盲目の少女とわの壮絶な人生のお話。
始まりは「とわのあい」で結ばれた母との幸せな時間。
とわが楽しめるようにと、母は香りの木々を庭に植えていた。
四季折々の香り漂うその庭は「とわの庭」と呼ばれた。
庭に集まる黒歌鳥の声で朝が来たことを知り、
とわの庭の木々の香りで季節を知り、
外に出ることなく、母と二人の世界で安心して暮らす盲目のとわ。
でも、いつしか人生は横道にそれていき、
壮絶な孤独と飢餓がやってくる。
ゴミに埋まった部屋で、必死に食べられるものを探すとわ。
やっと見つけた、柑橘系の香りのするグミは、
幸せの時代に母からもらった消しゴムだった。
それでも生き延びたとわは、
いっぽ。にほ。さんぽ。
「とわの庭」を抜けて、外の世界へと出ていく。
人生の再生の物語。
許しの物語。
愛の形の物語でもある。
瀬戸内寂聴さんの「般若心経」の本を読んだとき
こんな文があった。
「私たちは真実を、それがいかに辛くとも、
いかに残酷であろうとも、やっぱり真実として
受け止めなきゃいけないんですね。
そしてそれを受け止めたうえで、
そこからもう一度生きなおす。
そうすれば生きる勇気も湧いてくると思います」
とわは、人生を受け止めて、生きなおして、
こんなセリフを言っている。
「幸せだねえ」
「生きているって、すごいことなんだねえ」
「一瞬一瞬が奇跡の連続なのだ」
「だから、今この時を謳歌しなくちゃ」
母と子の愛は複雑にからまって
簡単にはほどけない。
ぐちゃぐちゃにからまって
切っちゃったほうがいいのかなと
思うときもあるけれど、
思いもかけない瞬間に、綺麗な愛の形が見えたりもする。
母でもあり、子でもある私は、
そんな愛にからまりながらも
日々生きている。
7月28日 おかん
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