康博は金曜日学校から帰るとすぐ向かうところがある。
家の近くのアパートだ。歩いても5分もかからない。康博は己が心が高鳴っているのを承知していたので、顔の表情を平静に保つのに注意を払った。やはり人にきづかれるのはまずいし、いやなので通りを歩くときもなるべくうつむくようにした。角のところで人とぶつかりそうになったが、謝りもせずそのまま過ぎた。相手はなにかブツブツと言っていたが気には留めなかった。
二階建てアパートの一階一番左端の戸の前まで来ると少しためらってからノックする。
「はーい」と声がし、続けて、
「入っておいでよ」と妙齢の女性の声がする。
「お邪魔しまーす」と断って戸をくぐる。
一目で見渡せる部屋の中は見事に殺風景である。部屋の中の女は小卓に肘付きして雑誌に目を落していた。
「お邪魔します」
もう一度声をかけてから、上がり口に突っ立ていると、
「いらっしゃい。いまお茶でも入れるわね。そこ座ってて」
彼女は立ちあがって、右手の流し場に近づき、瓦斯ボンベのコックをひねって火をつけ薬缶をかけた。
「はぁ」
康博は誰にもみつからずにここに来れたのに一安心したようである。
間抜けな返事をしてから、彼女の座っていた卓の空いたところにあぐらをかいた。
「今日は何してらしたんですか? 京子さん」
「ん~ん。べつに」
京子がティーカップを二つ手にもってきて、彼と向かいあい座についた。
康博が今週学校での出来事をとりとめもなく話して、それを京子が面白そうに聞いて時を過ごした。
「あら。もう六時ね。」
京子がつぶやいて、康博が窓の外を覗くと薄暗がりである。晩秋の日は短い。
「それじゃ、あたし銭湯行ってくるね。君も一緒に行く?」
「いや。はい、行きます」
「石けんは貸してあげるわね。ちょっと待って、いま用意するから。」
さっと支度をすませると二人は連れ立った。外に出ると夕風が顔にあたり少し寒い。街灯に照らされて二人の影が路上に伸びる。二人のほかには人影はなかった。
他愛ない会話がつきる前に銭湯の前に到着した。
大きく「湯」と染め抜かれたのれんをくぐって、康博は左の男湯、京子は右の女湯に別れた。
銭湯の主人は女湯の方を向いていたので、康博が小銭を番台に置いてびっくりしたように、
「い、いらっしゃい」
と挨拶した。番台の向こうでは、京子もお金を払ったところだった。
女湯を番台越しに覗こうとして、京子と目が合い苦笑する。
康博は番台に近い脱衣棚を選び、番台の壁のないところを横目で観る。
「この位置から京子さんの姿が見えないということは、向こうからも見えないということだ。」
京子さんには気付かれないように女湯を覗こうとしたが、時間帯が悪く若い女性がいなくてがっかりした。
同学年の女子や高校のお姉さん方はもっと早い五時から五時半にやって来て入浴し、その後の時間はババァばかりだと先輩から聞いたことがある。ただ近頃は内湯のある家が増えて、銭湯への客足は減る一方らしい。康博の家も割と裕福な方なので自分の家にお風呂がある。
康博はシャツを脱ぎながら、
「京子さんも脱いでるんだろうなぁ。ブラウスのボタンを外し、袖をぬいてから、腕を背に回して乳バンドの爪を外すと・・・」
康博の下半身は己が想像で勃起した。
湯船に浸かっている間も京子の裸が気になってしようがない。
十分温まって、上気した顔面が血行のためか照れのためか自分でも分からなくなると、風呂から上がった。
京子はまだのようなので、向かいの商店でラムネ水を二つ買った。
「待ったの?」と行って、京子がのれんをくぐって出てきた。湯上がりの女性は何とも言えない色気が漂う。火照り気味の赤い頬。鼻孔をくすぐる石けんのかおり。
「いま出たところです。」と応えて、ラムネ水を手渡す。
「サンキュー!」
気温が低いので京子の体から立ちあがる蒸気が仄白く体の周りを包んでいる。
霞を纏った天女を見ているようで、康博はうれしくなった。
アパートに着くと康博は京子に思い切って尋ねた。
「本当にやらせてくれるんですか?」
「もちろんよ。約束だものね。」
京子はすごく美人というほどでもないが、結構かわいくて、康博からいえば年上になる娘とエッチが出来るなら十分満足だ。
「君たちのおかげで、アパートが借りられて暮らしているんですもの。」
小さな水玉のブラウス。やわらかく開かれたブラウスのあいだから、両の胸のふくらみがかすかに覗かれる。微笑んで胸元をおさえた。
******************************
見たところ高校生くらいの家出少女が街を歩いている。
持ち出したお金も底をついて困っているところ、康博の仲間が彼女を助けた。
「よし。みんなでお金を出し合おうぜ。」
最初は一人三万円、後は一か月に三千円ずつ出し合うことにした。康博の仲間は六人いる。18万円と月々1万8千円あれば、しばらく生活は出来る。アパートは先輩が以前住んでたところが空いているのを知っている。そこを無断拝借しよう。彼女の荷物とてバック一個である。見つかりそうになれば逃げれば良い。
京子の本名は吉崎京子、年齢は十七才。親のお説教が頭に来て家を飛び出してきたらしい。
こうして、一人の少女とオレたち中学生グループの秘かな不純交遊がはじまった。
人類が宇宙に進出してから、一世紀が経とうとしていた。宇宙世紀0079。月の裏側にある、地球から一番遠い宇宙植民地サイド3は、「ジオン公国」を名乗り、地球連邦政府に対し、独立戦争を仕掛けてきた。ジオン軍は、その国力の少なさをおぎなうため、諸戦において巨大な機動歩兵「ザク」による「コロニー落し」を行う。その結果、35億人が死滅。全人口の半数を失った人類は、自らの行為に恐怖した。戦線は、ジオン軍優勢のまま膠着。半年が経った。そして、今。連邦軍の反攻作戦「V作戦」が始まろうとしている……。
アニメ界の巨星・富野由悠季の永遠のベストセラー「機動戦士ガンダム」。装いも新たに登場。
角川文庫 1-1 角川文庫6931 ISBN-4-04-410101-9 C0193 P430E
昨日は和民で飲んだ。ジャンカラでカラオケした。
居食屋和民 姫路...