ばりん3g

マイクラ補足 兼 心理学のつぶやき

「経験がモノを言う」のは嘘。仕事の業績に関する、身もふたもない事実とは。

2022-02-03 | 旧記事群

1996年に発表された論文によると、一般的な認知能力(IQなど)は仕事における個人の業績と一番深い関係にあるという。これは、知能が学業成績において圧倒的な予測変数であるという知見(Sophie von Stumm 2011)と類似したものになる。

また、認知能力がもたらす業績向上と経験・熟練がもたらす業績向上を比べた場合、認知能力がもたらすそれのほうが圧倒的に高いという。特定の職場に就いたばかりであれば経験・熟練は業績向上の要因として挙がるが、特定の職場で勤務を続ける限り経験・熟練の重要性は小さくなっていき、認知能力の差で業績が開いていくという。また、経験・熟練がもたらす物事の予測精度は認知能力がもたらすそれよりも低いものであるとの記述もある。

 

こうなる原因として、論文内では「認知能力が成長や学習速度に深くかかわっているステータスだから」という主張が挙げられた。学習には意義のありそうな事象に焦点を当て、事象に内在している意義を見出すというプロセスが含まれており、このプロセスの出来に認知能力が深くかかわっているのだという。

砂鉄を大量に入手したい場合、コンクリートで舗装された道や肥えた畑ではなく砂浜に、ふるいや包丁ではなく磁石を持っていくのがセオリーだと思うが、この「目的にあう場所に行き、適した道具を用いて目的を回収する」選択こそが認知能力が携わる学習のプロセスといえる。認知能力が低い場合は砂鉄を取りに行きたいのに体育館にメントスとコーラを持っていいき、逆に認知能力が高い人は周囲の地質から探り当てた砂鉄が濃そうな河口にネオジム磁石を持っていくことだろう。もちろん、後者のほうが砂鉄がより多くとれるのはいうまでもない。

そして、いわゆる『知識・経験を積む』というプロセスも認知能力に依存しているものであり、経験を積むスピードも、積んできた知識から新しいヒントを得る(Beier, Margaret E 2005)ことにも、すべて認知能力がかかわっているのだという。

「砂鉄を回収するためには、砂浜に行って磁石をこすりあてればいい」という経験も実際にそれを(方法は何であれ)学習できたから経験としてあるわけで、学習する能力がなければ多分ずっとコーラまみれの体育館できゃっきゃしてることだろう。

 

つまり、高い認知能力がもたらす学習速度の速さは仕事での容量の良さと同義であり、また経験・熟練の速度を説明する要素でもあるので必然的にそれらよりも効果量が大きくなるということ。もっとも、目まぐるしく起こる技術革新によって業務手続きが10年で全部変わることもありえなくなった昨今だから、学習速度の速さがより際立っているという可能性は否定できないが。

 

ーーーまぁでも

「業績がいいとかなんとか知らねぇけどよぉ、お前気に食わねぇんだよ!」

なんて評価形態が通用する場所では焼け石に水なお話ではあるが。

 

 

参考文献

Hunter, J. E., & Schmidt, F. L. (1996). Intelligence and job performance: Economic and social implications.

Sophie von Stumm, Benedikt Hell, Tomas Chamorro-Premuzic (2011) The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance.

Beier, Margaret E. Ackerman, Phillip L. (2005) Age, Ability, and the Role of Prior Knowledge on the Acquisition of New Domain Knowledge: Promising Results in a Real-World Learning Environment.



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