短いブログ物語
物語 「羽衣」 5-4
ーーー物語は現在の結婚後の雄太と綾子に戻るーーー
子供のころから綾子ちゃんと結婚すると決めていた、、、
雄太が描いていた綾子との日々は何の不満もなく充実している。
雄太は綾子にも、ここに満足出来る生活がある事を感じてほしいと願いいながら
雄太なりの思いやりを大切にしていた。
時の流れは速いものである。
ふと思い出すのはあの日のあの時間。
昔の事のようにも、ほんの数日前っだ事のようにも思えるあの日の出来事、、、
結婚して、
自分の娘が小学一年になった姿を見ながらふと懐かしい情景が思い浮かぶ。
それは雄太が何となく女の子を意識した瞬間のほろ苦い思い出。
妻は知らないあの日の雄太の行動と心情、、、
それは今でも秘密のまま。
幼いあの日、天の羽衣になって楽しんでいた綾子に起きた悲しい出来事に寄り添えなかった自分がよみがえる。
あの時、何故か見てはいけないものを見てしまったと感じる雄太がいた。
そして一部始終を見ていた自分にも戸惑いを感じていた。
綾子がしょんぼりと帰って行った直後、松の枝に引っ掛かっていた羽衣をやっとの思いで取り外したのに、、、
そして綾子の家まで届けに行ったのに、、、
タイミングが悪くて渡せなかった。
翌日もう一度出直そうと思ったが、
何故かこっそりとその羽衣を自分の宝物にしてしまった。
幼かった自分の行動が、ちょっと切なくほろ苦く時折り振り子のように音を立てる。
あの時綾子に渡さなかったあの羽衣が、雄太の机の引き出しの奥に秘密のにおいを残しながらひっそりと大切に隠されている。
ーーー続く