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クルシャの天地

真冬の公園猫たち



とある公園に地域管理されている猫たちがいます。
飼主の住まいのすぐ近くではありませんが、散歩圏内なのでたまに
彼らの様子を見に行くのです。







10年ほど前から、全国的に猫の地域管理がピンポイント的に行われ始めた
時から、管理されている猫たちはその証拠として耳にビーズが結ってあったり
片方の耳の一部が切り取られていたりします。


その公園の猫たちは、皆同じ片方の耳の上辺に、切り込みが入れられています。
手術済みの証拠なのです。

このような猫を見ても早とちりしないでください。
彼らは虐待されたのではなく、マーキングされているだけです。








管理猫たち。

この場合、「管理」というのは個体数の管理のことであって、具体的には
個別の猫に去勢避妊手術を施すことらしい。
「野良猫に餌を与えないで下さい」とかいうのがよく地域掲示板なんかに
ありますが、管理されている猫に限っては、そのあたりで世話しても増えない
から問題ない、とまで見做されているのかどうか、は定かでない。

はっきりしているのは、彼らが最早駆除対象ではない、ということなんであります。










この真冬の夜、飼主は寒空で彼らがどうしているのか気になって件の公園
に行ったのです。すると、いつものように同じ猫たちがうろついている。
上がる家は無いのか。



上の写真の手前、尻尾を上げ気味にしている黄色い猫がおります。
彼には名前が付いていて、外と何軒かの家を往来して暮らしています。
この黄色い猫は公園猫たちの世話焼きみたいな立場にあって、
今はこうして飼主を彼ら内気な公園ドメスティック猫たちのところまで
案内してきたところなのです。






仲間たちの場所に撮影者を案内する猫



黄色い猫が飼主を見つけて、公園の入口まで先導している動画。
真っ暗で、ほとんど見えないのが残念ですが、何匹かの猫の鳴き声が
しているのがお分かりでしょう。

黄色い猫は飼主が歩いているのを駐車場で見つけて、
「あー、あー、そこの人知ってるよ知ってる」
などと鳴きながら道へと出てきたのです。








彼(黄色い猫)が公園で鳴くと、内気な公園住まいの猫たちが寄ってきました。
飼主は何も用意していないので懐には彼らに与えるものもない。
すると、集まってきた猫たちもまた去って行って、黄色い猫だけが残ります。







この猫は律儀にも、戸惑っている飼主の横までやって来て、すり寄ったり
服を舐めたりします。何も無くて悪かったね、とこちらは思っているものの
黄色い猫にしてみれば、「せっかくお連れしたのに、愛想ないやつらですみませんね」
とでもいった風情。


寒空の街灯の下でよく見れば、彼の片耳にも切り込みがある。







黄色い猫は、同じ公園で一度保護され、手術されてまた放された管理猫
だったようです。







家を何軒か渡り歩いては、猫を見て屈み込んでくれる人たちをこうして
公園でかじかんでいる仲間たちの所へ連れて行く。

ひょっとすると何匹かは彼の紹介でどこかの子になったのかもしれない。

内気な公園猫たちの何匹かは兄弟猫のようです。コミュニケーションスキルの
ある仲間が里親候補を連れてくることも、人が屈み込んでいるのも自分たちの
幸運の兆しになるかもしれないことを、残念ながら理解できない。







何か人の世の辛さと同じではないかと、妙な義憤を抱きながらまた飼主は
真冬の公園に出向いて、今度は軽い猫餌なんかを内気な猫たちに与える
のでした。






あれから、何度か公園猫たちには出会っています。
いつも同じように、同じ場所でかじかんで、びくびくしています。






しかし、あの黄色い猫には、それ以来出会っていない。





水のソーテール3: 悪魔オフィオモルフォス (うるたやBOOKS)
東寺 真生,明鹿 人丸
うるたや
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