

市民会館の大ホールへ行き、イスにすわっていました。やがて、音楽会が始まりました。
「真っ赤な秋」を歌っているとき、ぼくは、少しつられてしまいました。その時、
「ぼく達が出ている時、自分は、まちがわないだろうか。」
と思いました。
次々にいろんな小学校の児童が出てきました。上手な所や、そうでもない所もありました。
次々と進み、やがて、ろう下に出ました。その時も、まちがわないかと考えていました。
それで、出てまず歌が始まり、楽奏が始まりそして、自分のイスまでもどりました。
自分では、上手だったかどうだったかは分からなかったけど、出る前よりは、安心しました。いろんな小学校の音楽が聞けてよかったと思いました。
思えば思う程、京子は美しい。その京子がぼくのような男を仮にも愛してくれたと言うことはぼくには考えられない程、幸福すぎる事であり不思議な気がする。
来週にはまた会えると思うと、嬉しくて仕方がない勢いだった。家に帰ってもぼくは元気で、母も一目見て、何かいいことがあるのだろうくらいには思ったに違いない。
しかし万事は都合よくゆくものではない。ぼくは風邪をひいてしまったのだ。熱が出て翌日から学校を休まねばならなくなった。
学校を休んで3日めの午後、ふっと武雄が訪れた。
「見舞いに来た」
「ああ。ありがとう」
康博の部屋で、二人きりの会話が始まった。
「京子とは、そのやったのか?」
「ああ。一応な」
会話が途切れる。
気まずくなって、宿題はどうなってるかと話題を変えた。
「いろいろ出てるよ。プリントが3つくらいあるぜ。持って来た」
「そうか」
母が、買い物に出て来ると言いに部屋へ来たので、
「ぼくはこれでおいとまします」
と武雄は言って部屋を出ようとした。
一瞬振り返りつつ、
「明日はオレの番だから・・・」
そうつぶやいて、武雄は戸を締めて出て行った。
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二人の少年と少女との男女の性は、あくまでも澄みわたっていた。
性や人間の肉欲について彼等は恥ずかしさも賤しさも罪の意識は感じなかった。
「なぜですか」
「あなたと遊ぶためよ」
「出て行くなら」彼女はにっこりと、笑った。「この鍵をとってごらんなさいな」
そう言って服から少しのぞいている自分の胸の谷間を指さした。アパートの鍵を乳房と乳房の間にすべりこましていたのである。そして彼女は眼を光らせてたち上がった。
少年は衝動を一時に燃え上がらせて飛びかかった。二人は布団の上にからみ合いながら倒れた。
朝が近づいた時、隣にねている彼女に聖なるものを見た。強烈な至福感がこみ上げた。彼の手は少女の白い首を思わず、締めつけた。