ちょっと聞いて下さいな。

わたし、母として女として思うこと、つれづれ。そしてときどき中国。

ベルボーイ。

2011-12-04 18:18:04 | 日記
彼は、私が言うのもなんだが、いい男だった。
くるくるとした二重の目、すっと通った鼻筋、八重歯の出る笑顔、
にくたらしいほどかわいいエクボ。まるで少年。
この若いベルボーイの全てが大好きだった。

私は朝食時、一人の時はいつも彼の仕事ぶりが伺える席に座った。
エレベータが見える位置、ロビーが見える位置、門が見える位置。
まるでストーカーである(笑)。

朝食後の珈琲を飲みながら、仕事中の彼とアイコンタクトで会話を交わすのが
私たちの日課だった。彼もときおりチラチラとこちらを伺いながら、
ふいに目が合うとにかっと可愛い笑顔を見せる。

とくにエレベーターの前でお客が降りてくるのを待つ彼の
横顔を眺めるのが至福の時だった。そこは距離が近いので、
お客が来ない時は会話が出来る。
そして、お客が来た時にキリッと仕事の顔に戻る瞬間を見るのも
好きだった。まっすぐに伸びた背筋、ぐんぐんと進む大きな一歩、
真っ白い手袋がお客を美しくご案内する。完璧だった。

そして、優越感にも浸った。
この、佇まいも顔も声も美しいひとりの若い青年に愛されている自分。
彼のたくましい腕に抱かれて、熱い口づけと愛撫をされている自分。
なにものにも代え難く、幸せだった。彼がいるだけで。


『なんで昨日は降りて来なかった?あなたを探したのに。』
こんなセリフも上手かった。
相手を優越感に浸らせる中国の男性は、私みたいに疲れた日本女性には
最高の癒しになるかもしれない。現にたくさん救われた。

やっぱり彼に会いたい。
もう、完全に日本人に戻ってしまった自分が恨めしい。
帰れないのだ、彼の元には。
全ての束縛が私の思考をあきらめさせる。
そう、このままで、いいのだ。