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2002年に発表された論文などが取り上げる心理学の話題の1つに、『The paradox of self-stigma』というものがある。直訳すると『自身の汚名に対するパラドクス』になるかな。
これは特に重度の精神疾患を患う人とその周辺に発生するもので、自身がもつ精神疾患に対する偏見や軽蔑に元気づけられ、怒りをあらわにする現象を指す。
基本的に「精神疾患の人は狂気的」などの偏見は自尊心を損なわせるものであり、偏見から派生した行動は直に対象を傷つけることもある。周囲からの偏見は自傷行為とも言える自分への偏見をも作りかねず、『元気づける』ような要素はひとつもないように思える。
しかし、偏見を受けている対象が、その罵詈雑言が偏見であると認識した場合は反応が違ってくる。
自分に降りかかる偏見が『自身が持つ特徴によって引き起こされたもの』ではなく『他人が勝手に作り出したもの』であると認識できた対象は、それに対し怒りという形で反応し、さも正義の鉄槌を振りかざすかのようにふるまい始めるのだ。
この場合、偏見によってすり減らされるはずだった自尊心はほぼ無傷となる。
なお、この現象は同じ境遇の人々orこの問題に対し共感できる人々が周囲に存在した場合より活性化する。「偏見にともに立ち向かう仲間」という帰属意識が、激高に拍車をかける構図となるのだ。
The paradox of self-stigmaと呼ばれる一連のプロセスは、精神疾患など他の要因によって下がってしまった自尊心や自己効力感を保つための、一種の防御反応とも言えるのだ。
ーーーちなみに、
陰謀論者の反応パターンも、これを用いることで説明ができる。
参考文献
Corrigan, Patrick W. Watson, Amy C. (2002) The paradox of self-stigma and mental illness.
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