熱血で金八先生みたいだという評判の教師だった。
本人も金八を意識しているのか、髪型は真ん中分けのマッシュボブだった。
「私の名前はモミオ。百の美しい男と書きます」
教師は自己紹介の時に黒板にチョークで『百美男』と書いた。自分の名前を気に入っているようだった。
5月に家庭訪問があった。家庭訪問は保護者と教師だけで行われ、生徒は同席しないスタイルだった。
家庭訪問を終えた毒子がとてもご機嫌な様子で私に言った。
「先生からどうしたらuparinちゃんみたいないい子が育つんですかって聞かれた。」
「先生にも女の子がいるんだって。uparinみたいな子に育てたいって」
私は狐につままれたようだった。
なぜそんなことを言われるのか全く訳が分からなかった。
まだ中学に入ってわずか1ヶ月。
相変わらず私はおとなしくて目立たない生徒で、教師から褒められるようなことは何もしていない。
毒子はとても嬉しそうだったが、私にはモミオへの不信感が生まれた。
その後から、モミオの視線を『気持ち悪い』と感じた。
目が合うとゾクっとするほど不快だった。
沸き起こる生理的な嫌悪感、
生まれて初めて感じる感情だった。
どうしてモミオにこんなに嫌悪感を覚えるのか分からなかった。自分ではコントロールできない感情だった。
毒子はモミオを気に入っていて、いつもは人の悪口ばかり言っているのに、モミオのことは「面白い先生ね」と嬉しそうに言うのにも腹が立った。
私はモミオを無視した。
話しかけられても無視をした。
クラスメイトから「uparinさん、先生にあんな態度取っていいの?」と驚かれた。
しかし、私は無視し続けた。
モミオは怒ることもなく、ただ悲しそうな顔をしていた。
あの頃、どうしてあんなにモミオが嫌いだったのか、あの感情は自分でもよく分からない。
おそらく当時の私は心を病んでいた。
今は、モミオに会う機会があれば謝りたいと思っている。
手紙を書いて謝りたいと思ったこともあるが、住所が分からずそのままになっている。
続く
(注)教師の名前は少し変えてあります。