楽と一日京都旅に行ってきた。
窓はカーテンで覆われて景色も見えず、
電気も消された真っ暗な車内。
聞こえてくるのは、人の寝息とゴーゴーと響く走行音。
そんな夜行バスのステップを降りて、
朝の京都に着地した。
暗闇から一転、朝の新鮮な空気の中へ。
不思議な気持ちで、京都の空気を深呼吸した。
朝はホテルのビュッフェにて。
スペイン語を話す外国人観光客がたくさんいて、
わいわいとにぎやかに食べていた。
サラダが豊富だったので、楽も私もサラダ多めに。
楽は京都が好きで、何度も一人旅で訪れている。
だから、「まかせて!」とばかりに先頭にたち、
京都初心者の私を案内してくれた。
金閣寺は開門時間に行って、観光客の多さに驚いて、
その中にビュッフェのスペイン人団体さんたちを見つけて、
お互いたくさん楽しみましょうね、と心の中で声をかけた。
竜安寺では、小学生たちに石庭の説明をする先生の言葉に
ふむふむと耳を傾け、豆知識を学んだ。
下鴨河合神社では、お顔の絵馬にお化粧を施して美麗祈願。
一日バス券を使って、本当にたくさんの場所を歩いた。
お昼は、楽が、なんとコース料理をご馳走してくれた。
鴨川の納涼床で、気持ちよい風に吹かれながら。
「美味美味」とつぶやき合いながら。
地ビールを、楽と私で一本ずつ頼んで飲んでみた。
どちらもすっきり飲みやすかった。
私の前を歩く楽の背中を見ていたら、
小さいころの楽の後ろ姿と重なって見えた。
福山に住んでいた頃、保育園の裏山によく野蒜を採りに行った。
お味噌汁の具材にすることが多かったっけ。
「おかんは野蒜がどれだかわらないけえ、楽にまかせて!」
そう言って、善とふたり先頭に立って、私を案内してくれた。
ふたりとも自信満々で、前を歩いていく。
「おかん、大丈夫?ついてきてる?」
「足元に気を付けて歩くんだよ」
おかんのことを心配して、ちょくちょく振り返って、声をかけてくれる。
小さくて、頼りがいのある、ふたつの背中だった。
私よりも大きくなった楽の背中は
今も自信に満ちて、頼りがいがある。
京都の町を、私を引き連れて、元気に闊歩していた。
「おかん、大丈夫?ついてきてる?」
心に残る旅をありがとう。
10月1日 おかん