every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

音楽好きなら読むべき本(Remix)

2013-04-15 | Books
先日エントリーした「音楽好きなら読むべき本」を改めて。
追記・編集しようと思ったんですけど、別エントリーで。





まずは出たばかりのこの本から。

この本はシュガーベイブ/山下達郎/大貫妙子/竹内まりやのレコード製作/宣伝に関わり、<ノン・スタンダード>、<トラットリア>というレーベルを手掛け、フリッパーズギターを発掘、育成した音楽プロデューサー=牧村憲一氏が1969年から1989年までの日本のポップス史を1年ごとに各時代の証言者へのインタビューを交えながら、各現場を見てきた証言を綴った本です。


歴史を描くには座標軸の中心点がなくてはなりません。近代史においてそれを置くのは難しい作業です。「歴史観」という言葉が端的に示しているように、「政治」が主観に及ぼす影響から無縁に綴るのは困難な作業だからです。

この本が優れているのは牧村憲一という個人を座標軸にしながら、第三者の証言を交える事によって客観性を担保している点にあります。なのでこの手の本が陥りがちな自慢話の罠に陥らずに「ニッポン・ポップス・クロニクル」を綴りきっている。だからといって冷めているわけではなく、言葉の合間合間に音楽への思いが溢れているので若造としては「ハハー m(_ _ m)」と頭を垂れるしかないのであります。しかし、牧村さんだったらエピソード集だったとしても読み応えのある内容になったと思いますが。


装丁はグルーヴィジョンズだし最高です。




こちらは裏方ではなくミュージシャン側の視点ですが、こちらも読み応えのある一冊です。タモリ倶楽部で酒のんで管巻いているだけじゃありません。日本のフォークがニューミュージックと呼ばれる音楽に移り変わっていくくらいまでを東京言葉の洒脱な文体で語っています。『ニッポン・ポップス・クロニクル』と一部被る箇所もあるので併せて読むとより複合的に見えてくると思います。"当事者"ならではの逸話もあり。





時代を個人の視点で写し取った優れた本といえば、なんといってもこの『ハーレムの熱い日々」です。
公民権運動と共に「ブラック・パワー」が熱く高まっていくニューヨーク、ハーレム地区での日々のルポタージュというだけで、その空気を知る由もない自分としては胸が高まる想いがします。写真も素晴らしく冒頭の主観と客観と言う話でいえば、瑞々しく映し出された姿が客観性の役割を担っているというわけです。

写真集も出ているのですが、アタクシは高くて買えてないので、これを読んでおられる読者の方々にアフェリエイトをポチっとして頂き儲けたお金で手に入れたいと思っている所存であります。

買って贈ってもらってもいいんですよ。


現場にいたカメラマンが書いた本を二冊ご紹介します。
まずは石田昌隆さんのこちらから。
80年代前半のジャマイカ、90年代前半のブリストル、そしてフェラ・クティのシェライン(!)とホットな時期にホットな場所にいるという強さが圧倒的な一冊です。「現場主義」という言葉は好きではないですが、コレを読むと「やはり、その場にいないと分からないことがあるな」という思いを強くします。


「現場主義」といえばこちら。
ポスト・パンク、N.W.時代の80年代中盤からセカンド・サマー・オブ・ラヴを経て、レイヴ以降までのイギリスのミュージック・シーンを綴った本です。実際にステージの近くにいた久保さんの視点で活き活きと書かれています。今回紹介した本の中では一番主観が強いかもしれません。なのでこれはロック史の定本にはならないと思います。しかし、そんなのはWIKIで調べればいいんですよ、WIKIで。



テクノなりハウスなりについてはこの一冊が決定版です。
丹念に資料を参照してディスコ以降のブラックミュージックの歴史について綴られた前半とそこに個人的な感情(ソウル)を燃やしてフル・スロットルで駆け抜ける後半と読み応え充分です。

惜しむらくは図版がないこと。特に現地取材したデトロイトの写真があったならこの本の価値は更に高まったと思います。


追伸;90年代以降の所謂クラブ・ミュージックについてクロニクルを書いてみたく思ったりはしてます(でも、多分書かない。面倒くさがりやだから)。

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