2010年に発表された論文によると、APDを患う人は聴覚そのものの異常とは全く関係性がなく、また認知能力の低下がAPDと捉えられる症状を一番予想したとのこと。
……なんのこっちゃよくわからない、って?
そもそもAPDってなんだよ、だって?
APD(聴覚情報処理障害)とは、端的に言えば人間の声だけが聞き取りづらくなる症状のことだ。
具体的には、人が何かを喋っていることはわかるけど、何を喋っているのかがわからない。内容を聞き取ろうにも、発言にもやがかかって理解できない、といった状態。
人の声がかき消されない程度の喧騒な場所(町中のカフェ程度の)で発生しやすいが、人によっては人の声しか聞こえないような静かな場所であっても聞き取りに困ることがある。
APDは聴覚機能の欠落や発育途上が原因ではない。人の声以外はしっかり聞き取れるし、聴力検査でも異常を示さないのがほとんどだ。
またAPDは自閉症やADHDといった他の認知能力系の疾患と似たような症状(言語理解での障害、聴覚障害)を示していることから、APDはこれらと混同されがちだ。が、自閉症やADHDは神経心理学で示せる反応がそれなりに確認できるが、APDはその限りではない。
自閉症やADHDは聴覚障害という疾患として判断できるが、APDはそうではない。なぜならAPDを患う人は人の声以外はしっかりと聞こえるからだ。
APDは聴覚機能がダメになったわけでも、認知能力の欠落が招くものでもない。
ただ、人の声だけが聞き取りづらいという症状なのだ。
「まともに会話できない」ことがどれだけ苦痛なのかは、計るまでもない。
なぜAPDが発生するのかは、いまだに謎である。注意の方向と強度が関係しているとする仮説があるが、真偽は不明だ。
対策はない。
強いて言えば、こういった原因不明のぱっと見ではわかりづらい症状を患う人がいるという知識そのものが対策だ。
頭の片隅においてくれれば、ある程度理解してくれれば、私を含めたAPDを患う人々は少しだけ生きやすくなるだろう。
参考文献
David R. Moore, Melanie A. Ferguson et al. (2010) Nature of Auditory Processing Disorder in Children.
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