耳元に微かに吐息を感じて、圭司はまどろみの中から目覚めようとしている。
妙なほど安らぎを覚える。
陶器のように白く細い腕をそっと外そうとして、やめた。
この懐かしい感触を圭司は遥か昔の出来事のように思いだし夢の中を彷徨っていた。
抱きしめたら そっと抱き返してくる。
昨日までの痛みは、彼女も同じだった。
すべてをあずけたその孤独な寝顔が安堵を物語っている。
懐かしいようでいて、新鮮だった。
あの時から互いの時を分けた ふたり。
圭司は、ファインダー越しに初めて薔薇が霞み薔薇より美しい彼女を見た衝撃的な出会いに届かない夢を見ていた気がして怖かった。
彼女が欲しくなった。
身のほど知らずなのは承知の上だった。
今は、こんなに胸が暖かい。
あの時は、そんな余裕など無かった。
心臓が口から飛び出しそうになるのを何度も堪えていた気がする。
初めての朝が来たとき恋に落ちた。
正確には落とされた。
圧倒的な劣勢のまま彼女の言いなりになるしかなかったあの日。
届かない夢が 欲しくなった。
彼女と共にカメラマンとしてのチャンスを掴んだように思い込んでいた。
あの頃の彼女は、トップモデルで女優そして指輪を外して抱かれた。
婚約も破棄スキャンダラスなイメージのためにトップの座から引きずり下ろしたのは名もなきフリーカメラマンの圭司だった。
慣れない手つきで尽くそうとしていた彼女を利用した最低の男。
スキャンダルが圭司に注目を集めさせ人気カメラマンの名を欲しいままにした。
それを実力と勘違いしていた最低な男だった。
恵子と言う女がいながら・・・。
時間がサラサラと流れれていたのを誤魔化し続けた虚無な日々だった。
ギリギリの綱渡りなのか、自らリセットしようと嘘に嘘を塗り固めていた気がする。
砂時計を彼女と恵子の狭間で入れ替えていたようなものだ。
あの細いくびれた場所を何とか通り抜けようと毎日毎日もがいていた。
届かない夢が届くと信じてしまった。
天ペンまで追いかけようとしたけど、結局なにも掴めずに落ちていく底のない砂時計の砂になっていたのに気付いた時には、全てが遅かった。
チャンスだ!勇気だ!と一番大切な愛を置き忘れていたのにやっと気付かせてくれたのは微かな寝息を立てている君への愛だった。
やさしさだけじゃなく、ぬくもりだけでもない。
これからの2人は届かない夢なんて欲しくない。
与えるものでも分け合うものでもない育む愛の大切さを知った。
あのまま目隠しのままでも君のキスはわかる。
不思議なほど風を感じてしまった恋。
一瞬で、みんなさらわれてしまった。
綺麗なひとなのは、テレビの画面に首ったけになっていたのだから誰しも羨む女優だったから操られるままだった。
情けないけど、クールにしろって言う方が無理な話した。
わがまま放題だった彼女は、もう微塵もない。
ナチュラルな笑顔が良く似合う。
まさか・・・これも演技か?
そう疑う前に彼女から先に言われてしまった。
「変わったね」
それは、温もりのある笑顔と共に圭司に対する最高の褒め言葉でもあった。
自暴自棄になって色褪せたアルバムを持ったまま彷徨い歩いたのは、遥か昔の事のように思える。
今、イタリアのアロファロメオのジュリエッタの助手席で甘えた声で質問してくる彼女を風の音で聞こえないふりをしている俺。
右の手のひらを彼女は両手で挟んだまま、他愛もない話を続けている。
圭司は、左手でハンドルを握り、その温もりを確かめながら風を切る音に紛れて答えた。
「えっ。聞こえないよ~」
アクセルを軽く5回ふかしながら「・・・・・」
彼女は、何度も繰り返す圭司の唇の動きを見ながら泣き笑いしていた。
「洋子、聞えたか?」
初めて名前で呼んだ。
洋子は涙をぬぐおうともせず、屈託のない笑顔のまま圭司を見つめていた。
ダビデの紋章「六芒星」のネックレスを信じる気になったと圭司は、あのジプシーの占い師のことを思い出していた。
サングラスの奥の小さな目をパチクリしながら話にのめり込んでたが急に大笑いしている男。
「そんなわきゃ~ない!」
マジで、そんなに効果があるの?
ダビデの紋章「六芒星」のネックレスを手に入れた男の話を聞かせるのをやめた。
妖艶なジプシーの女は、訝しげに帽子を被ったサングラスの男に言った。
『さんざん聞いておきながら、いらないならあっちへお行き』
サングラスの男は、更に高い声を出して笑っていた。
「だってよ~こんなペンダントで人生が変わるのかい」
ダビデの紋章「六芒星」のネックレスを手に取り、まじまじと見つめている。
『お前さんは、こっちだよ』
ジプシーの占い師の女は、ピースマークのペンダントを差し出した。
「なんだぁ~これ。ベンツのエンブレムみたいじゃねぇか」
サングラスの男は、差し出されたピースのマークのペンダントを見ながら不服そうだった。
『それ、逆さまだよ』
しかし、ジプシーの占い師は、平和の象徴であるピースマークこそ導かれし男の象徴だと話を続けていた。
このペンダントをするがいい。
この先、きっとダビデの紋章「六芒星」と引き合う運命にある。
そして、いつかきっと互いに認め合い、そして幸せが訪れる。
「そうなの?だったらこれにする」
ジプシーの占い師は、満足げにサングラスの男を見つめていた。
『最後に一つだけ!幸せの向こう側には、不幸が必ずある。コインの裏と表じゃ』
サングラスの男は、首をかしげていた。
ジプシーの占い師は、嬉しそうにピースマークのペンダントを手に入れ去っていく男の後ろ姿に念を送っていた。
『その時が来たら、お前が道しるべとなれ!』
サングラスの男は、エピローグ~~♪
鼻歌を口ずさみながら急に振り返った。
「任せとけって!」
力強く手を振っていた。
SEE YA~~!
ジプシーの占い師は、この先の全ての運命をこの男に委ねる呪文をかけて見送った。
「終わり。」
※これは、フィクションで、「砂時計のくびれた場所♪」や「天気予報の恋人♪」とは無関係の内容になっていますので、ご了承ください。
長らくお付き合い頂いてありがとうございました<m(__)m>
妙なほど安らぎを覚える。
陶器のように白く細い腕をそっと外そうとして、やめた。
この懐かしい感触を圭司は遥か昔の出来事のように思いだし夢の中を彷徨っていた。
抱きしめたら そっと抱き返してくる。
昨日までの痛みは、彼女も同じだった。
すべてをあずけたその孤独な寝顔が安堵を物語っている。
懐かしいようでいて、新鮮だった。
あの時から互いの時を分けた ふたり。
圭司は、ファインダー越しに初めて薔薇が霞み薔薇より美しい彼女を見た衝撃的な出会いに届かない夢を見ていた気がして怖かった。
彼女が欲しくなった。
身のほど知らずなのは承知の上だった。
今は、こんなに胸が暖かい。
あの時は、そんな余裕など無かった。
心臓が口から飛び出しそうになるのを何度も堪えていた気がする。
初めての朝が来たとき恋に落ちた。
正確には落とされた。
圧倒的な劣勢のまま彼女の言いなりになるしかなかったあの日。
届かない夢が 欲しくなった。
彼女と共にカメラマンとしてのチャンスを掴んだように思い込んでいた。
あの頃の彼女は、トップモデルで女優そして指輪を外して抱かれた。
婚約も破棄スキャンダラスなイメージのためにトップの座から引きずり下ろしたのは名もなきフリーカメラマンの圭司だった。
慣れない手つきで尽くそうとしていた彼女を利用した最低の男。
スキャンダルが圭司に注目を集めさせ人気カメラマンの名を欲しいままにした。
それを実力と勘違いしていた最低な男だった。
恵子と言う女がいながら・・・。
時間がサラサラと流れれていたのを誤魔化し続けた虚無な日々だった。
ギリギリの綱渡りなのか、自らリセットしようと嘘に嘘を塗り固めていた気がする。
砂時計を彼女と恵子の狭間で入れ替えていたようなものだ。
あの細いくびれた場所を何とか通り抜けようと毎日毎日もがいていた。
届かない夢が届くと信じてしまった。
天ペンまで追いかけようとしたけど、結局なにも掴めずに落ちていく底のない砂時計の砂になっていたのに気付いた時には、全てが遅かった。
チャンスだ!勇気だ!と一番大切な愛を置き忘れていたのにやっと気付かせてくれたのは微かな寝息を立てている君への愛だった。
やさしさだけじゃなく、ぬくもりだけでもない。
これからの2人は届かない夢なんて欲しくない。
与えるものでも分け合うものでもない育む愛の大切さを知った。
あのまま目隠しのままでも君のキスはわかる。
不思議なほど風を感じてしまった恋。
一瞬で、みんなさらわれてしまった。
綺麗なひとなのは、テレビの画面に首ったけになっていたのだから誰しも羨む女優だったから操られるままだった。
情けないけど、クールにしろって言う方が無理な話した。
わがまま放題だった彼女は、もう微塵もない。
ナチュラルな笑顔が良く似合う。
まさか・・・これも演技か?
そう疑う前に彼女から先に言われてしまった。
「変わったね」
それは、温もりのある笑顔と共に圭司に対する最高の褒め言葉でもあった。
自暴自棄になって色褪せたアルバムを持ったまま彷徨い歩いたのは、遥か昔の事のように思える。
今、イタリアのアロファロメオのジュリエッタの助手席で甘えた声で質問してくる彼女を風の音で聞こえないふりをしている俺。
右の手のひらを彼女は両手で挟んだまま、他愛もない話を続けている。
圭司は、左手でハンドルを握り、その温もりを確かめながら風を切る音に紛れて答えた。
「えっ。聞こえないよ~」
アクセルを軽く5回ふかしながら「・・・・・」
彼女は、何度も繰り返す圭司の唇の動きを見ながら泣き笑いしていた。
「洋子、聞えたか?」
初めて名前で呼んだ。
洋子は涙をぬぐおうともせず、屈託のない笑顔のまま圭司を見つめていた。
ダビデの紋章「六芒星」のネックレスを信じる気になったと圭司は、あのジプシーの占い師のことを思い出していた。
サングラスの奥の小さな目をパチクリしながら話にのめり込んでたが急に大笑いしている男。
「そんなわきゃ~ない!」
マジで、そんなに効果があるの?
ダビデの紋章「六芒星」のネックレスを手に入れた男の話を聞かせるのをやめた。
妖艶なジプシーの女は、訝しげに帽子を被ったサングラスの男に言った。
『さんざん聞いておきながら、いらないならあっちへお行き』
サングラスの男は、更に高い声を出して笑っていた。
「だってよ~こんなペンダントで人生が変わるのかい」
ダビデの紋章「六芒星」のネックレスを手に取り、まじまじと見つめている。
『お前さんは、こっちだよ』
ジプシーの占い師の女は、ピースマークのペンダントを差し出した。
「なんだぁ~これ。ベンツのエンブレムみたいじゃねぇか」
サングラスの男は、差し出されたピースのマークのペンダントを見ながら不服そうだった。
『それ、逆さまだよ』
しかし、ジプシーの占い師は、平和の象徴であるピースマークこそ導かれし男の象徴だと話を続けていた。
このペンダントをするがいい。
この先、きっとダビデの紋章「六芒星」と引き合う運命にある。
そして、いつかきっと互いに認め合い、そして幸せが訪れる。
「そうなの?だったらこれにする」
ジプシーの占い師は、満足げにサングラスの男を見つめていた。
『最後に一つだけ!幸せの向こう側には、不幸が必ずある。コインの裏と表じゃ』
サングラスの男は、首をかしげていた。
ジプシーの占い師は、嬉しそうにピースマークのペンダントを手に入れ去っていく男の後ろ姿に念を送っていた。
『その時が来たら、お前が道しるべとなれ!』
サングラスの男は、エピローグ~~♪
鼻歌を口ずさみながら急に振り返った。
「任せとけって!」
力強く手を振っていた。
SEE YA~~!
ジプシーの占い師は、この先の全ての運命をこの男に委ねる呪文をかけて見送った。
「終わり。」
※これは、フィクションで、「砂時計のくびれた場所♪」や「天気予報の恋人♪」とは無関係の内容になっていますので、ご了承ください。
長らくお付き合い頂いてありがとうございました<m(__)m>