の納付は3月まで20万円、4月から22万円とします。

3月までの仕訳は次のとおりです。

≪借方≫法定福利費10、預り金10≪貸方≫普通預金など20

4月の仕訳を次のとおり「間違った」とします。

≪借方≫法定福利費12、預り金10≪貸方≫普通預金など22

これでは、預り金が1万円残ってしまいます。

4月の正しい仕訳は次のとおりです。

≪借方≫法定福利費11、預り金11≪貸方≫普通預金など22

◆誤って税金を納付した(納付書の記入を間違った)

源泉所得税の納付書を記入する際に税額を間違ったとします。給料から徴収した税額は12万7千円(この税額は正しい)であるのに、納付書に誤って12万1千円と記入したとします。

納付の際の仕訳は納付により資金が動いた12万1千円でしますが、このままでは預り金が6千円残ります。この6千円の残高(納付不足)は、自ら気がつくか、税務調査で指摘を受けて追加で納付するまで消えません。

◆前年の配偶者控除や扶養控除が過大であるとの指摘を税務署にされた

特定の者の配偶者控除や扶養控除ができないのに誤って控除し税額を少なく計算していた場合、翌年になってから税務署に指摘されることがあります。その際は、雇用者が立替払いしなければなりません。

仕訳は次のとおりです。税金の不足額が2万円であるとします。

≪借方≫立替金2≪貸方≫現金など2

従業員などから立替分の返金を受けたときの仕訳は次のとおりです。

≪借方≫現金など2≪貸方≫立替金2

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給与計算事務は大変細かく、諸要素の変化が定期的、突発的に起こります。この変化に対する仕訳の処理が適時かつ適切でなければ、関連する勘定科目に「異変」が生じます。当然、この異変は結果としての決算数値に影響をします。

給料に関する様々な取引に適応できるようになれば複式簿記(というよりも経理実務)はマスターできたといえますが、全くの素人が独学でその域に達するのは容易なことではありません。

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≪ご注意≫文中の仕訳は便宜上「万円単位」でしておりますが、実際には円単位でしなければなりません。

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