集団による個人への影響を考察・実験する社会心理学(心理学的社会心理学)。
その始まりはTriplettが1898年に行った実験であるとされているが、
このTriplettの実験は、競馬や競輪におけるひとつの疑問が発端となっている。
疑問を簡潔に言うと「競争の有無によるパフォーマンスの差分の原因とは」となる。
スポーツ的な競争を前提としたとき、他人と競い合った時のほうが張り切る人、逆に一人黙々と精進できる人、どちらをとってもあまり変化しない人という、あからさまな違いが発生する。
当時の競馬や競輪でも同じことがいえるらしく、ひとりでタイムアタックに臨むよりも、他人と競い合ったほうが明らかにいい記録が出せる選手がいたという。
「なぜ競馬や競輪において、相手がいるいないでタイムが変わってくるのか」
速さを求める業界において、こういった疑問が呈されるのはそう不思議ではないだろう。
この疑問に対して、様々な仮説が立てられた。
中には「相手の車が発した真空によって加速が生じる」とか「回転する車輪と緊張が催眠効果を発生させる」といった、今では考えられないような説も真面目に議論された。
議論のさなか、Triplettは「先に旗がある紐をリールで巻き付け、先にゴールにたどり着いたほうが勝ち」とする競争において、二人で競争させたほうがタイムが縮まりやすいという結果を得た。
この結果から、他者の存在が個人のパフォーマンスに影響を与えると推測され、これがのちに社会的促進と呼ばれる議題となる。
社会心理学は、競馬・競輪から始まった。
……過言な気はするが。
参考文献
Norman Triplett (1898) The Dynamogenic Factors in Pacemaking and Competition.
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