2019年に発表された論文は、内発的動機付けの発生には『自律』『能力の自認』『貢献・関係性』が深くかかわっており、これらの欲求を満たした場合内発的動機づけが高まるだろうとした。
また外発的動機づけはプレッシャーを生み出し、これらの欲求の満たし具合と負の相関にあるとの事。
ーーー「周りもやっているからやりなさい」「やる気を出してやりなさい」
やる気のない子に対して、重要な物事への取り組みを促すのは悪いことじゃない。
ただ、なぜやる気が出ていないのかを知らないと、的外れなことを言うだけになるぞ。
金銭的な余裕を確保するために稼ぐ手段や環境を整えるように、
幸福を得るために対人関係や集団での立場を構築するように、
内発的動機づけ、つまりやる気にも発揮させるための条件が必要となってくる。勝手に沸き上がってくるものではない。
自身への尊重や自我の確保、そして決定権。
物事を円滑に進められるだけの能力と、それに対する自認と自信。
物事に関与している、貢献できているという社会的充足。
これらがそろったときにやる気というものは初めて発生し、またこれらの充足率によってやる気はその強さを増していく。
やる気が生み出される環境は同時に、楽しさと物事にかかわることの価値を生み出す。自分が自発的に、物事への貢献のために、能力を発揮できる。数学の問題から議論までに通じる快感であり、正の強化である。
ただ物事の重要性を喝破しても、やらなければ恐ろしいことが待っていると脅しても、やる気は起こらない。外発的動機づけといって、周りからの統制された指示に一応は従うが、そこにやる気も何もない。
貢献の度合いを無視され、強制的にやらされる。たとえ能力があって問題を解決できたとしても、対象に残るのは関われなかったことからくる不快感などだ。
どうも人間は物事をきちんとコントロールできているかどうか、物事を自分の期待通りに動かせられるかどうかに快感を感じているらしい。
この快感が欠落したときには「確かに成功はしたけれども……」という、感情論で成功を否定したくなるような不快感が沸き上がるそうだ。
自分が自発的に、物事への貢献のために、能力を発揮できる。
やる気を発揮できる環境を整えるのは難しいことだ。
木工を楽しむためにまずは工具を作るような、数学の問題を解くためにまず公式から求めるような、そんな難しさだ。
だがそんな環境が整えば物事を楽しみながら、そして円滑に進められることだろう。
参考文献
C.K.John Wang,Woon Chia Liu et al. (2019) Competence, autonomy, and relatedness in the classroom: understanding students’ motivational processes using the self-determination theory.