オネガイ おねがい ・・・・みずを
「お願いします。水を 下さい」
その中の一人が炎を背負ったまま、はっきりと姿を現した。
「あ・・・・・、はい」
カルが抱えていた塩の袋をレムに押し付け、窓際に転がっていたコップと(奇跡的に割れていなかった)水の瓶を持ってくると、コップの汚れを自分の服でぬぐい、それに水を注いで、目の前にいる人物に渡した。
「ありがとう・・・・」
そう言って、頭を下げるその人物に対し
「どういたしまして」
と、返事をする。そして、どういう訳か、その人達との世間話(?)が始まってしまった。
ちょっとちょっとカル、今の状態どうなっているか分かってんの? と、頭の中で突っ込みを入れつつ、それでも、一緒になって話を聞いてしまうレムであった。
その内容はというと、・・・・。
今から132年ほど前(こ、細かい。毎年、年数を更新しているのだろうか?)彼らの住んでいた村が焼け、多くの人が死んだ。その時から小魔に苦痛の感情を食われ続けているのだそうだ。
カルが正体不明の人間とは思えないこの人達とのんきに話をしている間に、レムが部屋の中に不審火がないか調べ始めた。すると、
「マカハンニャハラミミッタシンキョウ」
カルが、何事かを唱えだした。
どうしたのか? と思ってレムが振り返ると、カルが両手を合わせ誰かさんたちは目を閉じそれに聞き入っていた。レムもつられて耳を澄ます。
「・・・~~・・~ ・・・」
意味不明の言葉をあまり抑揚のない、それでも静かに唱えていくカルの声に誰かさんたちの表情とあたりの空気が穏やかになっていくのが分かる。
そして、
「ガテーガテー パーラーガーテー パラーサンガーテー ボーディ スーヴァーハー ・・・・」
そして、最後に頭を下げ、静かに両手を外した。しばらくして
「ありがとうございます。これで、やっと、あの魔物から逃れる事が出来ます」
誰かさんたちはそう言うと、このへやにたむろしていた気配たちと共に(入り口とは反対の)窓の外へと消えていった。
彼らのいなくなった部屋に、レムが術で光球を灯す。
これで分かった、あの小魔があれだけの事が出来た訳。これは・・・。レムが口を開くより早く
「ね、レムちゃん。あの人達ね」
「分かってる。焼け死んだ後、あの小魔に利用されていたんでしょ」
そう言うと、カルはびっくり目でレムを見た。
「そんなに驚くことないわ。おかしいと思ったのよ。どう考えても、あの程度の小魔にこれほどの能力があるとは思えない。とすると、どこからか力を得ていた筈。その位、魔族の事を知っていれば答えなんてすぐ出るわよ」
本当のことを言うと、レムは、事前に下調べをしていたのであった。昔に起きた原因不明の火事。そして、焼死してしまった人々。それ以来、月の満ち欠けによって起きる怪事件、怪現象。
「それにしても、カルって結構、肝っ玉据わってるのね。平気な顔で幽霊さんたちと話してるんだもの」
レムもこれには、本気で驚いた。
「ん・・・、て事は、やっぱり、あれ、幽霊さんだったんだね。あんまり普通の人っぽくて、全然怖くなかったんで・・・・」
肝っ玉据わってるって言ったの訂正。これは、単に鈍いだけだわ。
ため息を吐いたレムは、そこら辺に落ちている毛布を拾い、自分のベッドに這い上がる。
「さて、騒ぎも収まったし、それそろ寝ようか。明日になったら、この事協会に報告しなくちゃならないし、カルの試験の準備もあるしね」
すっかり忘れていたけど、カルの試験を控えているのであった。
試験、この魔術試験と言うのは、筆記・面接・実施を合わせると五日間もかかってしまう大掛かりなものだ。これからは、試験のために体力を温存させておかなくては。
部屋が散らかっているけど、片付けは明日。今日は、もう疲れた。
「ねぇ、レムちゃん。あの人達、ちゃんと成仏出来るといいね」
カルの眠そうな声に“ジョウブツ”って何? と聞こうと思ったレムだが、それより瞼が重くなり、靴を脱ぐのも忘れそのまま眠りに落ちていった。
どうかこのまま、カルの頭の中に今まで教えた内容が残っててくれますように。と願いながら。
「お願いします。水を 下さい」
その中の一人が炎を背負ったまま、はっきりと姿を現した。
「あ・・・・・、はい」
カルが抱えていた塩の袋をレムに押し付け、窓際に転がっていたコップと(奇跡的に割れていなかった)水の瓶を持ってくると、コップの汚れを自分の服でぬぐい、それに水を注いで、目の前にいる人物に渡した。
「ありがとう・・・・」
そう言って、頭を下げるその人物に対し
「どういたしまして」
と、返事をする。そして、どういう訳か、その人達との世間話(?)が始まってしまった。
ちょっとちょっとカル、今の状態どうなっているか分かってんの? と、頭の中で突っ込みを入れつつ、それでも、一緒になって話を聞いてしまうレムであった。
その内容はというと、・・・・。
今から132年ほど前(こ、細かい。毎年、年数を更新しているのだろうか?)彼らの住んでいた村が焼け、多くの人が死んだ。その時から小魔に苦痛の感情を食われ続けているのだそうだ。
カルが正体不明の人間とは思えないこの人達とのんきに話をしている間に、レムが部屋の中に不審火がないか調べ始めた。すると、
「マカハンニャハラミミッタシンキョウ」
カルが、何事かを唱えだした。
どうしたのか? と思ってレムが振り返ると、カルが両手を合わせ誰かさんたちは目を閉じそれに聞き入っていた。レムもつられて耳を澄ます。
「・・・~~・・~ ・・・」
意味不明の言葉をあまり抑揚のない、それでも静かに唱えていくカルの声に誰かさんたちの表情とあたりの空気が穏やかになっていくのが分かる。
そして、
「ガテーガテー パーラーガーテー パラーサンガーテー ボーディ スーヴァーハー ・・・・」
そして、最後に頭を下げ、静かに両手を外した。しばらくして
「ありがとうございます。これで、やっと、あの魔物から逃れる事が出来ます」
誰かさんたちはそう言うと、このへやにたむろしていた気配たちと共に(入り口とは反対の)窓の外へと消えていった。
彼らのいなくなった部屋に、レムが術で光球を灯す。
これで分かった、あの小魔があれだけの事が出来た訳。これは・・・。レムが口を開くより早く
「ね、レムちゃん。あの人達ね」
「分かってる。焼け死んだ後、あの小魔に利用されていたんでしょ」
そう言うと、カルはびっくり目でレムを見た。
「そんなに驚くことないわ。おかしいと思ったのよ。どう考えても、あの程度の小魔にこれほどの能力があるとは思えない。とすると、どこからか力を得ていた筈。その位、魔族の事を知っていれば答えなんてすぐ出るわよ」
本当のことを言うと、レムは、事前に下調べをしていたのであった。昔に起きた原因不明の火事。そして、焼死してしまった人々。それ以来、月の満ち欠けによって起きる怪事件、怪現象。
「それにしても、カルって結構、肝っ玉据わってるのね。平気な顔で幽霊さんたちと話してるんだもの」
レムもこれには、本気で驚いた。
「ん・・・、て事は、やっぱり、あれ、幽霊さんだったんだね。あんまり普通の人っぽくて、全然怖くなかったんで・・・・」
肝っ玉据わってるって言ったの訂正。これは、単に鈍いだけだわ。
ため息を吐いたレムは、そこら辺に落ちている毛布を拾い、自分のベッドに這い上がる。
「さて、騒ぎも収まったし、それそろ寝ようか。明日になったら、この事協会に報告しなくちゃならないし、カルの試験の準備もあるしね」
すっかり忘れていたけど、カルの試験を控えているのであった。
試験、この魔術試験と言うのは、筆記・面接・実施を合わせると五日間もかかってしまう大掛かりなものだ。これからは、試験のために体力を温存させておかなくては。
部屋が散らかっているけど、片付けは明日。今日は、もう疲れた。
「ねぇ、レムちゃん。あの人達、ちゃんと成仏出来るといいね」
カルの眠そうな声に“ジョウブツ”って何? と聞こうと思ったレムだが、それより瞼が重くなり、靴を脱ぐのも忘れそのまま眠りに落ちていった。
どうかこのまま、カルの頭の中に今まで教えた内容が残っててくれますように。と願いながら。