2015年に発表された論文によると、携帯への依存と対人関係への依存は別物であり、2つの依存の間に直接的な関係はないという。
具体的には、社会不安(人の目を極端に嫌う状態。対人恐怖症)と依存症傾向は携帯の使用頻度をより多いものにしたが、社会的つながり(特に、対人関係)と携帯の使用頻度には特にこれといった関連がなかったという。
研究では「携帯をバックに入れている」「携帯が目の前にある」「携帯を試験官に預けた」状態で携帯の使用制限をかけたところ、「携帯が目の前にある」条件下のみ不安が増大した。社会的つながりが携帯の使用頻度に影響するのであればつながりが最も制限されている「携帯を試験官に預けた」状態のときに不安は最大になるはずだが、そうはならなかったのだ。
このことから、もともと依存傾向にある人は携帯にも依存しやすいが、対人関係への強い欲求が携帯への依存を引き起こすとはいえないという結論を出した。
よく『SNSの通知音に過敏に反応する』症状はスマホ依存症の1つとして取り上げらることが多いが、その症状は対人関係への依存の1つとして分類されるはずのものである。おそらくその症状を抱える人はスマホを取り上げたとき「スマホが取り上げられた」ことではなく「人と会話ができない」ことを理由に憤慨するだろう。スマホに依存しているならば「スマホが取り上げられた」ことを理由に憤慨するはずである。
注意としては、この結果が非常に短期的な観察を経たものであるということ。観察は社会不安と依存症傾向を計るためのアンケートの待ち時間3分を利用したものであり、その条件から他の状態が抱える不安が顕在化しなかった可能性もありうる。
ゆえに今回の結果だけでは確実に「こう」といえるわけではないが、少なくとも対人関係の強さと携帯への依存は違う次元のお話であることが示唆された。通知音に過敏に反応する人にスマホ依存症を教えても、多分改善しないよ、ということである。
ーーー「あいつまた長電話しやがって……。この間もずっとスマホに張り付いていたし」
「もうなんだろ、いっそのことスマホ取り上げてやろうか?」
そしたら次は固定電話に張り付くぜ、お父さん。
参考文献
M.Sapacz,G.Rockman et al. (2015) Are we addicted to our cell phones?
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