2010年に発表された論文によると、些細な出来事を楽しめるだけの感性や幸福感は、お金持ちになればなるほど衰弱していくという。
また、自身がお金持ちになった場面を想像するだけでも、微弱ながら感性の衰弱が観測されたという。ひらたく言えば「高級フレンチを嗜めるだけの蓄えがある」と想像できた人は、チョコレートを味わう時間が短くなるってこと。
こうなってしまう原因の1つに、行動指標の上限引き上げによる下限以降の凡庸の拡大にあるという。つまり、お金をふんだんに使った超贅沢なことを経験してしまうと、日常で起こる些細な出来事がその経験と比較され、つまらないものとして分類される割合が多くなるということ。
お金をより稼ぐことによって生活の満足度は確かに上がるが、幸福度はその限りではない可能性が浮上した。
高収入であることが天職の要素ではない証拠も挙がりつつある昨今、私たちはなにを目標に、お金を稼ぐのだろうか。職に就くのだろうか。
ーーー「人生はお金がすべてじゃない、お金で買えない幸せもあるんだよ」
……なぜあなたは、そう言えるのです? 高収入な身なりでもないのに。
「むかし、私は夜空を見ていた。私の手元になにもなかったから見上げて、そして星々の美しさに見惚れていた」
「だが、お金を手に入れ、私の手元が埋まるようになってからは、見上げることはなくなった」
「そしていつしか、星々を美しいとも思えなくなったんだ。手元に映る光景のほうがよっぽどきれいに思えて、私はとても、虚しくなったんだ」
参考文献
Jordi Quoidbach, Elizabeth W. Dunn et al. (2010) Money Giveth, Money Taketh Away: The Dual Effect of Wealth on Happiness.
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