お好み夜話-Ver2

バナナジュース男子

週末に顔なじみの常連さんがカウンターに集う、なんてことはここ数年滅多になくなりました。

皆さんそれぞれの事情があるわけで、年数とともにモグへの関わりが薄れてゆくのは仕方がないことなのです。

だから近ごろは昔のような常連さんはほぼ存在せず、何度も来てくださる顔見知りの方、という風になっている現状であります。

そしてそういう方々は一様にワテクシには注文も会話もせず、カウンターには座りたがらず、かあちゃんとのみ冗談を言いあったりしてコミニケーションをとっているのです。

まあワテクシも不器用で口下手なものですから、なにかと粗相があってはいけませんので余計なことを言わず、客席のことはかあちゃんに任せて、せっせと調理したり洗い物に精出すようにして関わりを持たないように努めているわけであります。

ワテクシのようなガサツな昭和の遺物と違い、近ごろの体格の良い男性のお客様は4人ほどで来られても「取りあえずビール」などとは言わず、それぞれが好きな飲み物をキチンと主張してオーダーします。

「ボクは生ビール」

「ボクは青リンゴサワー」

「あ、ボクは昨日飲んだからいいや」

「じゃボクはコーラ」

というように、それぞれの好みを尊重し楽しく飲食されます。

ですからフラフラに酔っ払って千鳥足で帰るような、はたまたカウンターで舟をこぐような、あるいは奇声を発しワテクシを愚弄するようなヤカラは皆無であります。

そして、誠に品行方正な青年たちの〆は揃ってバナナジュース‼

みなさん美味しそうに飲みほし、お代わりをすることもしばしば。

彼らは入店時に、

「今日はバナナありますか?」

とキチンと確認して席につく生真面目さで、師匠の5歳の長男「しよーくん」を彷彿させるバナナ好きな好青年なのでありまふ。

そういうバナナジュース男子が数組、毎週のようにいらっしゃることはまことに好ましく、ワテクシも日夜酒量が増えて嬉しい限りです。

彼らのSNSにはバナナジュースがおいしい店としてモグランポがアップされているのかもしれません、まことにもって恐れ多いことでございます。



時代は変わり、人も変わる。

有為転変は世のならいと申します。

かつて蟒蛇の人たちや、やたら声が大きく目上の人間を敬わないヤカラがカウンターに入り浸っていた事実が悪夢のように思い出されます。

あんな悪夢のような日々と比べると、今は穏やかで平和な夜ばかりで、ワテクシもすっかり油断して酒量が増えてしまいます。

今夜も純度75%オーバーの高カカオチョコを舐め、品行方正なバナナジュース好青年がいらっしゃるのを心待ちにしましょう。

開店20年目を機に、バナナジュースとスイーツの店として再出発をしようかと・・・・・。


嗚呼、平和だなぁ。

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