宇宙時間 ソラノトキ

風樹晶・かざきしょう

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月影の門 12

2009-02-09 21:54:25 | 小説 月影の門
「おぅ、どうだ?」
 言って、マドカが部屋を見回す。
 彼は、不思議な力を持っている。瞬間移動・テレポテーション というヤツだ。自分の知っているところであれば、どこへでも飛べる。知らないところであっても、同行者が知っているところであれば一緒に飛ぶことも可能だ。
 知っているといっても、本で読んだところとか映画で見ただけのところというのは無理だが、自宅から知人の玄関先とか今回のような隣の部屋などなら、訳はない。
 それでも、ミイコは女の子(二十歳過ぎてはいるが)なので、気を使って合図をしてくれる。
 元のアパートのときからの習慣だ。
「どうって、別に・・・」
 うろうろ歩き回って、結局ミイコの隣、マットレスの上に腰を下ろした。他に座るところがない。ま、床の上でも座れるのだが、あまりきれいとは言えない様なので・・・・。
「大丈夫かな、トシくん」
「う~ん。場所さえ分かればな~。どうやら地理は、元と同じようだし。お前さんの力で何かわかんねーか?」
 ミイコの力、というか能力。彼女もいくつかの能力を持っていた。一つは、予知。と言っても、はっきりした意味を成さない映像や音、あるいはメッセージを事前に感知するもので、その時が来てそういう意味だったのかと気づく程度のもの。それから、弾く能力、これは、自分の身の回りに危険が迫った時、その危険と思われるものを弾き飛ばすという能力。そして、浮遊能力・レビテーションというやつ。これは、それほど高く飛べるわけではなく、飛び降りるときパラシュート代わりになるかな? という程度のもの。
 ほかにも、開発しようとすれば色々な能力が見つかるのだろうが、今のところ生活に役立つほどの能力ではないので、放ったままなのである。
「無理よ、わかるったっていつも受信専用だもん。それも、あまり意味のないものばかりだし」
 そう言ってから、昔見た映像を思い出した。
 月の光の中、別の存在に変化していったトシの姿。そして、子供の頃に知ってしまった自分の正体。
「う~ん、なんか嫌なこと思い出しちゃった。マドカちゃんが、変なこと言うから・・・・」
「俺のせいかい」
 ミイコの八つ当たりだ。分かってはいるが・・・・。マドカが相手だと、つい色々言ってしまう。
 家族とも違う、友人や恋人とも違う(マドカはすでに彼女がいる)ただのアパートのお隣さんなだけなのに・・・。
「もしかしてさ、ここ、パラレルワールドってやつじゃないか?」

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