10月30日(月)、浦河町で<
強い馬づくり講演会>が開催された。
JRA日高育成牧場副場長・朝井洋氏と同業務課長・山野辺啓氏の司会進行のもと、栗東の角居勝彦調教師と美浦の勢司和浩調教師が講演を行った。
角居調教師は、<
人を鍛えて馬を鍛える>と題して、主に厩舎経営についての考えを披露された。
基本の考えは、「人を鍛え、人を育て、その人が馬を鍛え、馬を育て、その馬が人を鍛え、人を育てる」という好循環を創り出すこと。
キーワードとして、<熱意>、<スタッフの意識向上・意識統一>、<業務のシンプル化・分業化>、<助け合い・サポート>、<スタッフに任せる・部下を育てる>、<信頼関係構築>、<常にステップアップする課題を与える>、<愛情を持って接する>などを挙げられ、牧場経営にも活かせる興味深い内容だった。
勢司調教師は、<
馬の取り扱いとメンタルトレーニング>と題して、馬との信頼関係をどのように構築していくかについての持論を披露された。
基本の考えは、「馬との信頼関係を築くには、その人がいかに信頼されるリーダーとして行動し、成長できるかがポイント」であろうか。
また馬の行動を理解するためのキーワードとして、<本能を理解>、<個々の性格を理解>、<性の違いを理解>、<取り扱う人の精神状態を理解>、<健康状態を理解>をあげられた。
そして、信頼関係が構築し「馬自身が走りたいという気持ち」にさせることができれば、その精神状態がトレーニング効果を著しく高めると解説。これを「脳を鍛える」という言葉でも語られた。
その後、<
日高の馬に望むこと>と題して聴衆を交えての意見交換会が行われ、会場からも活発な質問が飛んだ。
二人に共通するのは、<馬をしかるのではなく、ほめる>という原則。これは過保護という意味でなく、愛情をもって接するということ。「愛情もって接すれば信頼関係ができ、そういう人に叱る資格があり、叱る効果がある。」と解説された。
トレーニング効果を高めるには、とにかく短時間に集中することというのも共通した考えだ。
これは人間のトレーニングも同じ。ベンチプレスをするにしても、漫然と10回上げるのと、大胸筋の筋繊維一本一本の収縮を感じながら10回上げるのとでは大違い。後者は短時間で最大限のトレーニング効果があり、十分な休養による超回復も期待できる。そういう域に達するにはまさに日頃の鍛錬による脳の向上、集中力が肝心だ。(マニアックな話ですいません。馬も同じかと思いまして。by元トレーニングオタク)
また、セリ上場馬に関して社台と日高が違うと感じる点は、<たくさんの人の手がかかり、徹底的に躾けができているかどうか>を挙げられた。この違いが、あらゆるシチュエーションで馬の所作に表れ、結果を大きく左右するとのことだ。
手をかける時間がなかなかとれない状況であれば、コンサイナーに任せたり、地域でそういったチームを作るなりの対策を考えるべきとコメントされた。
馬全般については、「最近の馬は、総じて見栄えは良いが、弱くなっている。蹄も弱い。筋肉量も少なくなってきている。」と警鐘を鳴らされた。「放牧地を広くとり、馬の運動量は豊富ですか?」と会場に問いかける場面もあった。
などなど、ここでは書ききれないことがまだまだたくさんあるほど、内容の濃い有意義な講演会だった。
by
馬市ドットコム