2001年に発表された論文によると、いわゆる高機能自閉症の人間は自閉症の人よりもさらに強度の日常生活における支障が確認されたという。
また自閉症の日常生活における支障の度合いはIQと相関したが、高機能自閉症の日常生活における支障の度合いは言語系の障害の度合いと相関していたとも。
自閉症患者においては、IQと適応能力は相関しないともいえる。
高機能自閉症とは、言語発達と対人関係において障害を患う自閉症の中でも知能指数(IQ)の発達障害を伴わないグループのことを指す。
「成績は中の上より高くて勉強は結構できるけど、友達が作れずひとりぽつんと居座ることが多い人間」のイメージがわかりやすい。
彼らは「周りと同等の知能を持ちながらも、なぜか周囲になじめず孤立してしまう」という特有の問題を抱えていることがほとんどだ。
話は理解できるのに、話し手の言いたいことがあまり理解できない。彼らと同じような話題が理解できるのに、なぜか輪に溶け込めない。
そんな不協和音が体を蝕む感覚は、時に強烈な痛みを伴う。
心理学の分野では長いこと、知能指数が高ければ環境への適応もスムーズに行われると信じられていたし、それを示す証拠もたくさん求めだしてきた。
だから、知能指数が高いはずの高機能自閉症が日常生活に支障をきたしているという事実を発見したときは頭を悩ませた。
これに対し「高機能自閉症は言語系の障害を患っているから日常生活に支障をきたしている」という結論を一応は導き出せたが、それに伴い今まで心理学の分野で長く信じられていた事実を訂正しなければならなくなった。
※ただし、特定条件ではその限りではないと。
この発見は非常に喜ばしいことだ。
今まで「IQが高いから」「成績が良好だから」という理由で周囲と同等に扱われてきた高機能自閉症にも、支援の手が差し出されたからだ。差し出せるだけの理由ができたのだ。
成績が高いゆえに留まざるを得ず、なぜか周囲に馴染めない自分を自責する日々に終止符を打つ、ある程度の証拠が成ったのだ。
ーーーもはや高機能自閉症という言葉は適当ではありません。
彼らもまた周囲になじめず、ひとり孤独を感じる日々を送っています。
「周りと同じだけの成績を持っている」ことを理由に、その場にとどめることは非人道的と言えるでしょう。
参考文献
Miriam Liss, Brian Harel et al. (2001) Predictors and Correlates of Adaptive Functioning in Children with Developmental Disorders.