ブログ物語
物語 「羽衣」 5-2
あれから数日後も、、、雄太は砂浜にいた。
浜辺にはあの日と全く同じ風が吹いている、、、
「雄太君もうお昼だよ」
砂の上に足を投げ出して、あたりに転がっている軽石を手元に引き寄せながら海を眺めている雄太の横に綾子が腰をおろした。
「あのさ、雄太君は私の事どのくらい知ってる?」
ちょっと唐突かなと思いながら声をかけた。
「知ってる知ってる、何でも知ってる、綾子ちゃんの事なら何でもわかってるさ」
それならばと、雄太もすかさず聞き返した。
「で、綾子ちゃんは俺の事どのくらい知ってる?」
「私だって雄太のこと何でも知ってるつもりだけど、でも、時々何考えてるのかよく分からないなあ、、、」
あぁ、この話はここまで、、、と、
ちょっと気まずく感じた綾子が話を止めた。
そして、
「あ、ハイ、これ上げる」と
雄太が先ほど集めておいた軽石を一つ渡した。
「あ、これいいな、、、軽石に開いているこの小さな穴を見てごらんよ、何かすごいパワーが閉じ込められているような気がする。まだ解明されてない物質やパワーを知りたいなあ、俺、科学者になろうかな」
「あ、なれるなれる、なれるかも! 雄太君科学者になれるよきっと」と、綾子が笑った。
「ありがとう、この軽石僕のコレクションにしょう」
「コレクションじゃなくて、宝物ね」
「あ、そうそう宝物だね、ありがとう」
大事にしてよ、と言いながら立ち去る綾子の後姿を見ながら雄太がつぶやいた。
何だよ、これ俺がさっき集めた石じゃないか、、、
いつもの海、砂浜、松林、雄太と綾子、振り子のようによぎる、、、幼いあの時。
雄太が松林に目をやる。
今でも鮮やかに舞う羽衣、、、
高校生の雄太の現在と過去を行ったり来たり。
綾子にもらった宝物の軽石を大事にしながら、雄太の夢は科学者に向かって少しづつ現実味を帯びて行った。
高校も大学も別々の二人だったが、近所の幼馴染だったという事もあり気心の知れた二人はやがて結婚する。
生まれた時から死ぬまで一緒と決まっていたかのような二人。
その後も雄太は科学の道へ、
絵本が好きだった綾子は出版関係の仕事を続けながら二人の子供を育てた。
それは雄太が小さいころ夢に描いていたような幸せな結婚生活、、、
続く。。。
(3話では、小学一年生の雄太と綾子を振り返る)
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