月明かりの中、人っこ一人いない村道を突っ走る二人の少女がいた。
一人は、美しい金髪。もう一人は、輝くような赤い髪を風になびかせて。が、今の二人には、髪がどうの姿形がどうのと言っている暇はなかった。と、言うのも、二人は、炎を纏う巨大な黒犬―魔犬―に追われているのである。
魔犬というのは、この世で滅多にお目にかかれる生き物ではない。本来、魔界か冥界に居る生物なのであり、普通、この世に生息する生物ではない筈なのだ。その魔犬に何故二人が追われているか。と、いうと。
村を目指す道の途中で、とある魔術師に捕らえられた一人の少女を救った。が、その魔術師が自分のやっている事を棚に上げ、二人を逆恨みし、どこかの世界から魔犬を呼び寄せ(或いは作り出し)二人に差し向けたのである。
まぁ、二人共「こいつは、絶対に悪い魔術師だ。そうだ、そうに違いない」と、勝手な思い込みで(実際、間違ってはいなかった)、そいつをかなりぼっこんぼっこんにしてしまい、当然のごとくそいつの怒りを買ってしまった訳なのだが、それはそれで仕方ないとして、どーしても納得できないのが、村人の対応なのである。
娘を助けてくれた。と、喜び、二人に礼を言ったのまでは、良いのだ。しかし、その為に魔犬に追われる二人を(自分達が巻き込まれる事嫌さに)助けようとしない。それどころか、家々の戸を硬く閉ざし二人を締め出してしまったのだ。中には、「余計な事を」とか「巻き込まれるのは御免だ」とか、挙句の果てに「自分の始末は自分でつけろ」など(こそこそではあるが)言い出す者までいる始末。
「ちきしょう。ここで焼き殺されたりしたら、化けて出てやる」
女の子としては、少々乱暴な台詞を吐くのは、赤毛の少女・グルラディーヌ。それに対して
「仕方ありませんわ。村の方方に頼まれた訳じゃありませんもの。やっぱり、自分に降り掛かった火の粉は、自分で払わなくては」
と、突っ走りながらもおっとりと答えるのは、金髪の少女・グリシーヌである。
しかし、そんな呑気な事を言ってばかりもいられない。魔犬は、二人の間を確実に詰めているのだ。もっとも、朝になるまで逃げて逃げて逃げ切れば、この鬼ごっこは、昼の間は一時中断となる。が、それは、あくまでも一時中断であって、夜になればまた、姿を現し二人を追って来るのだ。やはり、早いうちに何とかしなくてはならない。
「「あっ 」」 二人が同時に声を上げ、足を止めた。
一人は、美しい金髪。もう一人は、輝くような赤い髪を風になびかせて。が、今の二人には、髪がどうの姿形がどうのと言っている暇はなかった。と、言うのも、二人は、炎を纏う巨大な黒犬―魔犬―に追われているのである。
魔犬というのは、この世で滅多にお目にかかれる生き物ではない。本来、魔界か冥界に居る生物なのであり、普通、この世に生息する生物ではない筈なのだ。その魔犬に何故二人が追われているか。と、いうと。
村を目指す道の途中で、とある魔術師に捕らえられた一人の少女を救った。が、その魔術師が自分のやっている事を棚に上げ、二人を逆恨みし、どこかの世界から魔犬を呼び寄せ(或いは作り出し)二人に差し向けたのである。
まぁ、二人共「こいつは、絶対に悪い魔術師だ。そうだ、そうに違いない」と、勝手な思い込みで(実際、間違ってはいなかった)、そいつをかなりぼっこんぼっこんにしてしまい、当然のごとくそいつの怒りを買ってしまった訳なのだが、それはそれで仕方ないとして、どーしても納得できないのが、村人の対応なのである。
娘を助けてくれた。と、喜び、二人に礼を言ったのまでは、良いのだ。しかし、その為に魔犬に追われる二人を(自分達が巻き込まれる事嫌さに)助けようとしない。それどころか、家々の戸を硬く閉ざし二人を締め出してしまったのだ。中には、「余計な事を」とか「巻き込まれるのは御免だ」とか、挙句の果てに「自分の始末は自分でつけろ」など(こそこそではあるが)言い出す者までいる始末。
「ちきしょう。ここで焼き殺されたりしたら、化けて出てやる」
女の子としては、少々乱暴な台詞を吐くのは、赤毛の少女・グルラディーヌ。それに対して
「仕方ありませんわ。村の方方に頼まれた訳じゃありませんもの。やっぱり、自分に降り掛かった火の粉は、自分で払わなくては」
と、突っ走りながらもおっとりと答えるのは、金髪の少女・グリシーヌである。
しかし、そんな呑気な事を言ってばかりもいられない。魔犬は、二人の間を確実に詰めているのだ。もっとも、朝になるまで逃げて逃げて逃げ切れば、この鬼ごっこは、昼の間は一時中断となる。が、それは、あくまでも一時中断であって、夜になればまた、姿を現し二人を追って来るのだ。やはり、早いうちに何とかしなくてはならない。
「「あっ 」」 二人が同時に声を上げ、足を止めた。