海にうつる月

その日は珍しく

祝日でも仕事のワンワンが休みで

行き先を決めずに南へ向かった



母ちゃんが亡くなって まだ半年

まだ居ない日々に慣れなくて

休みの度に家を出た



県境を過ぎ 温泉にでもと

右手 鳴子温泉方面を見ると

雪雲らしい灰色の雲が広がっている

左手 東側の空は明るく晴れていた



それじゃ右で・・と 高速を降り

海に向かって走りだした



松島から野蒜海岸そして石巻

気付いたら 何年か前のＧWに

母ちゃんと婆さんを連れて

遊びに来たコースを辿っていた



海の向こうに蜃気楼

沖をゆく船が浮いて見える



帰り道 道の駅で休憩中に

ワンワンの携帯がなって

社長から明日もお休みのお知らせ

落ち込むワンワンに

どっかに泊まって ゆっくり帰ろうと

取り敢えず ミニストップの

プリンパフェを食べた後

４５号線を北上した



既に辺りは暗くなり始め

月が登り始めた



時間も時間だし ４５号線沿いは

余り大きな街が 無い為

泊まる所は見つからない

石巻まで戻れば良かったかと

後悔しても 既に遠く

気付けば暗い夜道をただ走っていた



商店の灯りも人家の灯りも途絶え

月灯りだけの寂しい道

果たして泊まる所なんて

あるのかなぁと心細くなった時

右手の薄暗がりの中 海が広がった





穏やかな海面に月が映っている




寒々と今の心細さを

映し出しているかの様で

車を止め しばしその光景を眺めた



二人きりでも頑張っていこうな



そう言って車に乗り込んだ

ワンワンの目が潤んでいるのを

月灯りがそっと照らしていた







２００９年の昨日の事

今朝 久しぶりに母ちゃんの夢を見て

思い出した