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子ども2人不登校でした

回想その12〜洗脳が解けた瞬間〜

大学一年の夏休みのこと

友蔵の車でドライブに出かけた。

ここで初めて明かすが、友蔵の職業は警察官だった。

仕事一筋だった友蔵は高卒の叩き上げで巡査から地道に出世し、この頃には田舎の小さな警察署の署長になっていた。

家庭内の地位は毒子により低められていたが、社会的な地位は着々と築いていたのだった。

友蔵が私を単身赴任先の近くの滝を見に連れて行ってくれると言い、私は暇な大学生だったので断る理由もなく、付き合うことにした。

その道中のことだ。

山道でバイクが故障して立ち往生している中年男性がいた。

友蔵は車を停めてその人に声をかけた。

そして、その人を乗せて目的地まで車で送り届けた。

その中年男性は友蔵に、とても助かったとお礼を言い、財布から千円札を数枚出して渡そうとした。

友蔵は「そんなのは受け取れない」と断ったが、その人も「これは気持ちだから受け取って欲しい」と引き下がらなかった。

しばらく「受け取れない」「受け取ってくれ」と押し問答していたが

友蔵は頑として受け取らず、結局その人が折れて深々とお礼を言って去って行った。

私はその光景を目の当たりにして

(あれ?友蔵、ええ人やん)

と思った。

今思えば、非番とはいえ警察官として当たり前のことをしただけなのだが

子どもの頃から友蔵が『悪人』であるかのように毒子から吹き込まれてきた私は、

それまで抱いていた友蔵像がガラガラと音を立てて崩れるのを感じた。

まさに、洗脳が解けた瞬間だった。



友蔵は誰の悪口も言わない。

自分の自慢をしない。

クソがつくほど真面目。

法定速度は厳守。(よく渋滞のヌシになる)

一滴でもお酒を飲んだら運転しない。
(今は当たり前だが、この頃はお酒を飲んでも運転する人が多かった)

浮気もしない

ギャンブルもやらない

働いたお金をちゃんと家に入れている

まじめに働いて出世して、警察署長にまでなった。

なのに、毒子からはボロクソに言われている。




毒子が私にこんなことを言ってきたことがある。

私が小1の時の作文に、「うちにはぼうりょくだんがいます」と書いたのだそうだ。

「暴力団」というのは友蔵のことだが、担任の先生が赤ペンで「何のことか先生にはわかりません」とコメントを書いていたと。

毒子は「あんた覚えてないの?」と言ってケッケッと笑った。

私はそんなことは全く覚えておらず、それを聞いて恥ずかしくなった。

『暴力団』という言葉を小1の少女が知るわけがないので、それは毒子が私に「お父さんは暴力団みたいや」と教えたのだ。

私が母親だったら子どもがそんな作文を書いたら先生に対して恥ずかしいし

子どもにそんな思いをさせていたのかと心を痛めるだろう。

しかし、毒子はケッケッと愉快そうに笑っていた。

警察官の父親を子どもに『暴力団』と教える神経が私には分からない。

私は見ていないが、友蔵は毒子に暴力を振るったことがあるのだろう。

しかしそれは毒子の口の暴力に対抗しただけだったのに違いない。

実際、毒子に激昂して友蔵が包丁を持ち出してきたことがある。

その時は本当に恐ろしかったが、友蔵は直ぐに包丁を手から離した。

刺し殺したいほど憎かったのか、

ヒステリックに友蔵を罵り続ける毒子を黙らせるために脅してみただけなのか…



毒子は友蔵の前で平気で友蔵の実家の悪口を言う。

若い頃、友蔵の給料が安くて生活がカツカツだったと言う。子どもの給料が安かったら普通は親が援助するのに、友蔵の実家は何も援助をしてくれず、毒子の実家から援助を受けたという話は何度も聞かされた。

友蔵の実家は山や田畑をたくさん持っているのにケチだと。

私にはまるで毒子が友蔵の実家の財産目当てで結婚したかのように聞こえた。

そして友蔵の母親(私の祖母)の悪口もよく言っていた。

もしも私が友蔵だったら、毒子を殴りたくなっただろう。

もちろん、友蔵にも悪いところはあるだろうが

友蔵と毒子、どちらが『悪人』かと問われたら

今の私は迷わず「毒子」と答える。












コメント一覧

uparin
@tochika さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。
本当にこの時のことは忘れられません。
洗脳が解けるまでに19年もかかりました。

うちの父親もクソ真面目で口下手で、母親に口では勝てません。父は授業参観どころか運動会にも来たことはないです。
うちは父はプロ野球、母はドラマが好きでした。父は中日ドラゴンズファンで、中日が負けると機嫌が悪く、テレビに向かって怒っていました。

夫婦喧嘩を見たことがないなんて、良いご家庭に育たれましたね。お母様は教養高い方だったのですね。母親は家庭の中心だから、母親次第で家庭の雰囲気は決まりますね。うちの実家は最悪でした。

警察官の夫を「ぼうりょくだん」と子どもに教えるなんて、ギャグですよね〜😂
tochika
uparinさん、こんばんは。
思いもよらぬところで「はっ」と気がつく真実。
毒子さんの幼いころからの洗脳が解けて良かったです。
お父様、真面目に働いて警察署長まで昇進されたのですね。
凄く偉大なお父様です。

私の両親は父親は大人しくて真面目。
酒、タバコ、ギャンブルも全くノータッチ。
中卒で教養が無いためか(?)子育てにもノータッチ。
一度も小中高の授業参観に来たこと無し。
テレビが趣味。
お笑い番組・ワイドショー・プロレス・プロ野球しか観ません。
おそらくドラマを一度も観たことが無いと思います。

母親は高卒で弁が立つし、悪口も言っていたけど
やはりどこか真面目で夫婦喧嘩は見たことがありませんでした。
母親はテレビは時代劇やサスペンス好き。俳句が趣味で書道が得意でした。

毒子さんの「ぼうりょくだん」の吹込みは、今でこそ笑えますね~♪
警察官の夫に対して...「コントか!」ってツッコミたくなります。
uparin
レイさん
コメントしづらい記事にもコメントいただき、ありがとうございます😭

滝を見に行って、父の本当の姿が分かって良かったです。

うちには暴力団がいますという作文、びっくりでしょ。先生はコメントに困ったでしょうね〜💦

私は子どもの前で夫のことを悪く言わないように気をつけているつもりですが、ついポロっと言っちゃってるかも知れません😅
レイさんもお子さんの時に怖い思いをしたことがあるのですね。
父は夫婦喧嘩の時は大声で怒鳴って怖かったですが、物を壊したりはしたことはありませんでした。
昔のお父さんって怖い人が多かったんじゃないかな〜
Lei
こんばんは。
洗脳が解けて良かった^_^
お父様は、とても立派な警察官だったのですね。一緒に滝を見に行って良かった。。
それがなかったら、その後が変わっていたかもしれませんね。
小さな声から、ずっと言われていると、やはりそう思い込んでしまうんですね。まだ幼い頃からだったから余計に。
ちょっと違いますが、私が旦那を煙たがったり、お父さんがさぁ、、なんて愚痴ばかり言っていたからか、尊敬もしてないだろと思います。これは、私のせいだと反省していますが💧
それにしても、うちには暴力団がいます、は、後で聞いて、ビックリしましたね😮‍💨先生も、コメントに困ったのでしょうね。

私の父親も、頑固だし亭主関白な所があり、昔は大変でした。タンスを殴り穴をあけたり、色々ありましたよ💧
子供だったので、怖かったですが、大人になれば、そんな事もあるのかなぁって思ったりします。ウチは、喧嘩にもなりませんが💦
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